自宅隔離の経験
海外出張から帰国し、今日漸く14日間の自主隔離期間が終了します。
生まれてこの方これほど長い期間外出しなかった事はなく、正直言ってかなりしんどい経験でした。
それでも筆者などは運が良い方で、同じ飛行機に同乗した乗客の中にオミクロン患者が見つかれば、自宅ではなく指定されたホテルで隔離生活を送るはめになっていました。
我が国はオミクロンの感染が始まってからというもの、外国人の入国禁止(滞在許可を有している人も含む)など世界で最も厳しい検疫対策を講じました。
これが功を奏したのか、現時点で感染者は非常に少ない状態を維持しています。
しかし日本の常識は海外の常識ではありません。
英誌Economistが「Why travel bans are usually the wrong way to curb Omicron - Most such restrictions are disruptive and ineffectual」渡航禁止令がオミクロンを抑制するための間違った方法である理由 - そのような制限のほとんどは混乱をもたらすだけで効果が無い)と題した記事を掲載しました。
現在20万人近い新規感染者を出す英国にそんな事言う権利はないと思われる方も多いかと思いますが、彼らの言い分を聞いてみましょう。
Economist記事要約
2019年12月31日、世界保健機関は、武漢で生じた肺炎の症例と思われるもののクラスターについて知らされました。
次の数週間と数ヶ月の間に、最初は都市、次に国、そして最後に地球全体が閉鎖されました。
人類は過去2年間でコロナウイルスについて多くのことを学びました。
マスク、ソーシャルディスタンス、そして何よりも、ワクチンはその広がりを抑えるのに効果的であることが証明されています。
しかし、1つの教訓は浸透していません。
それは長期にわたる渡航禁止令はほとんど無駄という事です。
11月、南アフリカが急速に普及している新しい変異種であるオミクロンの発見を発表した時、多くの国の最初の対応は、南アフリカからの旅行者に対する入国禁止または面倒なホテル隔離でした。
日本やイスラエルなどの一部は、すべての外国人に対して国境を閉鎖しました。
シンガポール、韓国、タイなど、再開の過程にあった他の国々もすぐに考えを変えました。
ヨーロッパの国境のないシェンゲン圏でも、移動制限が復活しました。
発生の初期段階では、変異株の感染が少なく、検査そして追尾システムが感染経路をたどることができるため、渡航禁止令は理にかなっています。
渡航禁止令によって、新しい変異株について調べたり、病院を準備したり、予防接種を展開したりするための時間を買うことができます。
しかし、渡航禁止令は、変異株が国内で勝手に拡大し始めると、ほとんど意味がないにもかかわらず、政府はそれに固執する傾向があります。
フランスが12月16日に英国からの必須ではない旅行を禁止し、オミクロンを締め出すことを望んだ時には、フランスはすでに1日平均50,000を超えるオミクロンの感染を記録していました。
これは、渡航禁止令によって引き起こされた経済的および社会的混乱を正当化するには十分ではありません。
渡航禁止令が長続きしない理由の1つは、禁止しても漏れるからです。
国は国民、居住者、その家族、不可欠な労働者、外交官、重要なビジネスマン、またはそれらのいくつかの組み合わせを許可しています。
オーストラリアやニュージーランドが行った様な長期渡航禁止令を課す国は、彼らの世界的なつながりだけでなく、国民自身にも莫大な負担が生じる事を覚悟しなければなりません。
2021年のほとんどの間、オーストラリア人は自国に戻るのに苦労し、そのために飛行機や検疫ホテルに法外な金額を支払わなければなりませんでした。
オーストラリア人は過去2年間、州境を越えることを許可されていません。
メルボルン市は2021年に262日間封鎖されました。
そのような政策は人命を救うことができ、島国での感染は少なくなります。
しかし、非常に長い間それを容認することをいとわない民主主義国家はありません。
依然として厳格なゼロコロナ政策を追求している唯一の国は中国であり、中国は最近のウイルスの発生を封じ込めるために必死の対策を講じています。
12月に毎日の感染がゼロから100以上に増加した西安市では、当局が猛烈な封鎖を課し、人口を繰り返し大量検査し、約3万人をホテルの検疫に押し込みました。
そのような措置は中国で人気があり、人々は厳しい支配者を信用しています。
しかし、オミクロンの高い伝染性を考えると、中国のゼロコロナ政策が持続可能であるかどうか、また中国が最終的にどのようにそれを超えて病気と共生するかは明らかではありません。
世界の他の地域にとって、最善のアプローチは、政府が最も費用効果の高い政策、特にワクチンブースターを促進する一方で、幻想を作り出すためだけに物事を禁止したいという衝動に抵抗することです。
英国とアメリカは、最近評価すべき常識を示しています。
両国は、変異株が国内で感染していることが明らかになった後、アフリカ南部の国々の渡航禁止令を撤廃しました。
アメリカは、旅行前にPCRテストを取得しなければならない期間を短縮しました。
英国は、到着してから2日以内に検査を受け、否定的な結果が出るまで自己隔離するように旅行者に求めました。
そのような措置は、最小限の混乱を目指すべきです。
合理的な判断を
今回のコロナ騒ぎで感じたのは、感染対策というのは極めて政治的な判断を求められるという事でした。
感染を食い止めるという観点から言えば、入国禁止が最も効果があります。
しかし、経済を回すという観点から言えば、それは零点に近い回答です。
従って、感染防止をとるのか経済を取るのかという極めて難しい方程式を解く事が必要になり、これは感染学の専門家ではなく、政治家の仕事になります。
ここで問題になるのは、政治家は選挙のことを最優先に考える点です。
マクロン大統領が英国からの入国禁止を主張したのは、やはり大統領選挙が視野に入っているからではないかと思います。
我が国も来年参院選挙があります。
これが政治家のメガネを曇らせなければよいなと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。
良い年をお迎え下さい。