MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

フランス大統領選における原子力論争

f:id:MIYOSHIN:20211026102458j:plain

主要な争点:原子力

フランスは来年4月の大統領選挙に向けて論戦が始まっています。

移民政策などと並んで、原子力が重要な争点になっている様です。

この問題について仏紙Les Echosが主な候補者の主張を「Le nucléaire, sujet surprise et clivant de la campagne présidentielle - Avec l'augmentation des prix de l'énergie et l'urgence climatique, l'avenir du parc nucléaire français est devenu un thème central de la campagne électorale. A six mois du scrutin, les principaux candidats ont des positions très disparates」(​​原子力:大統領選挙で意見が分かれる主題 - エネルギー価格と気候温暖化の緊急事態により、フランスの原子力発電所の将来は選挙運動の中心的なテーマになった。 投票の6か月前、異なる主張を行う候補者たち)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

2017年の選挙ではあまり話題になりませんでしたが、今回は原子力が政治的議論の中心的なトピックです。

エネルギー価格の上昇と脱炭素化目標の達成の緊急性を前に、すべての候補者は大統領選挙を前に、このトピックについて異なった提案を示しています。

それはまた、原子力の熱心な擁護者であるエマニュエル・マクロンが目立つ機会でもあります。

彼はSMR小型原子炉の開発のための投資計画を発表した後、、今後数週間で6基の追加EPR(欧州加圧水型原子炉)の建設を発表するでしょう。

 

エネルギー自給

保守派は、3年前にフェッセンハイム工場を閉鎖することを決定した判断を非難しています。

したがって、共和党の大統領候補ザヴィエ ベルトランは、フランスの電源構成のうち、原子力が50%以下に下がらない事を公約しています。

保守派の競合候補も同様に、新しい原発の建設と既存の原子炉の寿命の延長を提唱しています。

共和党は、原子力エネルギーによってフランスが特定の権利を維持し、ロシアのガスに依存しないようになると信じています。

彼らの目には、再生可能技術、主に風力は、国が原子力発電を放棄するはまだ非効率であると見えています。

 

右翼も原子力が欠かせないものと見られています。 「フランスの原子力産業は絶対的な国家の優先事項です」と、原子炉がフランスのエネルギー自立を保証しているとマリーヌ・ル・ペンは考えています。

極右の有力候補者であるエリック・ゼムールも同じです。彼は、原子エネルギーを放棄するとフランスが大幅に弱体化すると主張しています。

 

分割された左派

左派は、マクロンのエネルギー戦略を批判することを躊躇しませんが、2つの例外があります。

歴史的に原発を支持してきた共産党の候補者であるファビアン・ルーセルと、元社会党大臣のアルノー・モンテブールです。

「原子力の狂信者にならない」事が保証されるならば、原子力はフランスがその脱炭素目標を達成するために不可欠なセクターになると彼は主張しています。

一方、ジャン=リュック・メレンションは、今のところ世論調査で最も有望な左派候補ですが、原子力発電からの撤退を彼のキャンペーンの主軸にしています。

彼は、福島およびチェルノブイリがフランスにもたらす結果について警告しています。

彼は、再生可能エネルギーに重点を置くことにより、国は5年で完全に原子力発電から抜け出すことができるとと考えています。

環境保護派の候補者であるヤニック・ジャドーは、20年以内に原子力発電からの撤退を目指しています。

最後に、社会党候補のアンヌ・イダルゴは、「再生可能エネルギーを増加させてい早く原子力発電から抜け出す」必要があると信じています。

一方、左翼の競合候補が提案した期限は「不可能」であると考えています。

彼女によると、そのような長くて複雑なプロセスの正確な日付を設定することは意味がありません。

フランスと日本の違い

フランスと我が国の原子力発電をめぐる環境にはふたつ大きな違いがある様に思います。

先ず、地震や津波の危険性がフランスにはありません。

原発の危険性を論議するとき、これは非常に重要なポイントです。

二つ目は、フランスは欧州他国と地続きであり、余った電力は他国に容易に売る事が可能な点です。

ドイツが原子力や石炭発電をやめて、再生可能エネルギーに専念できるのは、フランスの原発が必要な時に電力を融通してくれるからです。

フランスの原発はフランスだけでなく、欧州のベース電源となっているのです。

この事実はフランスに欧州他国に対して一定の発言力を与えます。

フランスの政治家が原発を手放さない理由はここにもあります。

上記の様な差異はありますが、我が国にとっても原発をどうするかは非常に重要な問題です。

再生可能エネルギーの拡大は当然必要ですが、原発は地球温暖化の目標を達成する上で極めて重要な上に、一定のコストで安定した電力を供給する事ができます。

今回の衆院選で、電源に関する現実的な議論が展開する事を期待したいですが、政治家は原子力の様なやっかいな問題に関してはあまり触れたがらないでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。