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存在感の低下に悩むフランス

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不意打ちを喰らったフランス

今回のオーストラリアの原子力潜水艦に関する英米との契約そしてそれに伴うフランスとの通常型原潜建造契約のキャンセルは、フランスのマクロン政権にとって大きな痛手となりました。

欧米のメディアはこの話題で持ちきりです。

今日は米国とフランスの記事をご紹介しましょう。

米紙ウォールストリートジャーナル記事要約

米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」からのけ者にされ、400億ドル(約4兆3800億円)の豪州向け潜水艦建造計画をキャンセルされたフランスは先週、猛烈に反発しました。

コスト超過分を含め600億ドル以上に上る契約を失ったことは、2020年の国防予算が総額500億ドル強にすぎないフランスにとって、確かに大きな痛手です。

しかし、豪州との契約はフランスにとって金額以上の意味がありました。

豪政府が英米政府との間でAUKUSの枠組みを構築するために、仏政府との国防面での長期的関係の打ち切りを決めたことは、深い傷を残しました。

まず指摘しておくべきなのは、今回の一件が、フランスの次期大統領選挙に向けたキャンペーンが熱を帯び始めた頃に、マクロン仏大統領に公の場で大恥をかかせることになった点です。

同国の外相は、AUKUS諸国の行動について、フランスに対する不意打ちであり、裏切り行為でさえあると非難しました。

しかし、こうした想定外の出来事を防ぐのが、一国の外交、軍事、情報当局の仕事です。

フランス人は、考えの足りない米国人や、田舎者の豪州人、論評に値しない英国人らにだまされるお人よしの大統領を選んだのではありません。

しかし、これはマクロン氏への打撃にとどまらず、より大きな問題です。

潜水艦契約は、フランスの21世紀戦略の中心を成していました。

この契約により、インド太平洋地域の中心に長期的な影響力を持つ足場を確保したと感じていました。

さらに良いことに、同国は英国の裏をかき、英語圏のファイブアイズに割り込んで、豪州の特別な防衛パートナーになりました。

この壮大な夢の崩壊は、フランスに大きな打撃を与え、衰退への根深い恐怖を呼び起こしています。

欧州連合(EU)でドイツがかつてないほど支配的になり、英語圏の国々が多い中で、フランスの影響力が軽視される状況において、フランスに残されている役割は何なのでしょうか。

フランスの反発の後、チーム・バイデンは味方のはずのリベラルな国際主義者から攻撃を受けてます。

彼らは欧米間の同盟関係を立て直すというバイデン氏の約束はどうなっているのかとの疑問を抱いています。

こうした懸念は的はずれです。

AUKUSの創設は実質的に、米国のインド太平洋政策の大きな前進となります。

米国はもっと上手に立ち回れた可能性はありますが、優雅に結婚式をキャンセルする方法などほとんどありません。

実際、米国が欧州の重要なパートナーを犠牲にしてまでも、太平洋戦略を前進させようとしているとの認識は、敵に対しても味方に対しても、重要なシグナルを送っています。

 

次は恥をかかされたフランスの経済紙Les Echosの記事です。

Les Echos紙記事要約

フランスは月曜日に、ヨーロッパのパートナーの支持を得、満足しているとEU外交の責任者であるジョセップ・ボレルは語りました。

EU委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、CNNチャンネルのインタビューで、フランスが「扱われた」方法は「容認できない」と述べました。

欧州理事会の議長であるシャルル・ミシェルは、米国側の「忠誠心の欠如」と非難し、Aukusと呼ばれるこのアングロサクソン同盟にどのように反応するかはまだ分からないと語っています。

中国の影響に対抗するために、人権を尊重する共通の規制を確立することを目的とした米国ピッツバーグでの欧米貿易商工会議を延期する事を欧州各国は検討中です。

しかし、多くの加盟国、特にバルト諸国は、この会議を維持したいと考えています。

今後決定するのは欧州委員会次第です。

重要な国だが、存在感の低下は否めないフランス

フランスの今回の痛手は大きく、かなり尾を引く事になると思います。

今回の一連の出来事で明らかになってきた事は、米国が重要な同盟国フランスを激怒させてまでも、インド太平洋地域へのコミットを具体的な形で示した事です。

欧米の関係を悪化させたトランプ大統領を批判し、同盟国なかんずく欧州との関係を修復する事を公約としていたバイデン大統領が不退転の覚悟を見せた瞬間でした。

一方、フランスの衰退も明らかになってきました。

EU内ではドイツが圧倒的な存在感を示す中で、外交に活路を見出してきたフランスは、最近アフリカや中東で失態続きです。

今回の出来事はフランスの外交能力の限界を示したものとも言えます。

フランスは英国と同盟関係にある時は、負けませんが、英国がフランスから離れるとうまくいかなくなる傾向があります。

今回も舞台裏でお膳立てをした英国に見事に裏をかかれた感があります。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。