帝国の墓場
アフガニスタンは「帝国の墓場」として知られており、過去に英国、ソ連、そして今度の米国と大国が関与を試みましたが、結果的に失敗に終わっています。
タリバンによる統治が今後始まる事が予想されますが、それを近隣諸国はどの様に見ているのでしょうか。
アフガニスタンは内陸国ですが、最も長い国境線を共有しているのは南のパキスタンです。そして西をイラン、北を中央アジア諸国(トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン)と接し、細い回廊を通じて中国とも国境を接しています。
英誌Economistが「Afghanistan’s neighbours are preparing for life with the Taliban」(アフガニスタンの隣人たちはタリバンとの共存を準備している)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
「アフガニスタンのすべての隣人は、タリバン政権が樹立されることをすでに受け入れています」と、ロンドンのシンクタンクであるロイヤル ユナイテッド サービス インスティテュートのウメル カリムは言います。
この地域ではタリバンが隣国を制圧する事を好む人はほとんどいませんが、問題はそれにどう対処するかについて合意できないことです。
代わりに、隣人のそれぞれは、自分たちの利益のために対応します。
パキスタンが最も重要です。
アフガニスタンとの国境が最も長く、つながりが深いだけでなく、タリバンとも密接な関係があります。
その強力な治安機関は、オサマ ビンラーディンを密かに匿い、アフガニスタンのイスラム過激派を静かに支えていたにもかかわらず、「対テロ戦争」ではアメリカを公に支援し、長い間二重のゲームを行ってきました。
パキスタンの将軍は、アフガニスタンのジハード主義者からの危険よりもライバルのインドとの競争に関心を持っています。
2002年から2016年の間にイスラム教徒のテロによって2万人以上のパキスタン民間人が死亡したことで証明されているように、そのリスクは小さいものではありません。
それでも、パキスタンは、タリバンの政権掌握を、イスラムの勝利、アメリカの敗北、そしてこれまでアフガニスタン政府にかなりの経済的および軍事的援助を与えたインドへの打撃と評価しています。
公には、パキスタン当局者は、アメリカの拙速な撤退とアフガニスタン政府の崩壊に驚かされたと言います。
彼らは、タリバンによる軍事的乗っ取りではなく、交渉による平和を望んでいると主張しています。
彼らはまた、パキスタンがイスラム主義者にほとんど影響を及ぼさないと主張しています。
この地域の西側外交官は、パキスタンの不誠実さを嘲笑しています。
アフガニスタンとのもう一つの長い国境を共有するイランは、タリバンにより苦しめられた関係を持っています。
その指導者たちは、アメリカが隣国の基地を放棄するのを見て喜んでいます。
しかし、自分たちのイスラム革命を近代化運動と見なすシーア派イスラム教徒として、女性はベールをかぶっている限り、勉強し、働き、職に就くことができます。
彼らはタリバンのスンニ派の狂信に疑問を投げかけています。
何十年もの間、貧しい難民とアフガニスタンからの安価なヘロインに悩まされたイランは、特にタリバンが過去に悪意を持って迫害したシーア派の少数民族であるハザラ人の新たな流入についても心配しています。
イランは、最近ヘラート市へのタリバンの攻撃を打ち負かした国境地域の地元のアフガニスタン民兵を支援する可能性が高いと思われます。
アフガニスタンの長く離れた指であるワハーン回廊が中国に隣接しています。
アジアの台頭する超大国は、西側の介入の失敗について道徳的に満足しています。
パキスタンの緊密な同盟国として、北京はタリバンに慎重に近づき、7月にグループからの上級代表団を迎えました。
彼らの主な懸念は、アフガニスタンがウイグル民族の分離主義者の後部基地になるべきではないということです。
タリバンは、イスラム教徒共通の信仰を裏切る外交的知識をもって、彼らの領土が「いかなる国の安全に対しても」使用されないことを約束しました。
しかし、中国は、ウイグル人がアフガニスタンで活動し、数千人の外国のジハード主義者に数えられているという事にいずれ気付くでしょう。
2001年9月11日の攻撃の直前に、アメリカはアルカイダについて同様の約束を与えられました。
百万人のウイグル人を刑務所収容所に投げ込んだので、中国はおそらくかなり安全です。
これは、アフガニスタンの3つの小さな中央アジアの隣国、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンについてはあてはまりません。
これら三ヶ国のイスラム過激派がアフガニスタンに避難しました。
国境全体がタリバンの手に渡った今、彼らは当然のことながら、一部の過激派が侵入することを恐れています。
3カ国すべてがロシアとのより緊密な軍事関係を受け入れてきました。
新たな地域の影響力を強調し、タリバンに警告を送るために、ロシア軍は先週、アフガニスタン国境に沿ってタジク軍とウズベク軍との大規模な共同作戦を実施しました。
タリバンはどこに向かうか
タリバン政権をいち早く承認した中国及びロシアは、米国が撤退し、力の真空状態が生じた隙をつこうという作戦と思われます。
彼らは米軍の撤退に関して、「もはや米国は同盟国を守ってくれない信頼のおけないパートナーだ」と宣伝活動を行っている様ですが、内心では米軍が撤退した後、アフガニスタンがテロリスト集団の巣窟になる事を恐れている様です。
中国には新疆ウイグル族の反政府運動という問題があり、その戦闘要員はアフガニスタンで訓練を受けていると言われていますし、ロシアがイスラム系のテロリストに悩まされてきた事はチェチェンとの戦いで明らかです。
今後タリバンがどの様な政権を作り、国内のテロ組織をどの様に扱うかは国際的な関心を集めると思います。
貧困や飢餓がテロリスト集団のリクルート活動の温床になってきた事を考えれば、人道的援助は今後も必要になるでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。