新しいワクチンが世界を救った
世の中の進歩は主に科学技術の発展によって実現されています。
昨年から世界中で猛威を振るった新型コロナに対するメッセンジャーRNA(MRNA)技術に基づくワクチンがなかったらどうなっていたでしょうか。
MRNAワクチンの様な革新的な技術は今後も続々と生まれる様です。
英誌Economistが「What next? 22 emerging technologies to watch in 2022」(来年注目される22の技術)と題する記事を掲載しました。長い記事なので、その中から幾つか注目すべき技術をご紹介したいと思います。
Economist記事抜粋
ソーラージオエンジニアリング
幼稚なほどシンプルに聞こえます。
世界が熱くなりすぎているなら、日陰を作ってみませんかというものです。
火山によって上層大気に放出された塵と灰は、冷却効果があることで知られています。
1991年のピナツボ山の噴火は、4年間で地球を0.5°Cも冷却しました。
ソーラージオエンジニアリングは、太陽放射管理とも呼ばれ、意図的に同じことを行います。
これは物議を醸しています。
それはうまくいくでしょうか?
022年に、ハーバード大学のグループが、2kgの物質(おそらく炭酸カルシウム)を成層圏に放出して、人工的な日陰を作る事を計画しています。
直接空気回収
大気中の二酸化炭素は地球温暖化を引き起こします。
では、機械を使って吸い出してみませんか?
いくつかの新興企業は、まさにそれを行う技術である直接空気回収(DAC)を追求しています。
2022年、カナダの企業であるCarbon Engineeringは、テキサス州で年間100万トンのCO2を回収できる世界最大のDAC施設の建設を開始します。
DACは、気候変動との戦いに不可欠となる可能性があります。
コストを削減し、テクノロジーをスケールアップする競争が続いています。
帆が付いたコンテナ船
船は温室効果ガス排出量の3%を生み出します。
これは帆船の時代には問題ではありませんでした。
帆はコストと排出量を削減するためにハイテク形式で復活するでしょう。
2022年、フランスのミシュランは、燃料消費量を20%削減することが期待される膨張式帆を貨物船に装備します。
日本の海運会社であるMOLは、2022年8月に伸縮式の剛性帆を船に搭載する予定です。
VRトレーニング
ほとんどの人は十分な運動をしていません。
多くの人が必要と思っていますが、やる気が出ません。
バーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットを使用すると、接近する障害物を交わしたりパンチしたりしてカロリーを消費できます。
ロックダウンがジムを閉鎖し、低コストのヘッドセットであるOculus Quest 2がリリースされたため、パンデミックの最中、VRワークアウトの人気が高まりました。
仮想現実(VR)のキラーアプリはフィットネスかもしれません
HIVとマラリアのワクチン
メッセンジャーRNA(MRNA)に基づくコロナウイルスワクチンの目覚ましい成功は、ワクチン開発の黄金時代を告げるものです。
モデルナは、同じMRNAテクノロジーに基づいたHIVワクチンを開発しており、2021年に初期段階の臨床試験に入ります。
独BioNTechは、マラリアのMRNAワクチンに取り組んでおり、臨床試験は2022年に開始される予定です。
3Dプリントされた骨インプラント
何年もの間、研究者は生物学的材料の3Dプリントを使用して人工臓器を作成する技術を開発してきました。
究極の目標は、患者から数個の細胞を採取し、移植のために完全に機能する臓器を作成することです。
これにより、臓器移植を待つ長いウエィティングリストや拒絶のリスクを排除します。
その目標達成は、肉質の臓器より骨の方が易しい様です。
新興企業のAdamは、3Dプリントされた人工骨が自然な骨の成長を刺激し、徐々に生分解し、最終的には患者の骨組織に置き換わると言います。
すべてがうまくいけば、研究者たちは血管と心臓弁の3Dプリント化が有望だと言います。
静かな超音速航空機
科学者たちは半世紀の間、超音速機の形状を変えることでソニックブームの強度を弱めることができないか検討してきました。
ごく最近になって、これらのノイズリダクションに必要なシミュレーションを実行するのに十分なほど強力なコンピュータが登場しました。
世界初で唯一の商用超音速旅客機であるコンコルドは、陸上を飛行するときに音より速く移動することを許可されませんでした。
最新型の超音速機のソニックブームは、コンコルドの8分の1の大きさになると予想されます。人間に知覚される75デシベルは、遠くの雷雨に相当します。
ウェアラブルヘルストラッカー
FitbitやAppleWatchなどは現在、主にフィットネストラッカーとして使用されており、歩数、ランニングと水泳の速度、トレーニング中の心拍数などを測定しています。
しかし、そのようなデバイスは今後医療目的に使われる様になるでしょう。
スマートウォッチは、すでに血中酸素飽和度を測定し、心電図を測定し、心房細動を検出することができます。
2022年に予定されているAppleWatchの次のバージョンには、血圧と体温に加えて、血中のブドウ糖とアルコールのレベルを測定できる新しいセンサーが含まれる可能性があります。
このような機能の規制当局の承認にはしばらく時間がかかるかもしれませんが、すぐに医師もウェアラブルからのデータに注意を払うようになるでしょう。
バーチャルインフルエンサー
人間のインフルエンサーとは異なり、バーチャルインフルエンサーは写真撮影に遅れたり、パーティーで酔ったり、年をとったりすることはありません。
これは、バーチャルインフルエンサーが、Instagramなどに登場するコンピューター生成のキャラクターであるためです。
最もよく知られているのは、Miquela Sousa、または「Lil Miquela」です。
これは、300万人のInstagramフォロワーを持つ架空のブラジル系アメリカ人19歳です。
2022年には150億ドルがインフルエンサーのマーケティングに費やされると予想されており、仮想インフルエンサーが急増しています。
人工肉と魚
ウィンストン・チャーチルはかつて「胸や翼を食べるために鶏全体を育てるのはばかげている」と考えていました。
ほぼ1世紀後、約70社がバイオリアクターで肉を「栽培」しています。
動物から採取した細胞は、動物に害を与えることなく、タンパク質、糖、脂肪、ビタミン、ミネラルが豊富なスープで栄養を与えられます。
2020年、サンフランシスコを拠点とする人工肉の新興企業であるEat Justは、シンガポールで製品の販売を認定された最初の企業になりました。
環境に配慮する肉愛好家は、間もなく人工肉ステーキを食べられるようになるでしょう。
科学の進歩を実現するもの
科学の進歩は目覚ましいものがありますが、これらの新しいテクノロジーの殆どがコンピューター技術の進歩によって生み出されている事に気付かされます。
今後もコンピューターの演算速度が高速化されるにつれて、あっと驚く様な技術が生まれる事でしょう。
Economistの記事には上記以外に、下記の様な技術も記載されており、ご関心のある方は本文をお読みください。
ヒートポンプ
水素飛行機
空飛ぶ電動タクシー
宇宙旅行
配達ドローン
3Dプリントされた家
メタバース
量子コンピューティング
ブレインインターフェース
最後まで読んで頂き、有り難うございました。