欧州から見たカブール陥落
カブールの陥落に関するバイデン 政権の責任について、トランプ前大統領は「米外交史における最大の恥」とまでこき下ろしていますが、同盟国の欧州の反応はどうなっているのでしょうか。
仏紙Les Echosが「L'échec afghan, une terrible leçon à méditer pour l'Occident」(アフガニスタンの失敗、西側が反省すべき痛い教訓)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
悲痛な親子の別れは、アフガニスタンのドラマを象徴しています。
カブール空港では、アメリカ人兵士が柵を越えて幼い子供を預けられています。
この子の両親からのメッセージは明らかです。
「あなたは私たちを捨てますが、少なくとも子供にチャンスを与えてください。子供はとても幼く、罪はありません。 」
このイメージと、米国大統領の声明との間には、大きなギャップがありました。
「私たちは国造りをするのではなく、テロと戦うという使命を果たしました。」と、米国大統領は、主張しました。
テロとの戦いと国づくりを切り離すことは、必ずしもアメリカの政策ではありませんでした。
二番目の目的は、最初の目的を達成するための条件として長い間提示されていました。
しかし、アメリカの矛盾を非難して喜んでいる場合ではありません。
実際、私たち西洋人は、中国とロシアの脅威の高まりに直面して、これまで以上に米国と同じ船に乗っています。
その船にはもはや船長がいません。
ヨーロッパもその戦略的責任を認識する必要があります。
私たちヨーロッパ人にとって優先事項は、アフガニスタン難民への扉を閉ざすことではなく、アメリカと一緒に防衛努力を強化することです。
中国とロシアは、我々陣営内に生じた溝をうまく利用する事を狙っています。
アフガニスタンで西側世界が経験した痛みは、私たちをさらに分裂させるべきではなく、逆に、私たちの優先順位と共通の価値観に照らして、私たちの立場を調和させるべきです。
タリバンは変わっていません。
確かに、この20年で彼らはコミュニケーションのやり方について多くを学んだようです。
しかし、彼らが女性の地位について「オープン」であり(イスラム国家の文脈では、もちろんシャリーア法に従います)、アルカイダの様な運動に厳格に対処すると言うとき、どうして彼らを信じることができますか?
彼らの戦術の柔軟性とイデオロギーの厳密さの間では、後者が前者よりも優先されることは明らかです。
タリバンの指導者たちが口頭で示した変化は、過去20年間にアフガニスタン社会で起こった変化と一致しないため、懐疑論はますます巻き起こるでしょう。
アメリカ人はその名にふさわしい政権や軍隊を作る事には失敗しましたが、彼らはアフガニスタン社会、特に女性の間で、タリバンが完全に抑圧するのが難しいであろう自由の種を蒔きました。
情報通信の技術革命の時代に、タリバンは新しい現実に直面するでしょう。
世界で最も好戦的な民族の一つであるアフガニスタン人に戦う方法を教えると主張したアメリカ人は傲慢でしたが、タリバンも、地球上で最も誇り高く、最も独立心の強い人々を恐怖によって完全に支配できると考えるのはなんと愚かでしょうか。
カブールの陥落は、アフガン人が新しい力に完全に結集する事を意味しません。
マスード司令官の息子によって支配されているパンジシール州での抵抗はこの最初の兆候です。
アフガニスタンの自然の複雑さ、部族、地理的多様性は、新しい統治者を失望させる日が来る可能性があります。
西側の敗北は明らかですが、タリバンの勝利は、それほど明白ではありません。
米国がアフガニスタンに播いた種
いつもは米国に厳しいフランスの新聞が、珍しく「米国との足並みを揃えるべき」との論陣を張っています。
アフガニスタンには米軍だけではなく、NATO軍も派遣されていましたので、欧州にとっても今回のアフガニスタンの出来事は人ごとではなかったものと思われます。
今後、タリバンの様なイスラム系武装集団の活動は中東、アフリカ、一部アジアでも活発化する事が予想され、ドミノ現象が起きれば、これら地域に権益を持つ欧州諸国も大きな影響を受けます。
しかし、タリバンが長続きするか否かはわかりません。
上記記事がいみじくも指摘した様に、米国は立派な政府や軍隊を作る事には失敗しましたが、女性の教育や社会進出といった面では、民主主義の種を播きました。
この種は将来タリバン に対して大きな反発を生じさせる事が予想されます。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。