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原発をテコに地球温暖化目標を達成する欧州

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ガス価格高騰の中、原子力を売り込む仏政府

日本の総裁選では、あまり突っ込んだ議論が行われませんでしたが、地球温高対策とそれに関連するエネルギー政策は、日本の将来を決めかねない重要な政策です。

この問題にEUがどう対処しようとしているのか、そのしたたかさが窺える記事が仏紙Les Echosに掲載されました。

「Electricité, nucléaire: Paris marque des points à Bruxelles」(原子力発電についてフランス政府はEU本部で得点を稼いだ)と題された記事ご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

フランスの経済財務大臣である彼ブルーノ・ル・メールは最近のガス価格の高騰を見逃しませんでした。

彼はルクセンブルグでEU各国とEUnoエネルギー問題について精力的に意見を交わしました。

フランス政府は、構造改革を提案します。

彼は、現在の危機が明らかにするのは単一の電力市場の見直しであると予測しています。

それは、電気の価格がガスの価格に過度に依存していることから始まります。

 

ブルーノ・ル・メールは、ヨーロッパレベルで「すべての国の平均電力生産コストと、たとえば長期契約や規制された料金を通じて消費者が支払う価格との間の直接的なつながり」を確立したいと考えています。現在電力の販売価格はガスの販売価格に依存しています。

 

議論は複雑になります。

ドイツ、オランダ、その他の北欧諸国は、これまでのところ、市場が価格を制御する事を支持しています。

しかし、スペイン、ギリシャ、チェコ共和国、ポーランド、そしてもっと臆病なイタリアも、価格の変動を制限するための措置を求めています。

 

EU大統領は火曜日に、「欧州理事会では、貯蔵と戦略的備蓄の構成について話し合い、ガス価格が高いために高い電力市場価格の全体的な構成を検討する」と述べました。

ブルーノ・ル・メール 「気候変動との戦いに成功したいのなら、原子力にもっと投資しなければならない」と彼は主張した。

「ヨーロッパの目標達成は、この炭素を含まないエネルギーなしで行うことは不可能である」と主張し、「炭素ベースのエネルギーが「グリーンディール」の影響下で永続的にコストが増加する状況ではなおさらです。」と付け加えました。

フランスは何ヶ月もの間、欧州委員会に対し、市場を導く目的で「グリーン」投資を定義するヨーロッパの法律に原子力を含めるよう求めてきました。

「それは絶対に必要なことです」とブルーノ・ル・メールは繰り返しました。

欧州のしたたかな戦略

地球温暖化対策は重要なテーマだと思いますが、地球温暖化対策は各国の産業構造を根本的に変えてしまうほどのインパクトがある事も忘れてはならないと思います。

欧州は当初より地球温暖化に熱心で、世界をリードしています。

地球の将来の事を考える良心的な人たちだと考えるのは少しお人好しの様な気がします。

欧州特にドイツが石炭を捨てて再生可能エネルギーに大きく舵を切れたのは、強力な原子力発電能力を持つフランスが、いつでも必要な時に電気を分けてもらえるからでした。

今欧州はこの原子力をグリーンな電源と見做す事により、地球温暖化ガスの排出目標を達成しようとしています。

欧州の狙いは、フランスの原子力発電をベース電源にする事によりドイツなどの再生可能エネルギー技術(洋上風力等)を発展させ、世界を席巻しようと考えているのです。

電気自動車に熱心なのも、内燃機関に強い日本を置いてきぼりにしようとの作戦と思われます。

これに対して英米も追随しています。

彼らはEUほど再生可能エネルギーに傾注していませんが、何よりオイルメジャーが化石燃料を抑えているので、再生可能エネルギーへの過渡期においてぼろう儲けするのは彼らです。

翻って我が国はどうなるのでしょうか。

原油も天然ガスも輸入依存で、再生可能エネルギーについても欧米に比べて条件に恵まれていません。

電気自動車へのシフトが早まれば、自動車産業に従事している数百万人の雇用が危ぶまれます。

原発も選択肢として真剣に検討しなければ、温暖化の目標も達成できませんし、電気代は高騰するでしょう。

今後のエネルギー政策は日本の競争力にも大きく影響します。

真剣な議論が必要と思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。