一筋縄ではいかないフランス
フランスはご存知の通り、ドイツと並んでEUの中核をなしています。
この国は古くはドゴール外交に代表される通り、米国の言う事をすんなり聞かない事で有名です。
ドゴール将軍はヒトラーがフランスを占領している間、ロンドンに亡命しており、米国の軍事支援のおかげでドイツをやっつける事が出来たわけですので、本来米国に足を向けて寝れない筈ですが、連合国側が勝利するや否や、米英とともに勝利国側に堂々と名前を連ねたのはさすがです。
この国にはウィーン会議を牛耳ったと言われるタレーラン氏の外交上手がDNAとして脈々と流れている様な気がします。
現在もフランスは、米国に対して対抗心を失っておらず、しばしば米国で起きている事象を批判します。
今回は米国の行き過ぎた格差を作り出している原因について仏紙Les Echosの「Etats-Unis : quand les hauts revenus ne font pas leur devoir fiscal」(高所得者が納税義務を果たさない国アメリカ)と題した記事をご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
ホワイトハウスは、財源を見つけて投資プロジェクトに資金を提供するために、非常に単純なアイデアを発表しました。
それは、「アメリカ国民に税金を支払わせる」ことです。中でも最も裕福な人々に納税させる事が重要です。
中産階級はその徴税義務をほぼ果たしていますが、所得階層を上るにつれて徴税率は崩壊すると、ホワイトハウスは嘆いています。
「高所得納税者は、IRS(米国税務当局)が納税申告書を確認するのが難しい。パートナーシップや個人事業主からの収入など、不透明な源泉からの収入を蓄積します」
「これらの不透明な収入源に課せられた税金の最大55%が未払いになり、所得のトップにいる人々は納税義務を果たしていません。」と米国財務省は述べています。
過少申告の理由の1つは、税制の仕組みです。
従業員の収入は、雇用主によって税務当局(IRS)に申告されますが、個人事業主などの収入は、自己申告に委ねられています。
税務当局も、そのリソースが年々減少していおり、IRSのコンピュータシステムは財務省によって「時代遅れ」と見なされています。
IRSの予算は、2010年よりもかなり減少し、労働力は21,000人減少しました。
元IRSの幹部は、春に「ワシントンポスト」が発表したコラムで批判しました。
「複雑な納税申告書をレビューする担当官が3分の1減少した。」
バイデン政権は、最も裕福な1%が収入の約20%を隠し、それによって年間1,600億ドル(18兆円)以上の税金を失っていると見積もっています。
彼らは、次の10年間で更に7,000億ドル(約80兆円)を回収できると見積もっています。
議会予算局(CBO)はまた、IRSへの800億ドルの投資が2,000億ドルをもたらすと計算しました。
今回のIRS体制強化に関する法案は「増税を構成するものではなく、超党派の支援から長い間恩恵を受けてきた」と、予算問題を専門とするシンクタンクであるCFRBは述べました。
しかし、それでも詳細については政党間で議論されています。
したがって、銀行からの情報フィードバックを改善することを意図したホワイトハウスは、プライバシー保護について反対に直面しています。
財務省は法案を通過させるためにその内容を改訂しました。
政権は現在、銀行がIRSと納税者に10,000ドルを超える口座に関する二つの情報だけを望んでいます。
その年に預け入れられた資金の合計額と引き出された額の二つであり、これは IRSの注意を喚起するものです。
格差の拡大が顕著な米国
世界の最富裕層2153人が持つ富が世界人口の6割前後を占める46億人の貧者が持つ富とほぼ同じと言われていますが、世界中で格差は広がっています。
なかでも米国はこの傾向が顕著で、上位1%の富裕層が国の富の39%をコントロールしていると言われています。
新型コロナ感染によって、この格差は更に広がりを示しています。
アメリカは貧者が富裕層に這い上がる事が可能な社会と言われますが、ここまで格差が広がると機会の均等というわけにはいかなくなってきます。
フランスの経済学者トマ・ピケティは、第二次世界大戦直後、欧州と同様に格差が一気に縮小した米国が、ここ30年の間に格差を拡大してきたと分析しています。
岸田政権が「成長と分配」という目標を打ち出しましたが、分配が本当に必要なのは我が国よりも米国の様な気がします。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。