高騰する欧州でのエネルギー価格
欧州は再生エネルギー先進国として知られています。
特に風力発電が占める割合は急速に高まってきました。
それでは、彼らが最近の石油ガス価格の高騰に無縁かと言えば、そんな事は全く無い様です。
仏紙Les Echosが「Les énergies renouvelables encore loin derrière les hydrocarbures en Europe」(ガス石油に未だに大きく依存するEU)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
西側諸国ではインフレが顕著です。
ユーロ圏では1年間で5%を記録し、これは1999年の単一通貨ユーロ発行以来最高の数字です。
このインフレは特に石油とガスの高騰によりもたらされました。
特にガス価格はロシアが欧州の主要サプライヤーである事から、ウクライナ危機のために10月から12月の間に3倍になりました。
一方、石油価格は、ブレント1バレルあたり88.3ドルに達し、前年の57ドルに対して、54%上昇しました。
ユーロスタットによると、石油はヨーロッパの一次エネルギー消費量の36%を占めており、天然ガス(22%)を上回っているため、その影響はさらに大きくなります。
再生可能エネルギー(太陽、風力、バイオマス)は、原子力(13%)と石炭(13%)を上回り、15%(1990年にはわずか5%)と石油ガスに次ぐポジションを獲得しました。
原子力発電は、発電所の閉鎖により、何年にもわたって着実に減少しています。
ヨーロッパの主要経済国であるドイツは、2022年末までに原発を完全に放棄し、2030年には石炭を放棄する予定です。
この政策により、ヨーロッパは、炭化水素の供給と外国に対して、二重の依存状態に置かれています。EUでの石油またはシェールガスの生産は消費された総燃料の3%にしか相当しません。
合計すると、EUは、それが生成するエネルギーの39%しか生成せず、それは主に再生可能エネルギーと原子力です。
残りの61%の内訳は石油から3分の2(ロシア、イラク、ナイジェリア、サウジアラビア)、ガスから4分の1(ロシア、ノルウェー、アルジェリアおよびカタール)そして石炭となっています。
この依存関係はヨーロッパ諸国間で大きく異なります。
原子力のおかげで、ガスはフランスで消費されるエネルギーの6分の1に過ぎず、しかもガスはロシアよりノルウェーから多く輸入しています。
対照的に、ロシアはドイツのガス輸入の半分を提供しており、それは家庭の半分を暖めます。
ロシアがウクライナに侵攻した場合の懸念事項:EUがとる制裁措置により、ロシアは報復として、真冬にガス供給を遮断する可能性があります。
ロシアは6,000億ドル(約70兆円)の外貨準備のおかげで、しばらくの間ガス収入なしで耐える事が出来ますので、このシナリオは本当に可能性があります。
EUはLNGの大量の在庫または代替供給を持っているので、この措置は、物理的な不足を引き起こす可能性はすくないですが、ガス価格をさらに上昇させるでしょう。
しかしそうなれば、ロシアは信頼できる供給業者としての評判を損ない、ヨーロッパにエネルギー多様化計画を加速させることにより、「虎の尾を踏む」リスクを冒すことになります。
冷戦の最も緊張した瞬間でさえ、ロシアが決して西欧へのガス供給を止めなかったのは偶然ではありません。
我が国にも同様なリスクが
欧州のエネルギーはこれまでロシアからのガス石油とフランスを中心とした原子力、そして欧州に広く存在する石炭によって主に賄われてきました。
地球温暖化対策で先頭を走るというEUの方針は再生可能エネルギー分野で多くの欧州企業を世界トップレベルに押し上げましたが、一方で、化石燃料と原子力のシェアを急速に縮小しようとしたため、今回の様なエネルギー価格の高騰を招いてしまったと言う事だと思います。
以前のブログでもご説明した通り、ロシアが欧州向けのガス供給を止める様な事態は起こらないと筆者は思います。
それはロシアにとって自殺行為であり、欧州のロシアガス離れを促す行為です。
しかし、ウクライナの危機を演出することにより、ロシアはガス価格を高騰させる事が出来ます。
今回の欧州エネルギー危機を我が国も他山の石とすべきだと思います。
地球温暖化と価格高騰リスクを睨みながら最適のエネルギーミックスを構成して欲しいものです。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。