MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

オミクロン変異株の出現が教えてくれた事

f:id:MIYOSHIN:20211130131826j:plain

国境封鎖に走る先進国

オミクロン変異株の発生を受け、我が国やイスラエルなどは当面外国人の入国を禁ずる措置を講じました。

ウイルスはある確率で突然変異を繰り返します。

世界にウイルスが存在する限り、変異株は新たに生まれる可能性があります。

この問題に関して仏紙Les Echosの論説委員Dominique Seux氏が「Le vaccin, le poisson et la leçon de pêche」(ワクチン、それを与えるべきかその作り方を教えるべきか)と題した記事を寄稿しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

オミクロン変異株がアフリカ南部の国で発生したかどうかは不明です。

しかし、確かなことは、その発生が世界の国々のワクチン接種率の違いに焦点を当てたということです。

フランス人の10人に9人がワクチン接種を受けていますが、南アでは4人に1人、最貧国では殆ど接種が行われていません。

裕福な国々の利己主義が最も有毒であるとこの一年間唱えているのは、元英国首相のゴードン・ブラウンです。彼は「世界の他の地域で予防接種が行われなければ、コロナは戻ってきて私たちを悩ませることを理解する必要がある。 」と主張しています。

ワクチンの登場以来、生産拠点が主にヨーロッパ、米国、そして中国にあることは誰もが知っています。

したがって選択肢は、パンデミックが永遠に続くか、ブーメランを避けるために「先進国」が「発展途上国」に大量のワクチンを送るかです。

後者は先進国により約束されましたが、目標は十分達成されていません。

 

EUは、「月に3億回分」の生産能力に達し、ワクチン生産の主要な大陸になることに成功しました。

私たちの情報によると、1月以降、ヨーロッパは59か国に10億7000万回分の輸出を行っており、目的地の詳細は興味深いものです。

日本が圧倒的な首位で、次に英国、トルコ、米国が続いています。(グラフを参照、フランス語の資料で恐縮ですが、一番上から、日本、英国、トルコ、米国、ブラジル、韓国、オーストラリア、マレーシア、南アの順番です。)

f:id:MIYOSHIN:20211130130357p:plain

出典:Les Echos

ご存知の通り、発展途上国が自国でワクチンを製造できるようにするための特許の譲渡に関する議論も行われています。

最近、WTOでも頻繁に取り上げられていますが、不思議なことに、以前特許の譲渡について大規模なキャンペーンを行ったバイデン大統領はこの議題に触れなくなりました。

専門家は、特許の譲渡は、開発者がメッセンジャーRNAの有望な分野で研究を続けることを思いとどまらせるだろうと言います。

しかし、現在のような状況では、ワクチンは世界的な公共財でなければならず、変異株との戦いで最前線にある南アフリカとインドに対応しなければなりません。 

 

今のところ最貧国にできるだけ多くのワクチンを分配することが急務です。

特許解除の合意がなされたとしても、貧しい国々の問題をすぐに解決することはできません。

孔子の教えとは異なりますが、空腹の人に魚の取り方を教えるよりも、魚を与える方が手っ取り早いのです。

今のところ、Covax(国連ワクチン供与プログラム)は、5億回の約束分のうち、最貧国に1億回分のヨーロッパ起源のワクチンを提供しています。

フランスは、12月31日までに6000万ドル、6月30日までに1億2000万ドルを提供することを約束しましたが、目標には程遠い数字です。

 

アフリカ(南アフリカ、ルワンダ、セネガル)に3つの工場が計画されており、一部はヨーロッパから資金提供を受けています。

最後に言及すべき微妙な問題は、一部の発展途上国でワクチンの需要があまり高まっていない点です。

多くのアフリカ人とアジア人の目には、新型コロナはマラリアよりも危険性が低く、アストラゼネカワクチンの評判が一部の国の需要を冷やしている可能性があります。

我が国にできる事

これは日本の新聞には出ていない情報かと思います。

EUのワクチン輸出において、これほど我が国の占有率が高いとは知りませんでした。

英国を抑えてダントツの一位です。(英国は自国産のアストラゼネカを使ったためもありますが)

EUに感謝すると共に、菅政権はワクチン確保において相当頑張った事が窺えます。

更に特記事項はトルコが英国と並んで第二位にある事です。

今年EUとトルコは外交関係で相当ぎくしゃくしましたが、それでもEUはトルコを重視していることがこのグラフから見てとれます。

 

岸田首相はオミクロン変異株の出現に対して、国境を封鎖(日本人だけを受け入れる)という手段を講じました。

これが何を意味するかといえば、今後新しい変異株が出現するたびに鎖国を行う必要があると言う事です。

日本ではワクチン接種率が高まり、感染者は激減しましたが、世界中にワクチンが行き届かない限り、ブーメランの様にコロナは先進国を脅かし続けます。

我が国を含めた先進国は、積極的に貧しい国にワクチンを供与すべきでしょう。

我が国はワクチンを作れないのであれば、資金供与やロジスティック(極低温でワクチンを保存輸送する)で貢献できるのではないでしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。