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中央アジアで生じた近代化への動き

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中央アジアの中心ウズベキスタン

ウズベキスタンという国はみなさん馴染みがないと思いますが、中央アジアでは最大の人口(3,500万人)を誇る国です。

この国は古くはシルクロードの拠点として栄えてきました。

チムールがこの地に大帝国を作り、高度な文化を興した事でも知られています。

この国は1991年旧ソ連が崩壊した際に、独立国として誕生しましが、その後もカリモフ前大統領の下、急ソ連とほぼ同じ政治経済体制を維持してきました。

私も過去にこの国を何度となく訪れ、その国情を肌で感じてきましたが、現在新たな変化が生じている様です。

英誌Economistが「Uzbekistan’s president abolished slave labour. What next?」(ウズベキスタンの大統領は奴隷労働を廃止した。次の一手は何か)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ウズベキスタンの首都タシケントでは、10月24日の大統領選挙に出馬している五人の候補者に平等な発言の機会を与えます。

しかし、実際には一人の男しかいません。

それは、地滑り的勝利を約束されている大統領、シャヴカト・ミルジヨエフです。

彼は5年前に獲得した投票率89%を更新する可能性があります。

 

ミルジヨエフ氏は、カリモフ前大統領の死後、2016年に就任しました。

カリモフの過酷な27年間の統治において、ミルジヨエフ氏は首相として、ウズベキスタンの子供を含む国民に綿花収穫の際の強制労働、デモ隊への抑圧、囚人への拷問を強いてきました。

ミルジヨエフ氏の大統領への昇格は、同じことが継続される事を予想させました。

しかし、過去5年間で、彼は変化を受け入れて、3,500万余りのウズベク人と世界の両方を驚かせてきました。

強制労働を劇的に減少させ、国内で最も悪名高い捕虜収容所は閉鎖され、広大な綿花部門でのソビエト時代の計画は終了し、市民が住み、旅行できる場所を義務付ける厳格な規則が廃止されました。

 

国際機関は経済改革のみならず政治改革を行う様にと助言してきました。

起業家は、通貨換算制限の解除と合理化された通関手続きがビジネスの環境を変えたと言います。

2つの小さな会社を経営しているDildora Atadjanovaは、日常生活がはるかに楽になったと言います。

カリモフの時代、彼女は地元の党官僚に無料で食事を提供するなどの「ばかげた要求」に応じる必要があるため、カフェの経営を断念しました。

最近の当局者は、代わりに事業主のニーズを満たすことに熱心です。

「イデオロギーの変化は途方もないものでした」と、スーパーマーケットチェーンのKorzinkaのボスであるZafarKhashimovは言います。

パンデミックによりほとんど国の経済が縮小した昨年、政府はなんとか成長を維持することができました。

 

それでも、構造改革という難しい仕事が待ち構えています。

経済成長は未だに十分ではなく、国は資産の55%と銀行セクターの85%を支配しています。

国有企業の数を4分の3削減することを目的とした民営化の動きが始まりましたが、投資家を誘致するために更なる改革が必要です。

腐敗とえこひいきは相変わらずです。

 

政治改革について、大統領は反対意見を受け入れると宣言しました。

しかし実際には、彼の政府は現状に批判的な政党を登録することに抵抗があります。

法律は無所属の候補者の立候補を禁じており、ミルジヨエフ氏は、存在を許される親政府政党を代表する4人の候補者からの脅威をほとんど感じていません。 

 

変化のペースが遅い理由の1つは、真の市民社会の出現に抵抗し続ける諜報機関であると、過去に収監された元政治拘留者のアグザムトゥルグノフは言います。

彼は大統領の統治下で釈放された50人の政治犯の1人です。

しかし、米国政府の委員会によると、2,200人の受刑者(刑務所人口の10%)は、依然として宗教的および政治的動機による罪で投獄されています。

ミルジヨエフ氏が権力を握った後の初期の動きの1つは、長年のボスを解雇し公安部門をコントロールする事でした。

しかし、警察国家の遺産は引き続き機能しており、人権運動家に対する反逆罪とスパイ容疑に関するいくつかの秘密裁判の背後に存在します。

 

大胆なウズベキスタンのメディアは、最近では汚職など、以前はタブーだったトピックを取り上げています。

しかし、一方で、一部のWebサイトやソーシャルメディアネットワークはブロックされています。

 

ウズベキスタンでは、既得権益が後退するにつれて政府が改革の勢いを失っているという見方もあります。

しかし、ミルジヨエフ氏の支持者はそれでも強気です。

上院の副議長であるサフォエフ氏は、Uターンは問題外だと主張しています。 「退却は自殺行為です。」

遠い改革への道

旧ソ連が作り出した統治システムは、KGBに代表される厳しい国民への監視と反政府運動に対する取り締まりが基本でした。

このシステムは旧ソ連が崩壊した後も、中央アジア諸国に色濃く残り、改革への歩みは、極めて緩慢でした。

現在のウズベキスタン政府は、この改革への動きを加速化させようとしており、一定の評価を与えられるべきと思います。

しかし、中央アジアの各国は北からはロシア、東からは中国、西からはイランといった大国からの圧力を受けており、一方で南のアフガニスタンからはイスラム原理主義者の侵入という悩ましい問題を抱えています。

経済と政治の自由化を実現しつつ、国の安定を維持する事は容易なことではありません。

今後のウズベキスタン政府の舵取りが注目されます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。