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3Dプリンターが家を作る時代来たる

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出典:Economist

3Dプリンターの急速な進歩

3Dプリンターという言葉は最近良く使われる様になりましたが、社会に広く使われる様になるには時間がかかると思われていました。

しかし、最近は家やアパートといった大きな建造物を3Dプリンターで作るというプロジェクトが実現化している様です。

目覚ましい技術の進歩に関して英誌Economistが​​「The rise of 3D-printed houses」(3Dプリンターで作られた家の台頭)と題された記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

カリフォルニアで新工法の家が異常なスピードで売れています。

従来のレンガとモルタルで住居を建てるのに数週間かかる場合がありますが、これらの家は、24時間以内に建てることができます。

家の建造に必要なコンポーネントは通常とは異なる方法で作成されています。

実は印刷されているのです。

 

三次元(3D)印刷は、1980年代初頭から存在していましたが、最近、勢いを増しており、整形外科用インプラントから航空機用部品に至るまで、既に採用されています。

詳細は関連する製品やプロセスによって異なりますが、基本的な原則は同じです。

材料の層を積み重ねる事で、従来の手法では作成が不可能なオブジェクトを作成できます。

その上、従来の製造工程とは異なり、材料を無駄にすることはありません。

 

3D印刷は、より優れた汎用性とより迅速な構築を可能にするだけでなく、現在よりも低コストで、より環境に優しいアプローチを約束します。

それは、現在世界が直面している2つの課題、つまり住宅の不足と気候変動に対する有用な答えになるかもしれません。

地球の人口の20%以上である約16億人が、適切な宿泊施設を欠いています。

また、建設業界は、世界の人為的な二酸化炭素排出量の11%を占めています。

自動化により、大幅なコスト削減が実現します。

Mighty Buildingsによると、印刷プロセスの80%をコンピューター化するということは、他の方法では必要となる労力の5%しか必要としないということです。

また、生産速度も2倍になりました。

これは歓迎すべきニュースです。建設業界は生産性の向上に何年も苦労してきました。

コンサルタント会社のマッキンゼーによると、過去20年間で、建設業界は、世界経済全体の生産性の3分の1の速度でしか成長していません。

業界はまた、多くの場所で熟練労働者の不足に悩まされています。

たとえばアメリカでは、建設業に従事する人々の約40%が10年以内に退職すると予想されています。

 

環境へのメリットの中で最も重要なのは、重いものをたくさん移動する必要が少ないことです。

たとえば、Palari Homesは、製品をプレハブすることで、家を建てるのに必要なトラック輸送を減らし、家ごとに排出される二酸化炭素の量を2トン削減できると見積もっています。

 

同様のプロジェクトが至る所で開始されています。

大多数はコンクリートを使用した構造を印刷します。

しかし、セメントを関与させることは、真の意味で環境に優しいプロセスではありません。

最新の工法ではに建設現場近くの粘土や岩の破片を使用し、それを粉砕して粉末にし、ケイ酸塩とブレンドするというやり方も実現されています。

 

3Dプリントされた家には課題もあります。

まず、それらに対応するために構築基準を微調整する必要があります。

この目的のために、アメリカ最大の認証機関の1つであるULは、Mighty Buildingsと協力して、最初の3Dプリント規格を開発しました。

これは新興産業にとって歓迎すべき後押しですが、ほとんどの政府はまだ国固有の基準を考え出していません。

3Dプリンターで建てられた家の品質と仕上がりについても疑問があります。

 

それでも、将来は有望に見えます。

昨年、ドイツで3Dプリントされたアパートの計画が承認されました。

この技術の利用は、中東やアジアでも拡大しています。

ドバイ政府は、国内の新しい建物の4分の1を2030年までに3Dプリントすることを望んでおり、サウジアラビアは、今後10年間で3Dプリントを使用して150万戸の住宅を建設したいと考えています。。

 

成功すれば、3Dプリントによる建築は住宅を超えて広がる可能性があります。

倉庫、オフィス、その他の商業ビルにもチャンスがあります。

そして、アメリカの宇宙機関であるNASAは、火星と月に着陸パッド、宿泊施設、道路を建設するために3Dプリントの使用を検討しています。

これらの2つの天体には土はなく、レゴリスと呼ばれる砕けた岩だけです。

NASAと協力しているバネルジー博士は 「私たちはレゴリスを利用しなければなりません。」

3Dプリントの将来

これは夢があるプロジェクトだと思います。

現場の近くの土砂を材料として利用できるとなれば、木材やセメントの輸送が大幅に節約できます。

例えば、内陸部にあって輸送が難しい場所にある産業プラントの部品が壊れた時なども、3Dプリンターさえあれば、設計図をネットで送付すれば、現場でスペアパーツが製造でき、直ちに操業が開始できます。

この新技術の採用を阻むものがあるとすると、当局の抵抗ではないかと思います。

既存の建設業者と利害関係のある政府はなかなか柔軟に基準を調整しないと思われます。

特に我が国の場合、相当時間がかかりそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。