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ウクライナ問題について米誌に寄稿したロシア大使

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悪玉ロシアの言い分

ロシアは最近ウクライナとの紛争で槍玉に上がっています。

日本のメディアでも、「ロシアはウクライナの民主化の動きに反対し、10万人もの軍隊をウクライナとの国境に派遣し、圧力をかけている。米国とNATO加盟国はこの状況を憂慮し、ウクライナ政府への支援を行っている。」というのがおおかたの論調ですが、この見方をそのまま鵜呑みにするのはいかがなものかと思います。

この問題について、駐米ロシア大使米国の外交誌Foreign Policyに寄稿し、ロシアの立場を説明しました。

何事も争い事は双方の言い分を聞いてから判断する必要があり、本日は、この大使の西側に対する反論「An Existential Threat to Europe’s Security Architecture? - What happens next in Ukraine depends on the West’s readiness for dialogue, says Russia’s ambassador to the United States.」(欧州安全保障における実存する脅威とは何か? - ウクライナで次に何が起こるかは、西側が対話の準備ができているか否かにかかっていると駐米ロシア大使は主張する)をご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

ロシアを理解するには、私たちの歴史を理解する必要があります。

何世紀にもわたって、私たちの国はあらゆる方向からの攻撃に苦しんできました。

 

ナチスがソ連に侵入したことによる大きな傷跡は、ロシア国民の記憶の中でまだ癒されていません。

私たち自身のためだけでなく、ナチスの占領からヨーロッパ全体を解放するために、我々は2700万人の命を捧げました。

 

冷戦の間、西側諸国はソ連を「悪の帝国」と呼びました。

それが存在しなくなった時、普遍的な愛と友情で満たされた黄金時代が続くと期待されていました。

しかし、それは起こりませんでした。

米国はすぐにロシアを蚊帳の外に置いて新しい世界秩序を作り始めました。

ドイツ統一の準備が整った時、NATOは東方への拡大は計画していないと約束しました。

NATO拡大が1999年に案の定始まった時、米国政府は、そんな約束は当時の国務長官のジェームズ・ベイカーとゴルバチョフの間の、法的義務を伴わない友好的な会話の一部だと主張しました。

 

ソ連の崩壊以来、NATOの東方拡大を目の当たりにしてきました。

2005年以来ブリュッセルのNATO本部で行われたイベントで、ロシアの代表はNATOへの主な脅威はイランを中心とする南部から来ていると言われました。

「では、なぜあなた方はロシアの国境に向かって東方に拡大しているのですか?」という我々の質問に対する明確な答えは一度もありません。

 

近年、NATOの軍事活動はかなり激化しています。

ロシアの領土のすぐ近くで、毎年約40の主要な軍事演習が行われています。

ストックホルム国際平和研究所の最新の評価によれば、NATO諸国の軍事費の合計はロシアの防衛予算を少なくとも25倍上回っています。

 

現在、NATOは、ウクライナとジョージアをその加盟国に引き込もうとしています。

NATOがウクライナに広がれば、ロシアの安全に対する脅威が急激に高まります。

これは、我が国への飛行時間が短いミサイルシステムなどがウクライナに配備される可能性があるためです。

ここに、第二次世界大戦後に確立された集団安全保障システムの絶え間ない解体を思い出す必要があります。

私たちの要請にもかかわらず、米国は弾道弾迎撃ミサイル(ABM)条約、中距離核戦力条約、およびオープンスカイズ条約から撤退しました。何故でしょうか?

米国がABM条約から撤退した結果、戦略的安定性を維持するために、あらゆるミサイル防衛システムに侵入できる極超音速兵器を開発するというロシアの決定が行われました。

今、彼らはロシアの武器が危険な状況を作り出していると私たちに言い続けています。

これは、ルーマニアやポーランドに配備される「防御的な」アメリカのMK 41ランチャーが、攻撃的なトマホークミサイルの発射に適応できるという事実にもかかわらずです。

これについて懸念を表明すると、米国は「私たちを信頼してください」と言います。



状況は非常に危険です。

自らの安全を守るという私たちの決意を疑うべきではありません。

物事には限界があります。

私たちの国の存在を危うくする軍事システムを構築し続けるならば、私たちも同様に相手の脆弱性を作り出すことを余儀なくされるでしょう。

NATO加盟国によるウクライナにおける軍事的企ては、ロシアにとって実存的な脅威です。

緊急の対応が必要です。

平等で不可分なセキュリティの原則を回復する必要があります。

私たちは単に安心したいと思っています。

そのためには、NATOをさらに拡大したり、近隣諸国の領土にロシアに脅威を与える兵器システムを配備したりしないように、米国と他のNATO諸国からのコミットメントが必要です。

大国の度量

ロシア大使の言い分は、欧米の主張と全く異なる事がお分かりと思います。

ロシア側は「ソ連崩壊時に、NATOは東方拡大しないと約束したにも拘らず、この約束は反故にされた。核兵器条約なども破棄してきたのはロシアではなく米国である。ウクライナはロシアにとって絶対に譲れない最後の一線である。」と主張しているのです。

勿論ロシアが全て正しいわけではありませんが、欧米の主張を鵜呑みにするのは危険だと思います。

筆者はインド太平洋に欧州からシフトしようとする米国の動きを妨げるため、EUがロシアの脅威を誇張しているのではと睨んでいます。

紛争は多くの場合、紛争によって得する組織によって引き起こされるケースが多いので、注意が必要です。

救いは、この駐米ロシア大使が書いた論文が米国の外交誌に記載され、世界中の読者に読まれている点です。

寄稿したロシア大使も偉いですが、寄稿された論文を掲載したForeign Policy誌も見上げたものです。

ロシアは米国にとって仮想敵国ですが、相手の言い分もきちんと聞いておこうという度量が米国に備わっている限り、米国は今後も尊敬され続けるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。