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フランスでドナルド トランプと呼ばれる男

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ポピュリストの台頭

フランスでは来年4月に大統領選が行われます。

おおよその予測は決選投票で現職のマクロン大統領と保守強硬派ル ベン氏の一騎討ちというものでしたが、ここにきて様相が変わってきている様です。

エリック ゼムールというジャーナリスト上がりの右翼政治家が支持を急拡大しており、ルペン氏の代わりに決選投票に進出する勢いです。

この政治家について英誌EconomistがWho is Eric Zemmour, France’s wannabe Donald Trump? - The populist, anti-immigrant provocateur is outflanking Marine Le Pen」(フランスのドナルド・トランプたるエリック・ゼムールとは? - ポピュリストで反移民の挑発者がマリーヌ・ル・ペンに肉薄)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

この夏まで、エリック ゼムールは、右翼のメディアで反動的な週刊コラムを執筆し、テレビ番組で移民とポリティカルコレクトネス(特定のグループに不快感や不利益を与えないよう中立的な言葉を使う)に反対した挑発者でした。

誰も彼をまともな政治家として真剣に受け止めませんでした。

しかし、最近の世論調査で、63歳のゼムール氏の支持は急増しました。

来年4月の2回投票のフランス大統領選挙の最有力候補は、依然としてマクロン大統領です。

しかし、ゼムール氏は現在、決勝ラウンドに進む候補者として、保守強硬派のマリーヌ・ル・ペンを追い詰めています(グラフを参照)。

これにより、かつてのテレビ評論家は、一気に政治的注目を集める存在となりました。

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出典:Economist

党に所属しないゼムール氏は2つのテーマで勝負しています。

一つのテーマは、フェミニズム、消費社会、自由主義、「ジェンダーの優柔不断」、その他の輸入された「アメリカの病」に直面した権威、アイデンティティ、活力、伝統的な家族の崩壊に対する嘆きです。

もう1つは、ゼムール氏がフランス社会の「イスラム化」と呼んでいるものであり、「2000年前からキリスト教の土地」の移民による逆の征服です。

2018年に彼は人種差別への扇動で有罪判決を受けました。

 

パリ地方で生まれたゼムール氏は、彼自身がユダヤ人とアルジェリア人の血をひいています。

それでも、彼は、堅固なナショナリストを惹きつけるべく、最初に外国人ユダヤ人を国外追放し、フランスのユダヤ人を「保護」したという奇妙な理屈でヴィシーフランス(ヒトラー占領下のフランス政府)を擁護しています。

そのような歴史のゆがみを利用するに長けたゼムール氏は、ノスタルジア、衰退、喪失の物語で彼の主張を包み込みます。

彼は、ジャンヌダルク、ルイ14世、ナポレオン、ドゴールに言及します。

「私たちの歴史の中で、このような危険にさらされたことはありません。絶滅の危機に瀕しています。」と彼は最近の集会に語りました

 

ゼムール氏は、彼女がソフトに過ぎるとして、ルペン氏の支持層を部分的に取り組んでいます。

ゼムール氏は、イスラム教はフランスと「相容れない」ものであり、フランスのイスラム教徒には「フランス風」の名を与えるべきであると主張しています。

彼の魅力を極右を超えて広げるために、彼はまた別の有権者層をターゲットにしています。

ルペン氏は、以前は社会主義者と共産主義者の左翼に投票した、フランス北東部のブルーカラー労働者の間でキャンペーンを行っています。

ゼムール氏は、移民を恐れ、同性愛者の結婚に反対し、伝統的な家族の価値観を信じる、非常に保守的なカトリック系の共和党の主張を擁護します。

彼の支持の4分の1は、2017年の大統領選挙で、中道右派の有力候補であった共和党のフィヨン(元首相)に投票した人々からのものです。

 

ゼムール氏が大統領に勝つことができるとする世論調査はまだありません。

しかしゼムール氏は、2017年にマクロン氏がフランスの伝統的な政党を迂回して大統領になったかを注意深く見守っていました。

マクロン氏は、大統領選挙運動を支援し、国会で過半数を獲得するために、彼自身の党、「En Marche」を設立しました。

ゼムール氏はまた、ドナルド・トランプからビクトル・オルバン(ハンガリー首相)まで、勝利したポピュリストとナショナリストから熱心に学習しています。

テレビのパーソナリティは、恐怖をかき立て、複雑なものをシンプルに聞こえるようにし、博学とポピュリストスタイルを組み合わせる方法を知っています。

ゼムール氏はすでにフランスの選挙運動に大きな影響を与えています。

ポピュリストの台頭は民主主義の終焉か

フランスに行かれた方は感じられたと思いますが、想像以上に移民が多い国です。

ロンドンからの電車が到着するパリ北駅を降りれば、そこで見られるフランス人の半数以上は有色人種です。

その多くは旧植民地のアフリカから来た人々ですが、彼らは大都市や工業地帯のスラム街で劣悪な生活環境にさいなまれていますが、一方でフランス経済を安い労働力として底辺で支えています。

1980年代にフランスに私が留学していた頃は今ほど移民が多くありませんでしたが、当時もフランス人は移民に対して嫌悪感を持っていましたので、現在、カトリック系の白人フランス人が持つ不満は相当高まっているものと推測します。

この不満をゼムール氏は巧みに煽っているものと思います。

トランプ氏がラストベルト(米中西部、北東部の工業地帯)の白人労働者を票田にしたのを思い出させます。

この嫌悪や怒りを票に変える手法は効果的ですが、社会の分断を招く事は明らかです。

世界で初めて民主主義革命が生じた国でのポピュリストの台頭を、強権主義国家はほくそ笑んで見ているでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。