会議は踊る
現在グラスゴーで気候温暖化対策に関する世界会議COP26が行われています。
私も10年ほど前にCOPに出たことがありますが、当時も会議期間中ホテルの宿泊費が高騰し、問題となっていました。
今回は更にひどい状態の様です。
それだけ国際的な関心を集めているのは、この会議が、将来の各国のエネルギー政策を方向づけ、ひいてはエネルギーコストに跳ね返るからです。
主要議題の一つとして洋上風力が挙げられている様ですが、この課題に関して英誌Economistが「What would a world powered entirely by offshore wind look like? - A net-zero world will require thousands more wind farms」完全に洋上風力発電で賄われる世界は?カーボンニュートラルの世界では、さらに数千の風力発電所が必要)と題する記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
異常天候で不振が続く風力発電に一部起因する欧州での数ヶ月のエネルギー不足の後、再生可能エネルギー源から如何に電力を安定供給するかは、重要課題となっています。
世界の指導者が「石炭からクリーンパワーへ」移行する方法について議論する国際会議COP26では特に重要です。
10月13日、米国の内務長官であるデブ ハーランドは、洋上風力発電所の開発のためにアメリカの海岸線の広大な部分を開放する計画を発表しました。
これらの新しい洋上風力発電所は、30基の原子力発電所と同じくらいのエネルギーを生み出す可能性があります。
風力はクリーンで再生可能な電力源です。
騒音を生み出す風車を沖合に置くことは、人々が被る障害を軽減します。
そして海岸から十分遠いので、海の景色を損ないません。
しかし、世界が必要とする電力を生み出すためにどれだけの海岸線が必要になるでしょうか?
1年間、世界に電力を供給するために必要なエネルギーの総量は、約556ジュール、つまり、556の後にゼロが18続きます。
1平方キロメートルの風力タービンは、毎年およそ80テラジュール(つまり、80の後に12個のゼロが続く)を生成します。
つまり、全世界に電力を供給するためには、約7百万平方キロメートル(日本の面積が約38万平方キロですので、その18倍以上)の洋上風力発電所が必要になるということです。
このエリアを世界の風況(風速の環境)を考慮して世界地図に投影すると、最適な場所は下記の地図の様になります。
場所は世界中に散らばっています。
バイデン政権が提案した場所の1つであるアメリカ西海岸もその一つです。
他の適地は、世界で最も生産性の高い風力発電所の多くがすでに設置されている北海に集中しています。
風が世界のエネルギーの唯一の出力源になることはありえません。
風力は特定の場所でのみ効果的であり、出力は断続的で、予測不可能であり、制御することは不可能です。
洋上風力発電は、再生可能エネルギーの最も高価な形態の1つでもあります。
野生生物保護の活動家は、回転する羽根が鳥にとって致命的であり、巨大な水中設備が海洋生物を阻害する可能性があると批判しています。(ただし、風車の海底部分は、生物多様性を促進する人工魚礁を生成することもできます)
より現実的な予測は、大気中に放出される温室効果ガスの量と除去される量が均衡するカーボンニュートラルの世界で、世界のエネルギーの7.5%が洋上風力発電所から来るということです。
これを実現するには、洋上風力発電設備の平方キロメートル数を現在稼働中の約7,000から525,000に増やす必要があります。
これは相当難易度が高いハードルです。
欧州の狙い
この記事から読み取れることは二つあると思います。
一つは洋上風力が想像以上に大きな海域を必要とする事です。
二つ目は上の世界地図が表す通り、日本近海には洋上風力に適した場所がないと言う事です。
その一方、欧州に近い北海には風況の良い場所がたくさんあります。
欧州が再生可能エネルギーに舵を切った主因がここにあります。
彼らは洋上風力から生まれるコストの安い電力を使う一方、日本など風況の悪い国には高い電力コストを押しつけ、競争力を高めようと考えている訳です。
日本の周りに唯一風況の良い場所があります。
上の地図ではわかりにくいのですが、台湾海峡周辺です。
昔、一斉を風靡した陳清波という台湾出身のプロゴルファーがいたのを思い出しました。
彼は風に負けない強い球を打つ事で有名でしたが、台湾海峡を吹く強風に鍛えられていたんですね。
いっそのこと尖閣諸島周辺や台湾周辺で日本企業が台湾企業と共に洋上風力を開発するというのも面白いアイデアかも知れません。(中国が黙ってはいないと思いますが・・)
最後まで読んで頂き、有り難うございました。