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バイデン大統領が世界の信頼を回復する起死回生の一手

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アフガン撤退に対する批判

バイデン大統領のアフガン撤退はあまりに性急に行われた結果、内外の評価は手厳しいものになっています。

米国では中間選挙への影響も取り沙汰されている様です。

そんな中、米誌Foreign Policyに興味深い論文が掲載されました。

Biden Can Bounce Back From Afghanistan—by Vaccinating the World」(バイデンがアフガン戦争から立ち直る一手 - 世界へのワクチン供与)と題したこの論文の著者Jonah Blank氏はバイデン氏が上院外交委員会委員長時代に政策顧問をされていた方です。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要旨

バイデン大統領がアフガニスタンから撤退するという決定についてどのように感じても、それが行われた方法に関して満足した人は少ない様です。

しかし、バイデン氏に、今大胆な行動をとる意思があれば、彼はそれらの批判を一掃し、すべてのアメリカ人の健康と安全を守り、米国の地政学的地位を回復し、道徳的義務を果たすことができます。

もちろん、指導者の主な義務は、国を安全に保つことです。

バイデン氏にとってもテロ対策は重要な責務です。

しかし、今日、米国は、数日ごとに、9/11レベルの犠牲者を新型コロナで失っています。

デルタ変異株は世界の反対側で発生しましたが、ウイルスには国境はありません。

そして、世界の人口のほとんどがワクチン接種を受けない限り、私たちは、世界の何十億人ものワクチン接種を受けていない宿主における突然変異によって必然的に生成される新しい変異株によって悩まされ続けます。

デルタはギリシャ語の4番目の変異株にすぎません。

ギリシャ語のアルファベットにはさらに20文字あります。

 

地球上の大多数の人々に予防接種をすることは、バイデン大統領に対する評価を一変させる可能性があります。

米国は自分たちを「不可欠な国」と見なすのが好きです。

しかし、今世紀に世界が経験した最大の脅威に直面して、米国はそのように行動していません。

政府はファイザーワクチンを5億回寄付することを約束し、8月の時点で1億1000万回を出荷しました。

これは中国、ロシアが提供したものよりもはるかに優れていますが、この誓約は、世界の人口の3パーセント分でしかありません。

米国がその数を100%に近づけるとしたら、地政学的な影響は想像を絶するでしょう。

 

それは実行可能ですか?

答えはYesです。

しかも、信じられない低コストでです。

国際通貨基金(IMF)によると、地球の人々に十分な量のワクチンを接種するのにかかる費用はわずか500億ドル(5.5兆円)です。

IMFはさらに、この投資が2025年までに9兆ドル(1,000兆円)の経済的利益を生み出し、その40パーセントが先進国にもたらされると見積もっています。

このIMFの計算が10倍ずれていても、それでも2,000%近くの投資収益率を表しています。

 

集団免疫に到達するのに十分な量のワクチンを接種するには、お金以上のものが必要です。

しかし、確固たる大統領のコミットメントがあれば、障壁の中で乗り越えられないものはほとんどありません。

世界保健機関、IMF、ゲイツ財団などが詳細な戦略を提示しています。

下記の通りボトルックの一部と、それらが回避される可能性についてご説明します。

ワクチンの限られた生産能力

米国は、国内外のすべての潜在的な製造業者が、米国特許を使用してワクチンのジェネリック版を製造させる事が可能です。

これを認可するためにアメリカの製薬会社に特許使用料を支払うか、必要に応じて、既存の法的権限を使用して特許放棄を義務付けることもできます。

成分調達および関連用品の問題

グローバルなサプライチェーンは複雑です。

ボトルネックは、ワクチンの保管に必要な小さなガラス瓶にも及びます。

しかし、米国には、国防生産法という国家緊急時にそのような障壁を打破するために特別に設計されたツールがあります。

トランプは一般的にこのツールの使用を拒否しましたが、バイデンは必要な場所でこの行為を使用することを約束して大統領に就任しました。

訴訟の懸念

ジェネリック医薬品の多くの生産者(ほとんどが米国外に拠点を置いています)は、特許訴訟を恐れて新しいワクチン工場に投資することに消極的です。

それは見当違いの懸念ではありません。

製薬会社は頻繁に訴訟を起こし、その中で最も略奪的なものは米国の法制度を最大限に活用していることがよくあります。

 

