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AUKUSがアジア版NATOに発展する可能性

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AUKUSが与えるインパクト

米英豪三ヶ国の安全保障協定であるAUKUSが先日発表されましたが、これはインド太平洋における安全保障に大きなインパクトを与えました。

アングロサクソン系の協定であるAUKUSは排他的な印象を与えますが、この協定が欧州におけるNATOの様な広範な枠組みになる可能性が取り沙汰されています。

この点について米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)が、「Aukus Is the Indo-Pacific Pact of the Future - Imagine if Japan, India, Taiwan and the bloc swap tech and coordinate defense.(AUKUSは将来のインド太平洋安全保障条約か - 日本、インド、台湾等がハイテクと防衛で団結する可能性)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

国際的な首脳会議が、大げさな内容の共同声明を発表して閉幕することはよくある事です。そしてその内容はすぐに忘れ去られます。

しかしバイデン米大統領、ジョンソン英首相、モリソン豪首相が今月発表した、米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」の創設が、すぐに忘れられることはないでしょう。

それは、この合意がフランスを怒らせたからではありません。

さらに言えば、米国のインド太平洋域への長期的関与を際立たせるものだからでもありません。

AUKUSは深く根差しながら柔軟性も併せ持った技術大国間の連携枠組みであり、21世紀の世界像を描き出し、米国のインド太平洋域での協力関係のモデルにもなり得るものです。

モリソン首相がインタビューで答えたところによれば、AUKUSの枠組みは、オーストラリアの人々の考えが起点になったといいます。

何年にもわたってオーストラリアへの圧力を強めてきた中国は、昨年11月に豪州が中国政府との関係を改善するためには、14分野の中国の不満を解消しなければならないと警告しました。

この中で中国側は、豪州が取るべき措置として、「反中国」的な研究への資金援助の停止、新型コロナウイルスの発生源に関するより徹底した調査を求めるような挑発的行動の抑制、中国による豪州への戦略的投資に反対する動きの停止、民間メディアによる中国関連の「非友好的」ニュース報道の阻止などを挙げました。

また、中国の海軍力強化の規模とスピードを目にした豪州の国防担当者らは、国防戦略の見直しを強いられました。

この見直しで犠牲になったのが、フランスとの戦略的パートナーシップへの信頼感です。

とどまるところを知らない中国の台頭を受けて豪州は、自国が必要とする抑止力、防衛力を保証できるのは、米国との関係緊密化だけだと結論付けました。

モリソン政権は気付きました。

インド太平洋地域には、北大西洋条約機構(NATO)のような、正式な安全保障協定を求める声がありません。

しかし、豪州は、米国の外交官リチャード・ハース氏が「民警団」と呼んだことで知られる、緩やかな有志連合ではなく、より強固で耐久性のあるものを求めていました。

豪州は、英米のパートナーを説得し、情報共有のパートナーシップであるファイブアイズ(米国、英国、カナダ、豪州とニュージーランド)が第2次世界大戦以降何十年をかけて築いてきた深い信頼を利用して、「民警団」とは違う新しいものを創設しようと考えました。

豪州はこのパートナーシップを情報分野から研究および防衛計画を含めるまでに拡大しても良いのではないかと考えました。

こうした協力のモデルは既に存在していました。

米国は核を推進力とする潜水艦に関する機密技術を英国と共有していました。

豪州はこの計画に加わり、量子コンピューターから人工知能(AI)、電子戦争、ミサイル、サイバーに至るまでの分野で3カ国が一層協力することを提案すれば、軍事および外交的な利益とともに、経済的利益がもたらされる可能性があると考えました。

バイデン政権や自ら掲げる「グローバル・ブリテン」のスローガンを具体化しようとする英首相からの熱い支援を受け、AUKUSは国際的な外交の基準からすると、猛スピードでまとまりました。

3カ国の巨大で扱いにくい安全保障分野の官僚機構を調和させるとともに、民間部門にもこのプロセスへの参加を促すという次の段階は、より困難な仕事となるでしょう。

インド太平洋諸国は多くの欧州諸国に比べ、主権の共有や、官僚的な機構を構築することへの関心が薄いのが特徴です。

東南アジア諸国連合(ASEAN)は欧州連合(EU)よりも緩く、日米豪印で構成されるクアッドは北大西洋条約機構(NATO)よりも緩いです。

中国の行為が、近隣諸国・地域を米国との一層緊密なパートナーシップに向かわせるならば、日本や台湾が、よりAUKUSに近い取り決め、そしておそらくはAUKUSそのものに加わる可能性があります。

日本、インド、台湾、AUKUS参加国を含む諸国が技術を共有し、防衛政策で協調するブロックとなれば、強大な力となるでしょう。

安全保障協定だけで十分か

AUKUSがNATOの様なより本格的な安全保障協定に発展すれば、それは中国に対する大きな大きな抑止力になると思います。

しかし安全保障だけの枠組みだけでは不十分で、経済貿易面での枠組みも必要です。

これがなければ、韓国の様に「軍事は米国、経済は中国」という様ないいとこ取りをする国が現れます。

TPPとAUKUSが日米英を含めた大きな枠組みになった時に、初めてインド太平洋地域における実効性のある体制が整ったと言えるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。