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実は最も多くの人命を救ったアストラゼネカ製ワクチン

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先進国で人気のないワクチン

英国のアストラゼネカ製ワクチンは、日本政府も契約しましたが、血栓が生じるとか、他のワクチンに比べて効き目が弱いという評価から、我が国では殆ど使われていません。

これは日本だけではありません。

先進国ではおしなべて同社ワクチンの使用率は低い様です。

米国では当局の認可さえ下りていません。

先進国では不評の同社ワクチンですが、世界に目を移せば、全く違う評価が与えられている様です。

英誌Economistが「The triumph of the Oxford-AstraZeneca vaccine - Despite setbacks, the jab has probably saved more lives than any other」(オックスフォード-アストラゼネカワクチンの勝利 - 難問を乗り越えて最も多くの人々の命を救ったワクチン)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ジョンソン首相は国民に、オミクロンの「津波」が進行中であり、これを回避する可能性が最も高いのはブースター(追加)ワクチンであると主張しました。

12月12日に首相が発表したすべての成人は、2021年末までに1人ずつ提供される予定です。

しかし、彼らの選択肢は、モデルナとファイザーです。

英国のオックスフォード-アストラゼネカワクチンが使用されることは殆どありません。

このワクチンは英国の最も有名な大学と最大の上場企業によって作られた、国の象徴とも言えるワクチンです。

何が問題なのでしょうか。

確かに アストラゼネカは、データ公表、生産遅延、まれな副反応等について問題を抱えていますが、いくつかの面では、最も成功したワクチンといえます。

調査会社によれば、ファイザーが20億、モデルナが5億であるのに対し、アストラゼネカは22億回分のワクチンを市場に供給しました。(グラフを参照)。

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 出典:Economist

先進国では他のワクチンを使用することが増えていますが、貧しい国では初期投与に使用される事が多い事もあって、アストラゼネカのワクチンが他のどのワクチンよりも多くの命を救ったことはほぼ間違いありません。

 

それでも、アストラゼネカがワクチンで大金を稼ぐ事はないでしょう。

ワクチンを考案したオックスフォード大学は、人道上の理由から高い値段をつける事を潔しとしませんでした。

ファイザーの20ドル以上と比較して、同社のワクチンは4ドル未満で販売されています。 

 

アストラゼネカのワクチンは、先進国で苦戦しています。

米国食品医薬品局(FDA)との関係は、起こりうる副反応について規制当局に通知しなかったために悪化しました。

FDAはまだワクチンを承認していません。

 

アデノウイルスベクターを使用するワクチンは、感染を阻止する上で競合するワクチンよりも効果が低く、おそらく死を防ぐ効果がわずかに低いことが証明されています。

それが利用可能になった直後に、まれに血栓を引き起こしたという証拠が現れました(ジョンソン&ジョンソンのワクチン、別のアデノウイルスベクターワクチンもそうです)。

しかし、先進国以外では、そのような副反応被害は問題にされていません。

実際、アストラゼネカのワクチンはますます使用されています。

9月に生産が急増して以来、最も多くのワクチン接種を行った国は、インド、ブラジル、メキシコです。

貧しい国々にワクチンを配布する国連のプログラムであるCovaxは、もう1つの受益者です。

アストラゼネカのワクチンはマレーシア、ネパール、ベトナム、タイなどにも供給されています。

 

2021年後半の供給の急増は、アストラゼネカの巻き返し策が奏功しました。

同社はパートナーと協力して、15か国に25の製造施設を設立しました。

パートナーであるインドのセラム インスティテュートは、1月におよそ6千万回分のワクチンを作りました。

 

アストラゼネカは、競合先に比べて安価です。

同社は購入者の富に応じて価格が変動する契約に署名しました。

二つ目のセールスポイントは、ワクチンを低温で保つ必要がないというロジスティック上の利点です。

 

アストラゼネカの親会社であるパスカル・ソリオは、ワクチンを作るという決定は商業的ではなく基本的に利他的であると常に主張しており、ワクチンが大きな収益を生む事を期待していない様です。

同社の株主は同社業績におけるワクチンの貢献に満足していないかもしれませんが、それ以外の人々は同社のワクチン事業に感謝すべきと思います。

アストラゼネカの高い貢献度

オミクロン変異株がアフリカ大陸で初めて発見された事からわかる様に、今後も発展途上国で新たな変異株が発生するリスクは大きい様です。

先進国の人々がいくらブースターで防御を固めたとしても、オミクロンに続く新種の変異株はその防御を打ち破ってしまうかも知れません。

それを防ぐためには、世界中の人々がワクチンを出来るだけ早く打ち終わる事であり、その意味でアストラゼネカの貢献度は非常に高いといえます。

そして、彼らの戦略が安価なワクチン価格と現地生産の推進というのも素晴らしいと思います。

アフリカや南米などコールドチェーンが発達していない場所に極低温を保ってワクチンを届けるのは非常に難しく、その意味でもアストラゼネカは発展途上国に向いていると思います。

先進国では影が薄いアストラゼネカに頑張れと言いたくなります。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございます。