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アルカイダとイスラム国 - タリバンとの関係は

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過激テロリスト集団

タリバンによる実効支配が確立したアフガニスタンにおいて気になるのはアルカイダイスラム国(ISISとしても知られる)といった過激なテロリスト集団の活動が活発化する事です。

そもそもアルカイダとイスラム国の違いを、私も恥ずかしながら良く理解できていないのですが、米誌Foreign Affairsが「Al Qaeda Versus ISIS - The Jihadi Power Struggle in the Taliban’s Afghanistan」(アルカイダ対ISIS ー タリバンのアフガニスタンにおける聖戦主義者の権力闘争)と題した論文を掲載しました。

著者のCole Benzel氏はフーバー研究所の上級研究員の方です。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

タリバンによるアフガニスタンのあっという間の制圧は、アフガニスタンが国際テロ行為を実行しようとするイスラム過激派にとって再び安全な避難所になるのではないかという懸念を引き起こしました。

そのような過激なグループを受け入れてきたタリバンの歴史に照らして、これらの恐れは正当化されます。

しかし、国で影響力を争う2つの運動、アルカイダとイスラム国(ISISとしても知られている)はどちらも、アフガニスタンをテロ攻撃の新たなプラットフォームとして使用するという彼らの目標において深刻な障害に直面しています。

一方、この二つのグループのタリバンに対する評価は大きく異なります。

アルカイダにとって、タリバンの今回の勝利は大きな勝利ですが、ISISにとって、それは勝利どころか、タリバンがアメリカ人と協力している証しにしかなりません。

 

将来のカリフ制かアメリカの同盟国か?

2013年のISISの台頭と翌年のカリフ制の宣言以来、アルカイダはISISより穏健な地位を確立しようと努めてきました。

アルカイダはまた、タリバンとの緊密な関係を深めています。

2つのグループの関係は、アルカイダの指導者オサマ・ビンラーディンがタリバン傘下のアフガニスタンに滞在した1996年までさかのぼります。 

ビンラーディンの後継者であるザワーヒリのリーダーシップの下、アルカイダはタリバンへの忠誠をますます強調してきました。

これは、タリバンがアルカイダへの支援をやめることを約束した、米国とタリバンの間の2020年2月の合意と矛盾するように思われます。

ご存知の通り、タリバンはアルカイダとの「関係を断ち切る」ことに同意しませんでしたが、彼らはアルカイダや同様のグループを支援したりしないことを約束しました。

彼らはまた、アフガニスタンが「米国とその同盟国の安全を脅かすために」使用されることを許可しないことも約束しました。

 

しかし、アルカイダの上級指導部は、アメリカとタリバンの合意に腹を立てていなかったようです。

2020年3月、グループは約束されたアメリカの撤退についてタリバンを祝福する声明を発表しました。

アフガニスタンのイスラム首長国は、「イスラム国の核」、つまりカリフ制として描かれ、「神の純粋な法則によって支配される」と称えています。

アメリカの敗北は、「欧米パの傲慢の時代と、イスラム教徒の土地を軍事的に占領したいという彼らの願望」の終わりを示し.タリバンの勝利は、ジハードが勝利につながる「唯一の道」であることを示したと説明しています。

 

アルカイダがタリバンとの関係を強化している間、ISISはタリバンが血迷ったと非難しました。

ISISの説明では、2013年のムラーオマールの死後、タリバンはイスラム法の適用を怠り、アフガニスタンのシーア派少数派に対してますます寛容になり、非信者国家との関係を築こうとした事になります。

タリバンとISISはそれ以来戦争状態にあり、米国がタリバンに効果的に航空支援を提供していると非難しています。

ISISにとって、タリバンがアフガニスタンで「勝利」を達成したという考えは失笑を禁じ得ないものです。

彼らの見解では、実際に起こったことは、米国が事実上米国の顧客となったタリバンに積極的に権力を渡したというものでした。

タリバンが、9.11のような事態が二度と起こらないようにすることを約束していたので、「アメリカは発砲せずにタリバンに権力を手渡した」。

 

