英国メディアにご用心
英国という国は、国のサイズの割に国際的な影響力が大きい事で知られます。
それは米国に最も近い同盟国である事とか国際的な名声を得ているメディアの影響力等が背景としてあるものと推測されます。
私もBBCやEconomist、Financial Timesといったソースから得られる情報を重要視していますが、彼らの報道が常に真実を伝えているかと言えば疑問があります。
これらメディアは政府から独立性を確保していると言われますが、彼らの報道にはある程度英国政府の意向が反映されている様に思います。
一部の記事には読者の反感や嫌悪を引き起こそうと言った狙いさえ感じられます。
今日取り上げるトルコに大量に避難したシリア難民に関するEconomist誌の記事も同様で、一種のプロバガンダに近い感があります。
「Turkey’s government sees no humour in soft fruit - Refugees who ate bananas in a provocative fashion are to be deported」(トルコ政府はバナナに関するジョークを受け入れません - 挑発的な方法でバナナを食べた難民は国外追放される)と題した記事かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
トルコは以前にシリア難民を国外追放したことがあります。
一部は、当局への登録に失敗したか、軽微な犯罪のために、戦争で焦土と化した母国に送り返されました。
だまされて、自発的な帰国フォームに署名するように強制されたと言う人もいます。
しかし、バナナを食べた為に本国送還になるとは誰も思っていませんでした。
10月、政府は、ソーシャルメディアで「挑発的な」ビデオを発信したことで、7人のシリア人を国外追放すると発表しました。
これは、シリア人が家賃を引き上げたと非難し、彼らがバナナを買う余裕があると不平を言ったトルコ人男性へのインタビューに応えたものです。
バナナを食べる人は難民に対する偏見を嘲笑しているようでした。
しかし、当局は彼らを貧しい人々をあざけていると非難しました。
そして、それは非難だけでは終わりませんでした。
トルコの警察は、シリアのジャーナリストが、食料雑貨店からバナナを購入し、セーターの下に隠している様子を撮影し投稿した事で逮捕しました。 (彼は11月8日に釈放された。)
過去10年間で、約370万人のシリア人がトルコを故郷にしています。
かつて寛大だったトルコの国民は、不機嫌になりました。
リラが急落し、インフレが20%近くに上昇するにつれて、難民は欲求不満の標的になりつつあります。
世論調査の政府支持率が減少しているため、エルドアン大統領の政府は、シリア人がバナナを食べるという些細な事にも目くじらを立てざるを得ない様に思われます。
370万シリア難民の負担
上記ニュースには多少の背景説明が必要と思います。
トルコは隣国シリアから370万人、他にもイラクやアフガニスタンなどから難民が押し寄せ、既に500万人の難民を受け入れています。
これは圧倒的に世界最大の難民受け入れ人数です。
難民には住居、教育、医療等を無償で提供しています。
これらのサービスはトルコ国民の税負担において提供されていますので、多くのトルコ人は難民に対して内心不満をもっています。
しかし、困っている人々には手を差し伸べる寛容な国民ですので、難民に対するヘイトクライムなどは起こっていません。
最近のトルコ通貨リラの下落や高インフレの影響で、輸入品は皆高騰しています。
バナナは基本的に輸入品ですので、トルコの貧しい人々にとっては手の届かない高嶺の花になっている訳です。
それを援助を受けているシリア難民が食べている事に、トルコ庶民が不満を表明する事は当然と言えば当然です。
国外追放となったシリア人はそれをこれみよがしにSNSに投稿した訳ですから、トルコ政府が対抗処置をとった事はある程度理解できます。
もちろん輸入品高騰を招いた経済政策の失敗に関してトルコ政府は説明責任を果たす必要があるでしょうが、あたかもトルコ国民がシリア難民を虐待している様なEconomistの記事は客観性を欠いていると思います。
英国もこの様な記事を書くのであれば、自分たちがトルコと同じ様に難民を受け入れる度量を見せてから書いて欲しいと思いますが、彼らは絶対にトルコの様な寛容さを難民には示さないでしょう。
中東と英国は距離があるので、彼らはいつも難民問題については高みの見物を決め込んでいます。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。