大使を決められない米国
バイデン 大統領は就任後一年が経ちましたが、未だに多くの大使が派遣されない異常事態となっています。
日本は漸く新しい大使が上院で承認されましたが、多くの国で大使は以前空席です。
それが小国かと思ったらそうではありません。
英国、ドイツ、イタリアも空席だというのだから驚きです。
この問題について英誌Economistが「Can Joe Biden’s relentless diplomacy work without diplomats?」(バイデン 大統領の厳しい外交は外交官なしに可能か)との記事を掲載しました。
Economist記事要約
ロシアのウクライナ侵攻を回避するためのアメリカの外交キャンペーンは今週、米露の高官の会談で山場を迎えます。
バイデン大統領の外交チームは、心配になる程上級外交官を欠いています。
彼らは、まだドイツ、英国、イタリアなど欧州の主要国に大使を派遣していません。
大統領就任からほぼ1年が経ち、驚くべきことにウクライナにも2019年以来大使がいません。
ヨーロッパだけではありません。
イランとの核交渉が難航し、中東で問題が生じていますが、、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールなど、主要な湾岸諸国のいずれにも大使がいません。
中国との争いがアメリカの最大の地政学的関心事であるアジアでは、インド、フィリピン、タイ、または地域グループであるASEANへの大使もいません。
また、韓国には数万人の米軍が配備されていますが、アメリカ大使はいません。
ワシントンの国務省には、近東、国際安全保障と核不拡散、また軍備管理のための次官補がいません。
テロ対策コーディネーターや法律顧問もいません。
トランプ氏が2020年にスティーブ・リニックを解雇して以来、監察官のポストは空席のままです。
「これは大きな問題だ」
「私たちには完全な国家安全保障および外交政策チームが現場にいないという事実によって妨げられています。」とアメリカ国務長官のアントニー・ブリンケンは12月14日に警告しました。
年末に漸く30人の大使が承認されました。
その中には、中国大使、日本大使、EU大使などの大物が含まれます。
それでも、まだ合計190人の大使のうち68人のポストが空席です。
ここ数十年、すべての大統領は、同じ問題に苦労してきました。
彼らは約4,000人の政治任命者を決定する必要があり、、そのうち約1,200人は上院によって承認されなければなりません。
上院の確認を必要とするポストが多いため、特に国務省は苦しんでいます。
大きな問題は、共和党の上院議員による妨害です。
彼らは数十人の大使の指名を遅らせたり阻止しました。
民主党は「Build Back Better」法案など、優先議決事項がある場合は、外交官承認にわずかな時間しか与えられません。
大使がいない事による被害の大きさを評価するのは難しいです。
多くの仕事は国務長官と相手のリーダーの間で直接行われています。
他の役人が仕事を引き受けることができます。
しかし、どんなに専門的であっても、臨時代理大使は、大統領の指名した大使が持つ影響力を欠いている可能性があります。
昨年夏に原子力潜水艦をオーストラリアに提供するという米英の取り決めについてフランスに事前に伝えなかった不手際は、大使不在の結果かもしれません。
2001年9月11日の同時多発テロに関する超党派の調査では、国家安全保障の地位に主要な要員を任命するのが遅れたことが、アメリカが彼らを阻止できなかった一因となっていることがわかりました。
当時半分の要員が指名されていませんでしたが、現在その数は3分の2に増えています。
多くの国では、長期にわたる大使の欠員は苛立たしいものであり、米国が撤退するのではとの疑いを生じます。
バイデン氏がウクライナへの大使を指名することさえできない事は、ウクライナ側の懸念を強めています。
おそらくプーチン大統領も同様に認識しているでしょう。
機能不全に陥った米国
この状態は俄かに信じがたいですね。
これだけ多くの主要国の大使を欠いて外交が成り立つのでしょうか。
政治的任命者である米国の大使はお飾りで、実際は生え抜きの官僚が外交を行うのだから問題ないとの意見もあるかも知れませんが、やはり大使と臨時代理大使では重みが違います。
更に驚くのは、この大使や重要な政治任命者の人事が政党の党利党略の対象になってしまっている事です。
これは米国の政治システムが機能不全に陥っている様に思います。
米国大丈夫でしょうか。
他国に付け入る隙を与えている様な気がします。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。