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政治資金提供者が大使に指名される米国

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漸く決まった駐日米国大使

駐日米国大使としてエマニュエル氏が米国上院でようやく承認され、同氏の起用が決定しました。同氏が大使に起用されるまで、駐日米国大使の席は何と2年も空席でした。

駐日大使だけではありません。

駐韓米国大使の席も11ヶ月空席で、未だに候補さえ決まっていないそうです。

大使の指名は米国の場合、上院の承認が条件となっており、これが時間のかかる理由となっている様ですが、どうもそれだけが原因ではなさそうです。

米国には多額の政治資金援助を行った人を大使として厚遇するという慣行がある事も、原因の一つとなっている様です。

この点について、米誌Foreign Policyが「Biden Taps Billionaire Campaign Donors for Ambassador Posts」(バイデン は億万長者の政治資金提供者を大使に指名している)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

バイデン大統領は、長年の慣行を終わらせようという民主党の努力にもかかわらず、外交経験のない多くの政治資金提供者を大使として指名しています。

ここ数ヶ月、バイデンは、ギリシャ、ケニア、アルゼンチン、ベルギー、スロベニア、マルタ、カナダなどの大使ポストに政治資金を提供した億万長者を指名しました。

共和党の大統領たちも、何十年にもわたって同様の慣行を支持してきましたので、それは大統領選挙中の論点にもなりました。

元外交官や倫理専門家は、外交経験のない政治資金提供者を大使に指名する慣行を批判し、「それは米国の外交政策を弱体化させ、事実上腐敗に相当する」と述べました。

 

バイデン氏は、トランプ前大統領の後、国務省を再建することを約束し、ホワイトハウスの広報官は、キャリア外交官を大使のポストの約70%に就け、30%を政治的任命者とするという政府の計画を発表しました。 (トランプ氏の下では、約55パーセントのキャリア外交官と45パーセントの政治的任命者でした。)

 

政治的任命者のうち、すべてが巨額資金提供者であるわけではありません。

NATO大使であるジュリアン・スミスのように国務省の外で政府の地位を高めた元政治家や民主党の外交政策の専門家もいます。

バイデンが指名したトルコ大使であるジェフ・フレークなど、上院外交委員会の委員を務めた元上院議員もいます。

 

しかし、一方で、巨額資金提供者も指名されています。

「トランプの後、世界は大きく変化しました」と、オバマ政権時代にホワイトハウスで要職を務めた元キャリア外交官のブレット・ブルーンは述べました。

「資金提供者や政治的友人を海外の贅沢なポストで報いるという考えは、深刻な国家安全保障の問題を生じ、外国の多くから私たちは信頼を失いました。」

 

政治資金提供者を大使のポストに置く先進国は他にありません。

2020年初頭の大統領予備選挙で、民主党のエリザベス ウォーレン上院議員は、大統領に選出された場合、選挙資金提供者を大使に指名する慣行を「ワシントンの腐敗」と呼び、終わらせることを約束しました。

にもかかわらず、資金提供者から大使への道はバイデンの下でも続いています。

ニューヨークの不動産の巨人で慈善家であるコンスタンス ミルスタインは、2020年、バイデン候補の政治資金調達委員会に725,000ドルを寄付しました。

今月、バイデンはマルタへの大使候補として彼女を発表しました。

ヒューレットパッカード、eBayの元CEOであるマーガレット ホイットマンは、今月、ケニア大使に指名されました。

ホイットマンは、バイデンの大統領選挙運動と資金調達委員会に50万ドル以上を寄付しました。

裕福なギリシャ系アメリカ人のホテル王ジョージ・ツニスは、ギリシャ大使の最新の候補であり、民主党に対する長年の資金提供者です。

オバマ元大統領は、ツニスをノルウェー大使に選びましたが、ツニスがノルウェー政府の構成に関する基本的な質問に上院の外交委員会で答えられず、2014年に彼の指名は撤回されました。

ツニスは、その時点で、ノルウェーに行ったことがありませんでした。

 

多くのベテラン外交官が指摘しているように、政治的任命者の全てが悪いわけではありません。

多額政治資金提供者を含む一部の政治的任命者は、大使館をうまく管理し、米国の外交政策を推進する上で大きな役割を果たすことができますが、すべて、キャリア外交官よりも大統領の内輪と密接な関係を持っています。

しかし、政治資金提供者である大使が大使館を誤って管理したり、経験不足、外交の基本をマスターできないこと、または外交上の混乱によって二国間関係を弱体化させたりする例は過去に数多く見られます。

政治的指名の是非

日本では、自民党への大口政治資金提供者が、大使に任命されるなんて事はありえません。

しかし、我が国の様にキャリア外交官が殆どの大使のポストを占めているのも、これはこれで考え物の様な気がします。

大使は国を代表するポストであり、赴任地では相手国の政治家と駆け引きもやらなければなりません。

公務員としてキャリアの大半を過ごしてきた人が、そういう事に向いているか若干疑問があります。

最近日本政府も民間人を大使に起用し始めていますが、その数は少なく、大国の大使はほぼすべてキャリア外交官で占められています。

前の日本大使だったキャロライン  ケネディ氏は、政治の名門ケネディ家出身で、民主党幹部に太い絆を持っていました。

今回日本大使に起用されたエマニュエル大使は、民主党選出の下院議員やシカゴ市長を務めた政治家です。

キャリア外交官とのバランスも必要ですが、こういう政治家を日本も大使に起用する事を検討する必要がある様に思います。

 

米国で政治的指名が今後もある程度の割合で残ると思うのは、大口支援者を厚遇しようという米国側の事情だけではないと思われます。

ホスト国側も勤勉で外交ルールをわきまえた官僚上がりの大使より、電話一本で大統領と話ができる大使を望んでいる事情もあると思います。

トランプ氏が予想を覆して大統領になった時、彼に話ができる人は誰かと日本政府が慌てた事を思い出します。

何せ、米国大統領は世界最強の権力者ですから。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。