プレステ5の異常な人気
筆者はビデオゲームのファンではありませんが、ソニーのプレステ4は保有しています。
もっぱらBlu-rayの再生やカラオケに使用していますが、その性能の高さに惚れ込んでいます。
その後継機プレステ5を購入しようと思って驚きました。
全く新品が手に入らず、中古市場でそれはとてつもなく高値で取引されているのです。
これは半導体不足が主因ではありません。
コロナの巣ごもりの影響か、ビデオゲームに対する需要が高まり、最新型のコンソールであるプレステ5への需要が加熱している様なのです。
ビデオゲームは欧米や日本だけではありません。
中国でも大変人気が高まっている様ですが、中国政府が最近規制を始めた様です。
それは何故でしょうか。
この点に関して米誌Foreign Policyが「The Geopolitics of Video Games - China has taken an increasing interest in the fast-growing market. That’s bad news for gamers.」(ビデオゲームの地政学 - 急成長する市場への中国政府の介入はゲーマーにとっては迷惑な話)と題する記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Foreign Policy記事要約
あなたが世界の30億人のビデオゲーマーの一人であるなら、ゲーム機が現在、完璧なプレゼントであることをご存知でしょう。
年末のホリデーシーズンの需要に小売業者が追いつくのに苦労しているほどです。
しかし、ビデオゲームの世界は、サプライチェーンの混乱よりも恐ろしい地政学上の問題に直面しています。
昨年、ゲーム業界の収益は1,593億ドル(約18兆円)と推定され、2019年に比べて9.3%増加しました。
ブームは、コロナウイルスの大流行により人々が家に留まることを余儀なくされただけではありません。
ビデオゲームはますます洗練されたエンターテインメントを生み出しています。
Tencentのような中国の巨人が、西側の成功したゲーム製作者に注意を払い始めたのは当然のことです。
実際、彼らはそれらの多くを購入しています。
7月、Tencentは2つのゲーム会社を買収しました。
1つは英国、もう1つはスウェーデンです。
それは単なるビジネスのように思えるかもしれませんが、多くのビデオゲームには、強力な政治的コンテンツが含まれています。
ゲームは善と悪の間の戦いの無限のバリエーションを備えています。
当然のことながら、多くの人が民主主義や言論の自由などの西洋の価値観を支持しています。
これは、その作成者がそのようなものが当然と見なされている社会に住んでいるからです。
中国のビデオゲームへの関心の高まりは業界に利益をもたらしますが、表現の自由に関しては、悪いニュースです。
「中国政府が2017年の国家情報長官法の下で彼らに協力を強いることができるという事実に関する懸念があります」と、業界団体であるスウェーデンのゲーム産業の広報担当者であるPer Strombackは述べています。
その法律は、「あらゆる組織または市民は、法律に従って国の諜報活動を支援および協力するものとする」と広く規定しています。
中国企業が買収したビデオゲームスタジオも、中国の価値観に合わせてコンテンツを調整する必要があると感じています。
「私が独裁者だったとしたら、ビデオゲーム業界を厳しく管理したいと思います」と、ビデオゲームクリエーターであるエリックロバートソンは述べています。
地政学的な対立の加速は、架空の戦争、英雄、そしてさまざまな国籍の悪役がいるビデオゲーム業界にとって特に深刻なものです。
クリエイターは、中国当局や購入予定者を不快にさせることを恐れて安全にゲームを作成します。
これにより、スリリングなコンテンツが少なくなることは間違いありません。
アサシンクリードIIの主人公であるアウディトーレルネサンス時代のイタリアに住んでいますが、権威主義政権は彼のコメントを現代の地政学の反映としてとらえるかもしれません。
たとえば、中国には台湾を奪取する権利がないとのメッセージの発信として解釈することができます。
ビデオゲームクリエイターが、中国当局者のご機嫌を損ねない様、ゲームを作成する時の苦痛を想像してみてください。
大国の余裕が欲しい中国
強権主義の国家はメディアや映画等国民の目に触れるものを検閲する傾向があります。
我が国でも戦時中は米国の映画やラジオは見たり聞いたりする事が禁じられました。
中国で若者を中心に熱狂的なファンを増やしているビデオゲームもその対象になるのは時間の問題だったのでしょう。
ゲームユーザーである中国の若者が西側の価値観に影響されるのを嫌がっているのでしょうが、中国ももう少し大国の余裕を持てないでしょうか。
戦時中、敵国語である英語を教える事が禁じられていた中、海軍兵学校だけは、校長の判断で英語を教えていたそうです。
「敵を知り、己を知らずんば、百戦危うからず」とはまさに中国の孫子の格言です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。