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原子力発電がCOP26で見直された理由

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フランス小型原発を提唱

英国グラスゴーで行われていた世界環境会議COP26が閉幕しました。

石炭火力の扱いに関して、最後まで紛糾し、結局「削減を加速化させる」という文言で関係国が同意したと伝えられています。

この会議は完全な成功とは言えないまでも、地球温暖化阻止に向け一歩前進したと評価されている様です。

会議の中で意外だったのはフランスが新しい小型原発の開発を唱えた事です。

我が国では脱炭素と同時に脱原発を唱える政治家が一部にいますが、フランスでは新しい原発の建設も今後行われる様です。

その背景には何があるのでしょうか。

英誌Economistが「The discreet charm of nuclear power - It makes fighting climate change a lot easier」(気候変動との戦いがはるかに容易にする原発の魅力)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

1992年のリオ地球サミットに至るまでの交渉において、サウジアラビアは「エネルギー源」と「エネルギー供給」の前に「環境的に安全」という文言を挿入しようと多くの時間を費やしました。

サウジアラビアが他のどの国よりも大量に輸出している石油は、現在、環境的に安全ではないと理解されていることを考えると、これは奇妙に思えます。

しかし、当時、その目的は関係者全員にとって明白でした。

この文言は、原子力発電を地球サミットの議題から遠ざける事を狙ったものでした。

 

1970年代のオイルショックにより、多くの国が原発への取り組みを強化しました。

1992年までの10年間で、世界中で消費される原子力エネルギーの量は130%増加しました。

さらに、原子力発電所を使用して電気だけでなく水素も生成し、それが合成燃料の基礎を形成する可能性がある点も注目されました。

サウジが環境について本当の懸念を持っていたかどうか定かではありませんが、彼らが競争相手が何かを知っていた事は確かです。

 

サウジが原発を恐れる必要がなかった事は、その後証明されました。

オイルショックとは対照的に、地球温暖化の脅威は原子力発電を増加させるに至っていません。

2006年にピークに達した後、2019年に消費された原子力エネルギーの量は1992年に比べてわずか18%しか増加しませんでした。

世界の一次エネルギーのシェアとして、それは6.1%から4.3%に減少しました。

原子力発電は高価ですので、気候へのダメージに関して化石燃料の燃焼にペナルティを付けられない状況下、これは驚くべきことではありません。

過去10年間の再生可能エネルギーのコストの急激な低下は、世界の脱炭素化の中心です。

しかし、クリーンエネルギーシステムには、再生可能エネルギーだけでは達成が難しい電力網の信頼性が必要です。

また、航空機に電力を供給したり、鉄鋼や化学薬品を製造したりするためにも、大量の水素が必要になり、これは原子炉が提供できる可能性があります。

 

原子力には、すべてのエネルギー源と同様に欠点があります。

しかし、十分に規制されている場合、それは信頼性が高く、その評判にもかかわらず、非常に安全です。

だからこそ、カリフォルニアのディアブロキャニオンのような優れた原子力発電所を閉鎖するのは、愚かです。

そのため、一部の国、特に中国は原発を増強しています。

これは、サウジアラビアを含む他の国が原子力発電に参入する理由を説明します。

そしてコスト競争力のある新世代の原子炉が産まれようとしています。

 

フランスは、大型原子炉を工期通りに予算内で建設することが不可能であり、その結果、輸出も困難であると考えており、よりコストの安い小型モジュール式原子炉(smrs)を開発中です。

英国のエンジニアリング会社であるロールスロイスも同様の原子炉を売り込んでいます。

11月4日、アメリカの会社NuScaleは、グラスゴーのCOP26で、同様の6基の原子炉をルーマニアに売却する契約に署名しました。

ロシアにはすでにフローティングSMR発電所があります。

多くの設計は、原則として工場で原子炉を製造し、必要な場所に出荷できるため、コストを抑えることができます。

現在、競合するメーカー同氏が学ぶことを可能にする規制アプローチを必要とされています。

これにより、競合する設計が互いに証明し合い、原子力発電が再びイノベーションの源となり、安全でなく健全でもない化石エネルギーを捨てる事が可能になります。

脱炭素社会を如何に実現するか

冷静に考えれば脱炭素と脱原発は両立が難しい議論です。

再生可能エネルギーの弱点を二酸化炭素を放出せずに補おうとすれば、原発が最も有力な選択肢です。

我が国は残念ながら欧州ほど風力発電に適していません。

原発なしに再生可能エネルギーを増やしていこうとすれば、化石燃料をかなり使わないと電源の安定性が保たれません。

もちろん核廃棄物処理の問題や地震対策など解決が必要な課題はありますが、原発を選択肢から現段階で外すのは時期尚早と思います。

小型原子炉など新しい技術が、原発の安全性に関する不安を払拭してくれるかもしれません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。