上記は、潜在的な問題点です。

他にもロジスティックや組織上の障害があります。

しかし、米国政府は、そのような課題を克服するのに優れています。

ジョージWブッシュ大統領によって開始されたHIVと闘うためのプログラムである大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)は、850億ドル(約9.3兆円)を投資し、世界中で推定2,000万人の命を救いました。

地球上で最もロジスティックに能力のある組織は米軍です。

カブールからの大規模な避難がそうであったように、絶え間ない攻撃の脅威を受けながら、3週間で12万人を移動させることができる機関は他にありません。

 

ほとんどのアメリカ人は、アフガニスタンで起こっている多くの人たちの悲劇のために、アフガニスタンに心を痛めています。

アフガニスタンの人々は、多くの抑圧者の下で、長期間、あまりにも多くの苦しみを味わってきました。

タリバン、彼らの前には残忍な武将たち、そして彼らの前には冷酷なソビエト占領がありました。アメリカの関与は異なるはずでした、:例えば、アフガニスタンの女性​​と少女の世代は学校に行くことができました。

しかし、今では多くのアフガニスタン人が米国に裏切られたと感じており、そのように感じる事はは間違いではありません。

 

アフガニスタンの人々への借りは、お金や血で支払うことはできませんが、良心による提案によって支払う事は可能です。

タリバンとイスラム国-コラサンを合わせたものと同じくらい危険な脅威である新型コロナからアフガニスタンの市民を保護する手段を米国は持っています。

米国が世界にワクチン接種する長いプロセスに着手する際に、アフガニスタンを優先するという手があります。

3,800万人のアフガニスタン全国民の為のワクチンを新たに生産する必要はありません。

IMFの計算によると、米国に在庫があるジョンソン&ジョンソンワクチンとアストラゼネカワクチンは、米国の人口に必要な量より2億1500万回多くなっています。

これらの用量の多くは、米国市民がそれらを受け入れることを拒否するため、有効期限が切れるリスクがあります。

 

バイデンはアフガニスタンに4回旅行しました。

私はそれらのうちの3つをお膳立てし、彼がアフガニスタン人と交流しているのを見てきました。

彼の人間に対する深い共感は、アメリカ人に限定されないことを私は知っています。

世界に予防接種を行い、アフガニスタン人を最優先にする事で、彼はその共感を効果的な行動に変えることができます。

 

考えられる質問や反対意見はたくさんあります。

なぜ米国の納税者は500億ドルを支払う必要があるのでしょうか。

この負担をすべての国で分担できないのはなぜですか。

なぜ中国はそれをすべきではないのですか?

予防接種に反対するアメリカ人が考えを変えた場合に備えて、米国がワクチンの備蓄を必要としている場合はどうなりますか?

製薬会社の利益を損なうことはありませんか?

これらの反論のいくつかは議論する価値がありますが、このプロジェクトを実行に移さない場合の莫大な費用に見合う価値のあるものはありません。

 

私がバイデンと仕事をしていた時、彼は私に重要な決定について幅広い選択肢を提示することを主張していました。

彼は、安全で臆病な選択肢のメニューに限定されることを決して望んでいませんでした。

 

今、彼には絶好の機会があります。

彼は、現在直面している最も危険な脅威からアメリカ人を守り、国の世界的地位を復活させ、アフガニスタンが信頼を破壊したという考えを止め、少なくとも部分的にアメリカの道徳的地位を回復することができます。

アメリカの信頼回復

今回のアフガニスタンからの撤退で米国民は傷つきました。

しかしより傷ついたのは、長い戦争で多くの犠牲者を出し、厳しい生活を強いられたアフガニスタン国民です。

9/11の後、米国は怒りで国中が燃え上がり、イラクとアフガニスタンに戦争をしかけましたが、この過程で多くの無辜の市民が犠牲になりました。

上記論文が唱える通り、バイデン政権がコロナワクチンを世界の国々に無償で提供し、その中でもアフガンを最優先するというアイデアは素晴らしいと思います。

それはアメリカ人の寛容な精神をアフガニスタンの人だけでなく、世界中の人々に示すことになり、アメリカがアフガン戦争で失った信頼回復に直結すると思います。

私の知るアメリカ人の多くは大らかで、人種や宗教にも寛容な人々です。

歴史を紐解けば、長く続いた大帝国であるローマ帝国やオスマン帝国は異教徒や異宗教に寛容でした。

今こそアメリカは世界のリーダーとしてその寛容さを世界に示す時だと思います。

 

最後まで読んで頂き、誠に有り難うございました。