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ドイツ新政権アメリカの核配備に反対か

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連立政権近々誕生

ドイツの連立政権樹立に向けての交渉は、早ければ12月初めに社会民主党、自由民主党、緑の党が合意に達すると見られています。

ドイツはNATOのメンバーであり、アメリカの核弾頭が国内に配備されていますが、ドイツの新政権はひょっとするとドイツ国内への核配備に反対するかもしれないと同盟国を不安にさせている様です。

この問題に関して、英誌Economistが「Allies fear Germany’s incoming government will go soft on nukes - What will happen to the nuclear bombs deployed there?」(同盟国は、ドイツの次期政府が核体制を弱体化させることを恐れている - ドイツに配備された核爆弾はどうなるのか?)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

 9月の選挙で過半数を獲得した後、社会民主党(SPD)、自由民主党、緑の党は、12月初旬に「信号連立」(党の色にちなんで名付けられた)と呼ばれる連立政権に関する交渉をまとめることを目指しています。

話し合いはおおむね問題なく進んでいる様ですが、ドイツの同盟国らは、1つの問題に注目しています。

 

「P3」(アメリカ、イギリス、フランス、国連安全保障理事会の常任理事国入りをしている3つの核武装NATO同盟国)には、2つの懸念があります。

第一に、ドイツは、NATOの「Nuclear Sharing」協定への関与を弱める可能性があります。

この協定では、アメリカはドイツのビューヒェル空軍基地に最大20発の原子爆弾を配備し、ドイツはそれを運ぶ航空部隊を維持しています。

第二に、次期独政府は、国際的な条約である核兵器禁止条約(TPNW)加盟に関心を持つかもしれないという事です。

 

Nuclear Sharing協定は同様にイタリア、ベルギー、オランダ、トルコなど、自国の核兵器を持たない国々に、NATOの核計画における重要な役割を与えています。

しかし、ドイツ人は国内にアメリカの核兵器が存在することに長い間不安を感じてきました。

1980年代初頭、パーシングIIミサイルの配備に反対して100万人以上がデモに参加しました。

歴代の政府は、同盟国からの圧力に対抗して、核兵器の撤去を求めてきました。

 

核兵器禁止条約は新たな懸念材料です。

非核国と圧力団体によって推進され、1月から施行されているこの条約は、批准国(これまでのところ56か国)に核兵器の開発、生産、所有権を放棄することを義務付けています。(現在のところ、NATO加盟国はこの条約に参加していません)

 

米英仏は、ドイツ政府と次期連立政権に働きかけました。

先月のバイデン、マクロン両大統領の同盟国に対する「核と軍備管理の問題に関する緊密な協議を継続する」という共同の呼びかけは、ドイツを標的にしている様に見えました。

次期首相と目されるオラフ・ショルツも圧力をかけられましたが、ほとんど影響を受けている様には思えません。

「私たちは彼が何を考えているのか分かりません」とある同盟国外交官は言います。

彼の党の左派は、核の共有に強く反対しています。

 

信号連立政権が一方的にNuclear Sharing協定を離脱したり、核兵器禁止条約に完全に参加すると予測する人はほとんどいません。

おそらくはNuclear Sharing協定にとどまる可能性が高いです。

核兵器禁止条約は同盟国のより大きな懸念です。

同盟国の懇願にもかかわらず、ショルツ氏の政府は、署名者としてではありませんが、3月にウィーンで開催される条約の最初の会議に出席すると発表する予定です。 (ノルウェー、一部のNATO加盟国も同様な形で参加する予定です。)

この行為は、NATOの結束を損なうことになります。

それでも、それはアメリカの核保護と核兵器に対する不安の間で揺れる国から期待できる最高の選択肢かもしれません。

ロシアの脅威は本当にあるのか

アメリカの核はドイツ以外にもイタリア、ベルギー、オランダ、トルコに配備されているんですね。

これは知りませんでした。

トランプ時代からドイツはアメリカの核にただ乗りしていると批判されてきました。

バイデン 政権になってからこの批判は和らぎましたが、ドイツの軍事費は経済大国の割に少ないとの批判は根強いものがあります。

しかしドイツ人の視線で言えば、アメリカの核は誰からドイツを守ってくれているのかという疑問があるのだと思います。

それはロシアだと言われるかもしれませんが、冷戦時代ならまだしも、現在のロシアにとってドイツは最大の貿易相手国ですし、ロシアがドイツを攻撃する理由は見当たりません。

クリミア併合などロシアは領地を拡大しているとの批判もありますが、クリミアは元々ロシアのものでしたので単に取り返しただけです。

ドイツ人の目からすれば、米英仏が主張するほどロシアの軍事的脅威を感じていないと言うのが現実だと思います。

ありていに言えば、核爆弾の様な物騒なものはロシアの脅威を直に感じている東欧のどこかに持っていってくれというのが本音でしょう。

従ってこれからもドイツは米国からの軍事費拡大に関する要求に抵抗し続けると思います。

彼らは軽武装、経済重視のこれまでのやり方で問題ないと判断しているはずです。

英米仏の武器売りつけをそう簡単には呑まないでしょう。

翻って、我が国もドイツのやり方を踏襲できるかと言えば、これはそう簡単ではなさそうです。

筆者は中国が我が国に対して事を構える可能性は極めて小さいと思いますが、東アジアには北朝鮮があります。

何をするかわからないこの国の存在はドイツと日本の間にある大きな違いだと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。