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ブースター接種は必要か-イスラエル首相の主張

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ブースターは必要か

世界中でデルタ株の感染が広がり、二回ワクチン接種を行った人も感染するケースが多く見られる様になっています。

一部先進国では3回目のワクチン接種(ブースター)を行うべきという議論が出てきていますが、ブースター接種は1回目の接種も行われていない発展途上国でのワクチン普及を遅らせる事になります。

この難しい問題に関して、ワクチン接種の先頭を走ったイスラエルのベネット首相が自ら英誌Economistに寄稿し、イスラエルの経験及び彼の判断について説明を行っています。

Naftali Bennett on why Israel is giving booster jabs for covid-19」(イスラエルがブースター接種を決断した理由)と題した記事かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

世界が新型コロナと戦う中、ワクチンは非常に重要です。

しかし、先進国の人々は、貧しい国の人々が最初の接種を受ける前に、ブースターを受けて良いものか悩んでいます。

イスラエルの経験は有益かもしれません。

 

7月、私の政府は、イスラエル国民にファイザー-バイオエヌテックワクチンの3回目の接種を行うことを決定しました。

難しい決断でした。

3回目の投与の安全性または有効性に関する規制当局の承認はありませんでした。

一方、世界保健機関は、発展途上国にワクチンを優先的に投与する様に呼びかけました。

私たちの医療委員会の意見は別れました。

公衆衛生の専門家は得てして保守的でリスク回避する傾向があります。

これは、平常時には役立つ特性ですが、パンデミックの様な緊急事態には、意思決定が遅くなる可能性があります。

パンデミックは健康問題だけではありません。

それは、経済、教育、ロジスティクスとサプライチェーン、メンタルヘルスなど、多くの分野に影響を与えます。

パンデミックとの戦いは戦争と似ており、戦略的決定は専門家や将軍ではなく、より広い視野から政府によって行われる必要があります。

戦争のように、パンデミックにおいては、不確実で部分的な情報を基に迅速な決定を下す必要性があります。

このリスクを取ることは、選出されたリーダーの責任です。

 

私の政府が6月中旬に誕生した時、コロナウイルスを打ち負かしたという感覚がイスラエルにはありました。

イスラエルによるワクチンの早期接種は、2月に第3波を抑制し始め、フェイスマスクは不要となり、生活は正常に戻りました。

しかし、4月にデルタ変異株がイスラエルに到着し、7月までに、症例が急速に増加し始めました。

最も心配な点は、感染者の多くがワクチン接種を受けていた事でした。

私たちは何が起こったのかを理解しようとしました。

デルタ変異株は、その毒性が強かったのでしょうか、それとも単にワクチンの効果が時間とともに衰えることの問題でしたか?

私たちはすぐにそれが両方の要因の組み合わせであるという結論に達しました。

イスラエル人は早い段階で接種を受けていた為、防御力が弱まり始めたときに新しい変異株に対してより脆弱でした。

逆説的ですが、2回の接種をしている人は、保護が弱まっていても、完全に保護されているかのように考えて行動するため、リスクが高くなる可能性があります。

 

専門家がブースターに躊躇するもう1つの理由がありました。

一部の専門家は、ワクチンだけに頼ることはできず、新たなロックダウンの必要があると考えていました。

首相として、私には2つの選択肢がありました

イスラエルを新たなロックダウンに引きずり込み、経済と社会にさらに害を及ぼすか、ワクチンを中心的な戦略として倍増し、フェイスマスクの義務化などの制限の少ない措置を講じることです。

新たなロックダウンによる経済への悪影響を回避することに加えて、ブースター接種を進める理由がもう一つありました。

デルタ波が上昇するにつれて、ワクチン接種を受けた人々の方に、ワクチンを受けていない人々よりも多くの症例がありました。

二度接種された人々が感染して病気になると、それはワクチンに対する国民の信頼を損ない、他の人々がワクチン接種を受けるのを思いとどまらせます。

ワクチンに対する国民の信頼を守るために3番目のジャブが必要であると判断しました。

症例が急増したにもかかわらず、企業、学校、公の行事を閉鎖しなかったのは初めてのことでした。それは計算されたリスクでした。

しかし、3番目のワクチンを急いで入手した300万人のイスラエル人のおかげで、感染症と入院の数が減少し始めました。

これらはイスラエルだけでなく多くの国にとって重要な教訓です。

3番目の追加ワクチンは、デルタ変異体に対して成功することが証明されています。

最近の研究によると、3回目の接種は、2回の接種しか受けなかった人と比較して、ワクチン接種を受けた人と60歳以上の人が重症例を発症するリスクを90%減らしました。

投与を開始する前にあと3週間待っていたとしたら、イスラエルの医療センターは重症者で溢れていた事でしょう。

 

発展途上国の多くがまだ最初の投与を受けていないときに3回目の投与が正当化できるかどうかという問題については、グローバルコミュニティと協力しながら、自国の命を救うためにできることを行うことが重要であると考えています。

発展途上国はウイルスと戦っています。

しかし、世界的な供給は着実に増加しているため、ワクチンの入手可能性だけが懸念事項ではないことを認識しなければなりません。

 

予防接種の必要性と成功を弱体化させようとしている人々がいます。

早期にワクチン接種を受けた人々の防御を弱めることを許せば、ワクチンを批判する人たちに武器を与える事になります。

他の国々もタイムリーなブースター接種を行ったイスラエルに続くと信じています。

常時臨戦態勢のイスラエル

確かに、イスラエルは周囲をアラブ諸国に囲まれ、テロリストの攻撃からも常に警戒を行わないといけない状況にありますので、今回のコロナに対しても、常にリスクを伴う判断を行ってきたと思います。

未だワクチンの実効性が確認されていない段階で、世界に先駆けてワクチンの接種を行った判断がその代表格です。

隣国の脅威にさらされている台湾も同様に、コロナの封じ込めに成功しています。

この両国は感染症の専門家の意見を聞きつつも、最後は政治家がリスクを取って判断し、被害を最小限に食い止めたと言えるでしょう。

リスクを取りたがらない専門家の意見を聞きつつも、政治家が迅速に決断する。そして責任は政治家が取る。これが正しいやり方の様に思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。