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マクロン大統領の米国依存に関する批判は正しいのか

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米国依存に警鐘を唱える仏大統領

アフガニスタンからの米国のあっという間の撤退は、同盟国に動揺を広げました。

特に中東やアフリカの親米国は肝を冷やしたに違いありません。

米国が20年の歳月と膨大な資金、兵力を投入し、国づくりに注力したアフガニスタンがあっという間に瓦解したのをを見た時、明日は我が身と思ったでしょう。

もちろん、米国はNATOや日本、韓国、台湾といった近い同盟国に対してアフガニスタンと同じ様な振る舞いをするとは思えません。

それらは米国にとって核心的な利益だからです。

しかし、米国は益々内向きになっています。

外国の領土や主権を守るために、米兵の血を流してまで本当に介入するのかという議論は今後米国でも活発になるに違いありません。

そんな中、フランスのマクロン大統領が米国に依存するのは危険だと主張しています。

この仏大統領​​の主張に英誌Economistが「After Afghanistan, Europe wonders if France was right about America - Emmanuel Macron argued the US could not be relied upon. He may have had a point」(​​​​アフガニスタン後、ヨーロッパはフランスがアメリカについて正しかったのではと思います - マクロン大統領は、米国は信頼できないと主張した。 彼は正しかったかもしれない。)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

今年の7月14日パリ祭の当日、カブールのフランス大使であるダビッド マルティノンは、アフガニスタン在住のフランス国民に3日後に特別便で出発するように呼びかけました。

後から考えれば、彼は、カブール陥落の1か月前に、もはや彼らに安全な出口を保証できないと宣言していたのです。

フランス人が5月にアフガニスタンのスタッフとその家族を引き抜き始めたとき、同盟国でさえ政権の崩壊を早めたと非難しましたが、ここ数週間で起きた事を考えれば、フランスは「印象的な先見性」を示した、と元英国大使のリケッツ卿は評価します。

アフガニスタンでの大失敗と一方的なアメリカへの依存について英国とドイツがショックに陥っている一方、 1956年のスエズ危機から、アメリカに完全に頼ることはできないという教訓を引き出したフランス人にとって、アフガニスタンは、彼らが長い間疑っていたことを確認するのに役立ちました。

 

しかし、すべてのヨーロッパ人がフランスの見解を共有しているわけではありません。

マクロンが2017年に、パリのソルボンヌ大学で演壇に上がり、「ヨーロッパの主権」と、ヨーロッパが必要とする安全保障問題において「自律的に行​​動する能力」を求めたとき、彼は孤立していました。

ドイツや東独諸国は、新たな厄介なドゴール主義者が、NATOを弱体化させようとしているとみなしました。

マクロン氏は、彼の考えが大西洋を越えた同盟に取って代わるのではなく、それを補完することであると同盟国に安心させようとしたので、多少反発は和らぎました。

それでも、ドイツの国防相のカレンバウアーは、「ヨーロッパの戦略的自治の幻想は終わらせなければならない」と率直に述べました。

一方、英国では、マクロン氏の呼びかけは、独自のグローバルな役割を自由に築くことができる島国とは無関係であるとして無視されました。

防衛に対するヨーロッパの主権のプールは、ブレグジットが回避するように設計されたものでした。

 

アフガニスタンでの大失敗は状況を変えました。

英国保守党のタジェンダットは、英国に「単一の同盟国に依存しないように」と促し、フランスとドイツを潜在的なパートナーとして指名しました。

英国の国防大臣のベン・ウォレスは、彼の軍隊は「異なる連合に参加し、1つの国に依存しない」準備をすべきだと提案しましたた。

紛争関与に消極的だったドイツも傷つきました。

ドイツの首相候補であるアルミン・ラシェットは、撤退を「NATOが創設以来経験した最大の大失敗」と説明しました。

要するに、ヨーロッパはもっと多くのことをしなければならないことを認識したようです。

これはまさにマクロン氏が主張していたことであり、暗黙の認識は、マクロン氏が正しかったということです。

 

しかし、ヨーロッパ人にとって、2つの大きな疑問があります。

どちらにも簡単な答えはありません。

まず、「ヨーロッパの主権」または「戦略的自治」とはどういう意味でしょうか?

ドイツは(英国やフランスとは異なり)GDPの2%という軍事費に関するNATOのベンチマークさえ満たしていません。

ヨーロッパ人は、アフガニスタンやイラクなどの地域紛争の限定的な管理だけを目指すべきでしょうか?

それとも彼らは自分たちの大陸の集団的防衛を引き受けることを望んでいますか?

アフガニスタンでさえ、フランスは諜報と兵站のためにアメリカ人を必要としていました。

 

第二に、ヨーロッパは本当に自力でやっていくために必要なことをする準備ができていますか?

証拠はありません。

「カブールの空港でさえ管理ができないのだから、我々の分析と行動能力の間には大きなギャップがあります」とドイツ国際安全保障研究所のクラウディア・メジャーは言います。

 

 「ヨーロッパ人が心理的に挑戦に立ち向かう準備ができているかどうかはわかりません」と、フランスの元駐米大使であるジェラール・アローは述べました。

マクロン氏は、カブール駐在の仏大使のように、正しい呼びかけをしたかもしれません。

しかし、ヨーロッパ人はそれに対応する準備ができているでしょうか?

我が国にも同じ懸念が

米国にとって欧州と並ぶ核心的利益である筈の日本も人ごとではありません。

米国がいざと言う時に本当に命をかけて守ってくれるのか、良く考える必要があるでしょう。

常識的に考えれば、他国を守るために自国の兵隊の命を賭けるのはためらうのが普通です。

これまで米国が我々を守ってくれるのは当たり前と殆どの日本人は思っていました。

しかし、冷静に考えると、これは当たり前ではありません。

吉田茂が描いた軽武装経済重視主義、要するに「安保ただ乗り」は冷戦のさなかだったからこそ通用したわけで、今後も未来永劫通用するものではありません。

例えば尖閣諸島で有事が生じた際、どのタイミングで米軍は戦力を投入するでしょうか。

我が自衛隊に多くの損傷が生じた後かも知れません。或いは関与しないかも知れません。

今度のアフガニスタンからの撤退は、欧州、日本にも多くの教訓を残してくれたと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。