明らかに、アルカイダとISISの見解は一致していません。

タリバンは、アルカイダとの関係を維持する事と、アフガニスタンの合法的な統治者として国際的な認知を確保する事の両方を望んでいます。

タリバンは、過去20年間共にアメリカに対して戦ってきたアルカイダとの関係を持続したいと考えていますが、一方でタリバンはアルカイダをコントロールする事にも強い関心を持っています。

特に現在タリバンは国際的な認知を求めていますので、アルカイダが西側や他のイスラム国家に対して攻撃を開始することを許可することは愚かでしょう。

タリバンがアルカイダの活動にスペースと財政的支援を提供する一方で、グループの活動を制限するシナリオを想像するのは難しいことではありません。

このシナリオでは、アフガニスタンは再びアルカイダの避難所になりますが、他国での攻撃は禁止されます。

 

アルカイダは、破壊された組織を再建するまでには長い道のりが必要です。

2020年8月、アルカイダの2番目の指揮官がテヘランの路上で銃撃されました。

2か月後、別の上級司令官であるHusam Abdal-Raufがアフガニスタンで殺害されました。

多くの主要な指導者もシリアに逃げましたが、アメリカのドローン攻撃で殺害され、シリア北部はジハードの「狩猟場」と表現されています。

さらに問題を悪化させているのは、グループのリーダーであるザワヒリが病んでいると考えられていることです。

ザワヒリの後継者と思われる61歳のサイフアル アデルは、20年近くイランに住んでいます。

イラン政府は、彼らにある程度の移動の自由を認めていますが、彼らが国を離れることを禁じています。

彼らのイランでの居住はアルカイダにとって深刻な問題を引き起こします。

グループは、シーア派イランを宗教的および政治的敵であると見なしているためです。

イランを拠点とするアルカイダの指導者たちは、おそらくアフガニスタンへの移住を模索するでしょうが、イランが許可するかどうかは不明です。



皮肉なことに、タリバンの支配からより多くの利益を得ることができるのは、タリバンの敵であるISISである可能性があります。

アフガニスタンのISISは深刻な損失を被り、もはや領土を支配していませんが、新しい現実を利用するための明確な戦略があります。

8月下旬にカブール空港で米国を攻撃することにより、ISISはアメリカ人を殺そうとしただけでなく、タリバンの支持者にタリバンが腰抜けになっている事を示そううとしました。

ISISはタリバンがカブール空港で「十字軍とそのスパイ」を保護していると非難しました。

しかしISISはタリバンの中の強硬派に支援を広げる事ができても、それ以上支持基盤を拡大するのは難しいでしょう。

 

アルカイダとISISはどちらも、アフガニスタンでの再建を試みる上で深刻な課題に直面しています。

タリバンの復帰は、アルカイダの再編成の機会を生み出す可能性がありますが、その実現は難しいでしょう。

ISISは、国内の広範な支持を得たり、タリバンに対抗することは困難です。

一方、米国は、潜在的なタリバンの支援を受けて、継続的なドローン攻撃を通じて両方のグループを劣化させようとし続けます。

 

米国とその同盟国は、これらのグループの一方または両方が再び活性化しないように、警戒を維持する必要があります。

しかし、ジハードたちのアフガニスタンでの成功は決して当然の帰結ではありません。

毒をもって毒を制す

「米国が潜在的なタリバンの支援を受けている」と言う事実は知りませんでした。

この論文を読む限り、タリバンはアルカイダ、ISISに比べれば、かなり穏健派の様に見えます。

今、タリバンは国際社会の認知を何よりも求めています。

国際認知をテコに、タリバンにやらせてみるも一案ではないかと思います。

米軍が二十年かけても出来なかった、アルカイダやISISの押さえ込みを彼らは成し遂げるかも知れません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。