日本は没落するのか
我が国は少子高齢化が進み、人口が急速に減少し、将来その国際的地位は失われると良く言われますが、その通りになるのでしょうか。
今月日本特集を組んだ英誌Economistが「What the world can learn from Japan - The oldest big country has lessons for those that will soon age and shrink」(世界が日本から学べること - いずれ少子高齢化する国々は最高齢の大国から学ぶべき教訓がある)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
日本は良く話題になります。
1つ目は、人口減少と高齢化が進み、活力を失い衰退している国としてです。
2つ目は、魅力的で機能的ですが少し変わった国としてです。
寿司を食べたり、独特のサブカルチャーを探索したりするのに最適な場所ですが、外の世界との関連性はほとんどない国としてです。
どちらの場合も、人々は日本を終わった国の様に描きますが、それは間違いです。
今週の本誌の特集が論じているように、日本は終わった国ではなく、前兆を示しています。
日本が直面する課題の多くは、急速な高齢化、長期の経済停滞、自然災害のリスク、中国とアメリカの間で板挟みになる危険など、他の国が既に経験しているか、まもなく直面する問題です。
これらの問題を早期に日本が経験したことから、それらの影響を観察し、どのように対応するか有用な教訓が得られます。
一つの教訓は、社会はリスクを抱えて生きることを学ばなければならないということです。
気候変動と自然災害が急増するにつれて、各国はショックから立ち直る必要があります。
辛い経験から、日本は耐性を高めることにに投資するようになりました。
橋や建物は耐震性を高めるために補強されています。
1995年に大地震が神戸を襲い、多くの人々が水を失った後、市は住民のために12日間の物資を貯蔵するための地下システムを構築しました。
多くの日本人は、災害への対応は国だけでなく、すべての人の問題であることを理解しています。
それはパンデミックの際に役立ちました。
マスクはほぼ全員が着用していました。
G7諸国の中で、日本は新型コロナによる死亡率が最も低く、二重ワクチン接種率が最も高い国です。
もう1つの教訓は、人口統計が重要であるということです。
ほとんどの国は、最終的には日本のように高齢化し、人口が縮小するでしょう。
2050年までに、世界の6人に1人が65歳以上になり、2019年の11人に1人から増加します。
中国を含む55か国の人口は、現在から2050年の間に減少すると予測されています。
最近のデータによると、インドも予想より早く人口が減少する様です。
より長く勤労を続けることが不可欠です。
日本政府は企業に対し、70歳になるまでスタッフを維持するよう求めています。
多くの人が職に留まっています。
70歳から74歳の33%が、現在も仕事をしています。
10年前は23%でした。
人口動態の変化は大きな経済的課題をもたらします。
日本の成長の鈍化は、人口の減少によるところが大きい。
しかし、個々の日本人の幸福を見ると、それははるかにバラ色に見えます。
2010年から2019年までの10年間で、日本はG7で一人当たりのGDP成長率がドイツとアメリカに次いで3番目に高かった。
日本は主要な対外債権者であり、現在の為替レートで3番目に大きな経済大国です。
その人々は他のどの国の市民よりも長生きします。
地球上で最大のテクノロジー投資家であり、先駆的な5 Gの企業であり、ユニクロから任天堂まで、多数のグローバルブランドがあります。
ロボットとセンサーの専門知識は、企業が新しい産業技術から収益を上げるのに役立ちます。
地政学的には、日本は最大の貿易相手国である中国と主要な安全保障相手国であるアメリカの間で極めて重要な役割を果たしています。
こんな国が世界の後塵を拝している訳がありません。
一方、日本の過ちは別の教訓を提供します。
多くのリスクを抱えて生活することは、優先順位を設定することを難しくします。
非常に多くの潜在的な危険に直面して、日本は気候変動に重きをおきませんでした。
これは、現在進行中の最大の災害です。
2020年にようやく2050年までに正味ゼロの炭素排出量に到達することを約束しましたが、詳細は明らかではありません。
政治家たちは、2011年の福島のメルトダウン後に停滞した原子力発電所の再開に期待を寄せています。
国民が原子力の危険性を過大評価している限り、これはありそうもないシナリオです。
一方、多くの官僚は、再生可能エネルギーに頑固に懐疑的です。
そのため、日本は最も汚い燃料である石炭を燃やし続けています。
人口減少に対処する一つの方法は、人々を最大限に活用することです。
高度な教育を受けた市民の多くが自分たちの可能性を実現する機会を拒否されている一方で、日本は彼らを十分に活用しようとしません。
年功序列に基づく昇進は、高齢者への過度の敬意と相まって、若い声を沈黙させ、イノベーションを抑制します。
そのため、最も優秀な新卒者の多くはスタートアップで働くことを好みます。
日本は近年、より多くの女性を雇用するという良い仕事をしてきましたが、それでも女性が昇進する機会は少なすぎます。
非正規雇用システムは、若者と女性を不安定なパートタイムの仕事に閉じ込めます(これにより、とりわけ、子供を産むことへの熱意が低下します)。
自民党は、悲惨なほど弱い野党のおかげで、1955年以来ほとんど途切れることなく政権を維持しています。
従い、政治家は新しいやり方を試みるプレッシャーを感じていません。
政界のボスたちは、一般市民よりもはるかに保守的です。
一方、一般の人々にとって、今日の快適さは、より明るい明日を求める衝動を鈍らせます。
日本の最後の教訓は、自己満足の危険性についてです。
茹でガエル状態の日本
海外で生活してみると、日本の便利さを改めて痛感します。
日本人だから当たり前かもしれませんが、治安が良く、整った公共輸送手段、水道の水がそのまま飲めるほど優れた上下水道、ハイレベルな医療環境など枚挙にいとまがありません。
しかし、高齢化していることも原因でしょうが、日本は変化することをためらいがちです。
良く言われる茹でガエル状態に陥っていると思います。
デジタル化では現在私が滞在しているトルコにも大きく置いていかれていますし、Uberの様なサービスが認められていないのも問題です。
年功序列の様な古いシステムがいまだに多くの企業に残されているのも、日本が新しいものを取り入れる事を躊躇しているからだと思います。
テクノロジーの進歩に応じて、過去のしがらみにとらわれす、良いものは積極的に受け入れていく政治家が現れることを期待します。
最後まで読んで頂き、有難うございました。