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ウクライナ紛争の背景にガス供給をめぐる米露の対立が

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ロシアに依存する欧州エネルギー市場

ウクライナ紛争を欧州はどの様に捉えているのでしょうか。

昨日はドイツを取り上げましたが、今日は仏紙Les Echosを取り上げましょう。

同紙は「Comment l'Europe peut desserrer l'étau du gaz russe」(欧州はロシアのガスの束縛から解き放たれる事ができるか)と題した記事を掲載しました。

ロシアの天然ガスに依存するEU諸国の抱える問題について触れています。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

ロシアは、制裁措置に対抗して、ヨーロッパへのガス供給を止めることができるでしょうか?

もしそんな事が起これば、どうやって欧州は真冬のエネルギー不足を避けることができるでしょうか?

ほんの数週間前には想像もできなかったこの様な事態は、ウクライナの緊張の高まりとともに真剣に提起されています。

 

「ロシアがすべての供給を完全に停止する可能性は非常に低いです、とIHS MarkitのアナリストであるMichael Stoppardは語ります。

しかし、特定のガスパイプラインの閉鎖は、たとえばウクライナやポーランドを経由してロシアとヨーロッパを結ぶものであり、私たちが準備しなければならない最悪のシナリオの1つです。 

 

ヨーロッパのガス消費量の30%

EUは天然ガスに大きく依存しているという厳しい現実に向き合っています。

ガスへの依存度は、フランスまたはポーランドのエネルギー消費量の15%、ドイツとスペインで25%、イタリアで40%以上に達しています。

このガスの圧倒的な部分はパイプラインによってロシアから供給されています:特定の年に最大40%

ICISによると、この割合は2021年に30%に低下しました。

この数字に、LNG船によってシベリアから輸送される液化天然ガス(LNG)の量を追加する必要があります。

フランスは他の国よりもロシアへの依存度が比較的低いのが特徴です。

 

代替ソース

ロシアからの輸入ガスの減少は、ヨーロッパでのガス価格の高騰を部分的に説明しています。

ガス価格は現在、昨年の同時期の4倍であり、電気価格に前例のない上昇をもたらしました。

米、独、国際エネルギー機関などは、ロシアが、西側に圧力をかけるために意図的に蛇口を締めてガス価格を高騰させたと非難しています。

 

ロシアとの外交的対立の中で、米国はロシアの脅威を最小限に抑えることを目指しています。

ホワイトハウスの高官は今週、匿名を条件に、ロシアが欧州へのガス供給を閉鎖することを決定した場合、「潜在的な削減の大部分をカバーする代替ソースを見つける準備ができていると信じている」と述べました。

そして、「ヨーロッパがエネルギー供給を必要とするのと同様に、ロシアはガスと石油の収入を必要としている」と付け加えました。

バイデン大統領は今週金曜日、世界最大のLNG輸出国であるカタールの首長を迎え、「国際的なエネルギー供給の安定性」について話し合います。

ノルウェーやアルジェリアもその生産を増やすことができます。

 

LNG

既にLNGの輸入は開始されています。 1月のある日に、LNGはヨーロッパ需要の最大4分の1を供給しました。

これらの増加した流れは、北アジアの温暖な気温のおかげで、中国、韓国、および日本がここ数週間LNGをあまり購入しなかったために可能となりました。

ロシアとの危機が発生した場合、ヨーロッパはさらに多くのLNGを輸入できるでしょうか。

これに対し、「一定の量を超えると、ヨーロッパのLNG再ガス化能力は飽和状態になります」とStoppard氏は警告します。

 

価格危機

「ロシアが輸出を制限し続けるならば、問題は残るでしょう」と専門家は説明します。

フランスを含む多くの国は、ガスと電気の価格の前例のないインフレを阻止するために数十億ユーロを費やさなければなりませんでした。

「それは実際は供給問題というよりも価格危機のようなものです」とStoppqrd氏は結論付けています。

米国の思惑

上記の米ホワイトハウス高官の談話は興味深いですね。

ロシアガスの代替供給ソースには目処がついていると発言していますが、これはロシアの代わりに米国はガスを供給できる事を示唆しています。

ドイツが米国のガス供給を喜んで受けると予想される方もおられると思いますが、ドイツはガスの供給先をロシアから米国に変更することに消極的だと思います。

もちろんサプライソースの多様化はドイツにとってメリットがありますが、本格的にロシアから米国に変える気はさらさらないというのが実情でしょう。

ドイツは旧ソ連時代からずっとロシアのガスの供給を受けていますが、冷戦下においても、旧ソ連はドイツへのガス供給契約を1日たりとも怠ったことは無いと言われています。

エネルギーは安定供給が最重要です。

ドイツは信頼に値するロシアを引き続き主要供給源としようと思っている筈です。

Les Echosの記事から浮かび上がってくるのは、ドイツ市場ひいては欧州市場をめぐって米露が綱引きをしている絵です。

米国政府はウクライナ紛争を背景に、反露感情を国際的に掻き立てようとしていますが、彼らの本音は別のところにある様な気がします。

それはロシアの代わりに自国の天然ガスを欧州市場に売り込む事や、ひょっとすると支持率回復を狙うバイデン政権が政権浮上のために仕掛けた反露キャンペーンなのかも知れません。

そんな米国の思惑を見透かしたのか、ドイツは米国の思う様には動きません。

欧州のもう一つの大国フランスのマクロン大統領は今回の反露キャンペーンを利用して、米国に依存しない欧州独自の安全保障体制の構築を唱え始めました。

これら全て欧州が米国とは距離を置いた独自路線を歩み始めた兆候と思われます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。