鉱物資源の宝庫アフガニスタン
アフガニスタンは余り知られていませんが、鉱物資源の宝庫です。
しかし、この40年間というもの、戦火に明け暮れていたので、とても鉱山開発ができる状態ではありませんでした。
いわゆる「宝の持ち腐れ」状態です。
タリバン政権がこの国に安定がもたらすかどうかはわかりませんが、多少なりとも安定すれば、その鉱物資源は大きな価値を生む可能性があります。
特に電気自動車のバッテリーに不可欠なリチウムは注目される資源です。
このリチウム資源について仏紙Les Echosが「Lithium : le trésor enfoui de l'Afghanistan」(リチウム:アフガニスタンの埋蔵金)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
8月15日、タリバンは瞬く間にアフガニスタンの首都カブールを制圧し、政府と外国軍に最後の打撃を与えました。
アフガニスタンは40年以上安定していませんが、彼らは世界で最も豊かなリチウムを含む土地のいくつかを所有しています。
アフガニスタンには銅、コバルト、その他のレアアースなど多くの鉱物資源が存在しますが、リチウムは今日特に貴重です。
それは電気自動車のバッテリーに欠かせない材料として、地球温暖化対策に欠かせない素材の一つです。
未開発の鉱床
2010年、米国国防総省のメモには、アフガニスタンは「リチウムのサウジアラビア」と記載されていました。
この金属の膨大な埋蔵量の価値は、当時10億ドルにのぼりました。
それ以来、需要がますます増加したため、リチウムの価値は2.8倍になりました。
これまで、戦争と不安定さに悩まされているアフガニスタンでは、まだほとんど鉱床が開発されていません。
過去20年間軍事的に存在していた米国は、鉱業プロジェクトを立ち上げようとしましたが、地方自治体と確固たる合意に至ることができませんでした。
アフガニスタンは世界で最も貧しい国の1つであり、2020年の国内総生産(GDP)は1人あたり2,000ドルです。
人々は主に農業やケシの栽培(麻薬の原料)で生計を立てています。
また、世界銀行によれば、GDPの22%を占める外国からの援助のおかげで生きながらえています。
国がほとんどの州でテロリストと見なされている組織の手に渡った今、外国の援助は消滅する可能性があります。
鉱物資源は、国の経済に大きな恩恵をもたらす可能性があります。
特にリチウムは、国際エネルギー機関によると、今後数年間で需要が40倍になるとのことです。
しかし、鉱物事業はその開発が最も難しい産業の1つです。
このおいしいビジネスは世界のわずかな巨大企業が独占しています。
開発に必要なインフラの構築に膨大な費用がかかるためです。
したがって、タリバンが短期的にアフガニスタンのリチウムを利用して輸出する事は難しいでしょう。
しかし、アフガニスタンには、近隣諸国、特に中国が強い関心を寄せています。
2021年8月以前にタリバン当局に接近した中国政府は、特に電気自動車の生産に鋭意取り組んでいることから、リチウム鉱山に関心を示した最初のプレーヤーの1人である可能性があります。
アフガニスタンの安定には経済自立が不可欠
アフガニスタンはこれまで麻薬の生産で有名でした。
テロ組織が跳梁跋扈する状況では、海外の資本導入が困難でした。
今後のアフガニスタンの安定には、経済自立が不可欠であり、そのためには麻薬の様な不法な産品ではなく、リチウムの様な鉱物資源の開発が急務です。
タリバンはこれまで麻薬の販売で年間数億ドルの収入を確保していた様ですが、今後は麻薬生産から足を洗い、まっとうなビジネスを推進してくれる事を期待します。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。