MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

「帝国の墓場」アフガニスタンで中国が直面する難問

f:id:MIYOSHIN:20211123125049j:plain

米国が抜けた空白を誰が埋めるのか

20年もの間続いた米国のアフガニスタン駐留は漸く終わりを告げました。

米軍撤退後生じる空白は誰が埋めるのでしょうか。

中国は細い回廊を通じてアフガニスタンと国境を接しており、しかもアフガニスタンが電池の材料であるリチウムなど地下資源を豊富に有していることから、早速アプローチを開始している様です。

しかし、アフガニスタンは「帝国の墓場」と称されるほど、過去に英露米など大国がてこずった土地です。

そう簡単であるはずがありません。

米誌Foreign Policyが「How China Became Jihadis’ New Target - International terrorist organizations long considered Beijing a secondary focus. That’s changed.」(イスラム過激派の新しい標的となった中国 - 国際テロ組織から二次的な標的と見られていた中国に変化が)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

10月初旬、テロ組織イスラム国がアフガニスタンのクンドゥズのモスクで50人近くを自爆テロによって殺害しましたが、イスラム国はこのテロを中国に関連づけることを決定しました。

グループは自爆テロリストはウイグル人であり、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する中国の弾圧にもかかわらず、中国の緊密な協力に感謝したタリバンを罰することを目的としたと発表しました。

 

中国は長い間、国際テロ組織によって二次的な標的と見なされていました。

アルカイダやイスラム国のようなグループは、米国、より一般的には西側を標的にすることに集中していたため、中国に対して武器を向けることはありませんでした。

しかし、クンドゥズで、この物語は終わりを告げました。

中国は今や自分たちが明確な標的となった事を自覚せざるを得ません。

 

イスラム過激派と中国の歴史は複雑です。

長い間、「発展途上国の大国」としての地位を占めていた中国は、元植民地大国の影に隠れることができました。

中国はアルカイダの敵である米国と対立していたので、「敵の敵は味方である」という理屈があてはまりました。

現在、特にアフガニスタンでの関与が拡大するにつれて、中国が標的にされていることは否定できません。

中国は長い間アフガニスタンへの正式な関与を回避してきました。

しかし、現在タリバンとの協力関係においては地域の主要国の中で最も進んでいます。

タリバン政府は、中国政府と協力したいという願望を公に表明しました。

タリバンの指導者たちは、中国の投資と経済的パートナーシップを引き付けることに特に熱心です。

10月下旬、中国の王毅外相はカタールのドーハでタリバンの指導者と会談しました。

王外相は支援と引き換えに、ウイグル系過激派とのつながりを断ち切るようタリバンに要求しました。

 

イスラム国は、タリバンが中国に頭を下げていることを利用できる弱点として明確にとらえ、クンドゥズの自爆テロリストがタリバンが中国政府の要求を受けて国外追放の対象となったウイグル人であると公表しました。

メッセージは多くの層に向けられています。

第一に、それはタリバンへのシグナルであり、彼らが国のマイノリティを保護することができないことを強調しています。

第二に、それは中国へのメッセージであり、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する弾圧を非難しています。

第三に、それはタリバンに見捨てられたり脅かされたりしていると感じているウイグル人へのメッセージです。

最後に、それは世界へのメッセージであり、イスラム国が戦場でイスラムの伝統を維持し、抑圧されたイスラム教徒のために戦っている有能な組織であることを示しています。

これらのメッセージは、世界中の潜在的な支持者の共感を呼ぶでしょう。

 

中国は、これが危険な展開であることを認識している可能性があります。

パキスタンでは、ますます多くの過激派グループが中国を標的としており、ダスとカラチでの攻撃は地元のバルチとシンドの分離主義者から来ています。

キルギスタンのビシュケクにある中国大使館は、2018年にカラチにある領事館と同様に、2016年に襲撃され、4人(および3人の攻撃者)が死亡しました。

しかしこれまで、攻撃のほとんどは地元の分離主義運動によって行われていました。

イスラム国が加わったことで、ついに中国はジハードの標的としてしっかりと組み込まれました。

 

中国にとっての問題は、そのような脅威に対処する準備が整っていないことです。

その軍隊は大規模で装備が整っているかもしれませんが、過激派組織に対抗する経験はほとんどなく、その対応を友好国に依存してきました。

しかし、中国に最も近い友好国であるパキスタンで反中の動きがますます高まっているため、困難に直面しています。

ある意味で、中国は立ち往生しています。

中国はアフガニスタンで最も強力で影響力のある隣国であり、ますます国際舞台でタリバンの偉大な支持者として見られています。

この役割を引き受けた為、中国は、米国がアフガニスタンに残した空白を埋めていると見なされるリスクを冒しています。

これは、中国が避けたいと望んでいたことです。

しかし、現実には、足を踏み入れてしまっています。

クンドゥズでのイスラム国のテロは、中国がすでにこの道をどれだけ進んだかを示したにすぎません。

新疆ウイグル 問題は喉に刺さった骨

中国は一帯一路政策を進める中で、経済援助や投資を餌に友好国の拡大を図ってきました。

アジアや中近東、アフリカといった国々で中国のアプローチにかなりの国が魅力を感じ、西側から中国に鞍替えした国も増えてきています。

しかしこの地域はイスラム教徒が多数を占める国がほとんどであり、彼らは一様に中国のウイグル族に対する弾圧に強い反発を感じています。

アフガニスタンでも政権についたタリバンは中国の経済援助が喉から手が出るほと欲しいのでしょうが、国民の中国に対する反発に悩まされる筈です。

 

本音を言えば、中国は米国がアフガニスタンの泥沼に出来るだけ長くはまっていて欲しかったのではないかと思います。

そうすれば、アフガニスタンで活動するウイグル系過激派も米国が対応してくれた筈です。

しかし今や中国は隣国としてこの「帝国の墓場」に対峙せざるを得ません。

そこにはウイグル系過激派の存在が難問として横たわります。

中国は新疆ウイグル自治区の問題を透明性のある形で解決しなければ、今後アフガニスタンのみならず、一帯一路といった国際的活動をする上で、大きな足かせとなる可能性が高いでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。