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今年のノーベル平和賞が発したメッセージは何か

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米大統領が欲しがる勲章 - ノーベル平和賞

ノーベル平和賞は多くの政治家に与えられたことから、過去に何度も物議を醸してきました。

米国の大統領はこの賞を獲得する事を目指す人が多く、あのトランプ前大統領も密かにこの賞を狙ったと伝えられています。

今年の平和賞はそんな政治家の野心を嘲笑うかの様に、反政府を旗印とするジャーナリスト二人に与えられました。

英誌Economistが今年の平和賞に関して「Two journalists who have exposed human-rights abuses win the Nobel peace prize. But the committee could have made a bolder choice」(​​人権侵害を暴露した2人のジャーナリストがノーベル平和賞を受賞 - しかし、審査委員会はもっと大胆な選択をすることができた)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ノーベル平和賞はここ数年あまり褒められた内容ではありませんでした。

2019年、エチオピアの小さな隣人であるエリトリアとの和平協定を結んだことで、エチオピアの首相であるアビィ・アハメドは大いに賞賛されました。

「私たちは市民の心に愛、許し、和解の種を植えなければなりません」とアビィ氏は受賞講演で述べました。

しかし、昨年、エチオピアの北部地域で不満を持った兵士が反乱を起こしました。

アビィ氏は報復として残忍な警察行動を開始しました。

 

ノーベル平和賞委員会は以前にも物議を醸したことがあります。

ヘンリー・キッシンジャーは1973年に受賞しましたが、米国は彼の戦略に従って、カンボジアをじゅうたん爆撃していました。

今年のブックメーカーのお気に入りの中には、スウェーデンの10代の環境保護論者であるグレタ トゥーンベリ、世界の予防接種を支援する取り組みに対して世界保健機関(WHO)そして、昨年、神経ガスで殺されかけ、投獄されたロシアの反体制派アレクセイ・ナワルニーがいました。

しかし最終的に平和賞は2人のジャーナリストに与えられました。

ドミトリー  ムラトフ氏は、ロシアのリベラルな新聞であるノーバヤ ガゼータの編集長です。

もう一人はフィリピン政府に批判的なウェブサイトであるラプラーを設立し、社長を務めた元CNNアンカーのマリア レッサです。

両ジャーナリストは困難な時期に注目に値する仕事をしました。

ムラトフ氏と彼の新聞は、ロシア政府の弾圧にもかかわらず、不正行為を調査して明らかにするために長い間苦労してきました。

2014年、ノーバヤ紙は、マレーシア航空のフライトであるMH17がウクライナでロシアの支援を受けた過激派によって撃墜されたという話を暴露しました。

ロシア政府が事件への関与を否定する中、同社はロシア政府に代わり、犠牲者に謝罪しました。

同社のジャーナリストのうち6人は、過去30年間に殺害されました。

3月、脅迫を試みて、新聞社に有害物質が噴霧されました。

数十人のロシア人ジャーナリストが国によって「外国人代理人」として指定されています。

私たちは、これまで経験したことのないような大きなプレッシャーを経験してきました」と、同紙の記者の1人であるパベル ケニーギンは言います。

 

2011年にFacebookページとしてスタートしたレッサさんのニュース組織であるラプラーは、ドゥテルテ大統領の政府を公然と批判し、麻薬戦争の一環として警察が行った超法規的殺人の調査を発表した数少ないニュース組織の1つです。

悪意のある税務調査や名誉毀損事件の標的になっています。

他の数人のジャーナリストとともに2018年にタイム誌の年間最優秀人物に選ばれたレッサさんは、フィリピンで懲役刑につながる可能性のあるいくつかの名誉毀損事件と戦ってきました。

 2016年、当時の大統領選出者であるドゥテルテ氏は、「あなたがジャーナリストであるという理由だけで、暗殺から免除されない」と語りました。

しかし、前述のナワルニー氏や、昨年のベラルーシ選挙に立候補したスビアトラナ・ツィカノスカヤ氏など、知名度の高い人物に賞を与えないという委員会の選択に多くの人が失望しています。

ロシアの歴史家エトキンド氏は、ムラトフ氏が賞に値すると信じていますが、ナワルニー氏を指名しなかった事に関して「ノーベル委員会が正しいことを行う勇気がなかったことを残念に思った」と述べました。

確かに、ロシア政府はそうしなかったことを喜んでいるようです。

プーチン大統領の報道官であるペスコフ氏は、ムラトフ氏の「才能」と「勇気」を祝福しました。

ナワルニー氏がまだ刑務所にいて健康状態が悪いので、ノーベル賞が同氏に与えられた場合、プーチン氏は屈辱的な思いをしたでしょう、

 

ジャーナリストのために発言する必要性は否定できません。

ニューヨークに本拠を置くNGOであるジャーナリスト保護委員会によると、2020年には、2019年の2倍以上の人が仕事をしたために殺害されました。

同じ組織によると、2020年の終わりに270人以上のジャーナリストが投獄されました。

これは、30年近く続いている年次国勢調査で記録された史上最高の数字でした。

強権的な国でジャーナリストになることの危険性を強調することは悪いことではありません。

しかし、ノーベル委員会はもう少し大胆になれたのではないかと考える人もいます。

言論の自由の重要性

日本の様な国に住んでいますと、政府に対して何を言っても許されるのが当たり前の様に思ってしまいますが、世界を見渡すと、ジャーナリズムの自由が確保されている国は寧ろ少数派です。

最近は中国の様な強権的な国が国際社会でのしてきた事もあるのでしょうか、多くの国で強権的な政府が幅を利かせる様になってきました。

反政府的な言動を行ったとして、ロシアでは多くのジャーナリストが命を奪われている様ですが、そこまでいかなくても多くの国でジャーナリストが逮捕され、言論の自由を奪われています。

今回、ノーベル平和賞がジャーナリストに授与されたことは、世界の強権主義の広まりに対する警告だと思います。

メディアは批判だけして無責任だとの意見はごもっともですが、権力を持つ政権に対して牽制するのがメディアの役割だとすれば、当然批判的であるべきです。

政権の腐敗や怠慢を鋭く糾弾するジャーナリズムの自由は守られるべきです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。