今年の10大リスク
米国のシンクタンク、ユーラシアグループが年初に発表する「今年の10大リスク」は我が国のマスコミにも頻繁に取り上げられます。
今年はそのトップに「中国のゼロコロナ失敗」が挙げられました。
中国のコロナ対策は今のところ成功し、死者数や感染者数は14億人の人口を持つ国としては不釣り合いに少ないのに、何故ゼロコロナ失敗が大きなリスクとみなされるのでしょうか。
この点について仏紙「Les Echos」が「La politique zéro Covid de la Chine mise à rude épreuve」(厳しい試練に直面する中国のゼロコロナ政策)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
彼の名前は公表されたことがありません。
中国の保健当局は、武漢の生鮮食品市場に頻繁に出入りした61歳の男性であると漠然と示しています。
2年前の1月11日、中国は武漢での不審な肺炎の最初の死を発表しました。
2年後、新型コロナの感染により、世界中で550万人が命を落としました。
そして、前例のない速度でワクチンを開発したにもかかわらず、地球はまだこのコロナとの戦いを終えていません。
武漢では、中国の他の地域と同様に、パンデミックは2020年の春からほぼ抑え込まれており、公式の死者は4,636人のままです。
武漢の封じ込めが終わって以来、世界で最も人口の多い国は、2人の死者を追加しただけです。
しかし、中国は、流行が再発することを恐れており、オミクロン変異株の拡大を恐れています。
北京オリンピックと旧正月の開催は、国内で大規模な移動が行われると予想され、当局は警戒を怠っていません。
中国は2020年3月からゼロコロナの方針を採用し、国境を閉鎖しました。
国内では、正常な日常生活への復帰は、最初から厳格な管理の下に実現されてきました。
兵馬俑で知られる西安の1300万人の住民は、たった150人の感染が出た事から、2週間以上アパートに閉じ込められました。
北京から遠くない天津では、日曜日から1,400万人の住民が検査を受け、20人が陽性であり、そのうち少なくとも2人はオミクロン変異体が発見されました。
春以降、中国では散発的な感染が発生しており、ゼロコロナ戦略に負担がかかっています。
コロナのわずかな症例も排除するという頑固さは、これまでのところ保健面で成功していますが、経済的或いは社会的コストが増大しています。
閉じ込められた住民は食糧不足を訴え、空腹の住民はコーヒーを卵に、タバコをインスタントラーメンに交換しました。
大規模な多国籍企業も影響を受けています。
サムスンとマイクロンの2大半導体メーカーは、西安工場の操業を調整しなければならなかったと述べ、それは彼らのグローバルなサプライチェーンに損害を与えました。
中国は12億人の住民に中国製ワクチンを接種しましたが、ゼロコロナ政策から逸脱することを拒否しています。
人口14億人と不十分な病院システムを考えると、北京大学の研究者はこれらの制限を緩和すると国が「とてつもない感染」に苦しむだろうと警告しました。
経済的には、ゼロコロナ政策は全国的な流行からの復帰よりもコストが低いと中国は信じています。
「中国製のワクチンがオミクロンの拡散を防ぐのに効果がないと予想されるため、中国はゼロコロナ政策を変更しようとしないだろう」と、米国のシンクタンクであるユーラシアグループは予測しています。
Withコロナを排除する中国
中国は今後オリンピックを控えていることもあり、オミクロン変異株の感染に晒されます。
もし市中感染が始まれば、感染力が強いオミクロンは瞬く間に感染を拡げる可能性があります。
中国製のワクチンはメッセンジャーRNA型では無いため、オミクロンに対して有効では無いのではと推測されています。
もしユーラシアグループの予測が当たるとすれば、影響は海外にも広がり、我が国も無傷では収まりません。
中国は今や我が国の最大の貿易相手国であり、市場としてもサプライチェーンとしても重要です。
中国からの部品供給が止まれば、自動車が日本で作れないという事態も十分ありえます。
中国にファイザーやモデルナがmRNA型のワクチンを供給するという可能性もありますが、そうなれば、我が国に入ってくるワクチンは激減します。
いずれにせよ中国のゼロコロナ政策の成否は世界中に甚大な影響を与えることは間違いありません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。