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コロナがもたらすもの-大都市における変化

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コロナ前に戻るか

ワクチン接種の広がりとともに、世界経済は回復途上にあります。

しかし世界の主要都市では、経済活動が元に戻っていません。

テレワークの普及により、都市から流出した人々は元に戻ってこないのでしょうか。

この点に関して、英誌Economistが「The new economics of global cities」(国際都市の変化)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

新型コロナパンデミックからの経済回復は偏りが見られます。

一部の国はワクチンにより急速に立ち直ることができました。

一部のセクターでは需要が急増していますが、他のセクターでは依然として弱いように見えます。

凹凸のもう1つの大きな原因は徐々に明らかになりつつあります。

国民経済の復活に対し、都市は深刻な遅れをとっています。

 

パンデミックの前は、経済的および文化的な力が小さな地理的領域にますます集中するようになりました。

2000年に、ロンドン中心部で働く人の1日の給与は、郊外の2倍でした。

2019年までにそれは3倍に広がりました。

しかし、パンデミックはこの流れを変えました。

パンデミックの開始時の都市部からの流出は、多くの人が一時的であると考えていましたが、今ではより永続的に見えます。

大きな問題は、これが心配すべき事かどうかです。

 

世界の都市の動向を把握する1つの方法は、リアルタイムのモビリティ指標を使用することです。

Economistでは、小売店やレクリエーション、公共交通機関、職場への往復に関するGoogleデータを使用して、大都市のモビリティと国全体のモビリティを比較する「exodusインデックス」を作成しました。

アメリカ、イギリス、フランス、日本の活動は、全国よりも都市でかなり低いままです(図を参照)。

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出典;Economist

予約プラットフォームであるOpenTableによると、都市のレストランの予約は他の場所に比べて少ない様です。

サンフランシスコのサラリーマンの5分の1だけがオフィスにいます、

しかし農村地域は、この変化の主な受益者ではありません。

データは、都心を取り巻く地域に日が当たりつつある事を明確に示しています。

パリ中心部は、パリの他の地域よりも活気がありません。

アメリカでは、パンデミックが始まって以来、最も密度の高い300の郵便番号の郵便番号が5%減少しましたが、次に密度の高い300の地域では変化がありません。

大企業も同様の傾向を報告しています。

スターバックスのCEOは、「現在の環境での取引は、密集した大都市圏から郊外へ、そしてカフェからドライブスルーへと移行した」と述べています。

 

経済活動のシフトを歓迎するかどうかについては意見が分かれています。

経済学者は2つの長期的な懸念を持っています。

1つ目は雇用に関するものです。

プリンストン大学のLukas Althoffによれば、オフィスが空で、都市の観光客が少ないということは、タクシー運転手などの低賃金労働者の雇用が減ることを意味する可能性があります。

2番目の懸念は生産性です。

都市経済学者の洞察は、都市が多くの異なる人々を小さなスペースに詰め込むことによって、新しいアイデアやテクノロジーの育成に役立つということです。

遠隔地での仕事において、人々が個人的な絆を築き、他の人から知識を吸収するのが難しくなる事を心配しています。

 

2つの懸念はあたっているでしょうか?

雇用に関しては、楽観的な理由があります。

経済は、苦戦している都心からより需要の高い場所に仕事を再配分するのに迅速であり、全体的な雇用を増やしています。

最近の決算発表で、ハンバーガーチェーンのシェイクシャック社CEOは、来年の焦点は「主に郊外店」になるだろうと述べました。

英国の郊外での雇用は、全国的な雇用が減少しているにもかかわらず、1年前と比較して2%増加しています。

しかし、オーストラリアでは、その兆候は見られず、シドニーでの雇用は引き続き密集した地域に集中しています。

 

都心からのシフトが生産性に悪影響を与えるかどうかを知るのは難しいです。

人々がいつも家に閉じ込められていたら、新しいつながりを作り、新しいアイデアを発見するのは難しいでしょう。

ただし、オフィスでの勤務時間の30%(現在のアメリカの都市全体の平均)が減る程度であれば、イノベーションにそれほど影響を与えない可能性があります。

週に1〜2日の在宅勤務は、在宅と在宅の両方で人々の生産性を高める可能性があります。

過去の不況とは対照的に、アメリカの生産性の伸びは、パンデミックの間、減速するのではなく、加速しました。

 

都市はパンデミック前の状態に戻れば、観光業は回復し、上司は部下がオフィスに戻ることを主張する可能性があります。

しかし、それが起こらなくても、都市は成り立つかもしれません。

市長は、生活の質を向上させることにより、企業の誘致から住民の誘致、ひいては彼らがもたらす財産税と消費税に焦点を移しています。

ロンドンのオックスフォードサーカスは間もなく歩行者天国になるかもしれません。

パンデミックは都市を破壊することはありませんが、都市を変えるでしょう。

日本は欧米の様に変わるか

上記の世界4大都市のグラフを見ると、意外な事に、東京がパンデミックの中で最も経済活動が盛んだった事が窺えます。

日本は他国の様にロックダウン(都市封鎖)を行えませんので、非常事態宣言下と言えども細々と経済活動が行われた事を物語っています。

日本は欧米の様に変わるでしょうか。

私はかなり難しいのではと見ています。

テレワークは単にパソコンを自宅に導入すれば良いと言うわけではありません。

従業員の労働効率、生産性を評価するシステムも導入する必要があり、中小企業比率が非常に高い我が国で、これを導入する余裕のある企業は少ないと思います。

その上、デジタル化が遅れ、ハンコが未だに必要な会社文化が色濃く残っていますので、欧米の様にはいかないでしょう。

逆説的ですが、欧米の様に本格的なロックダウンを行えば、強制的にテレワークを普及させる事ができたでしょうが、緩い規制しかできない我が国はそのチャンスを逸したとも言えます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。