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中国は資本主義経済国か

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高度経済成長が産んだ歪み

お隣の中国では現在冬季オリンピックが開催されています。

門戸開放路線に舵を切って以来、40年にもわたる高度経済成長を続けてきた中国ですが、国民の所得水準が上昇すると共に綻びも見えてきている様です。

米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「To Achieve ‘Common Prosperity,’ Xi Jinping Seeks to Scale China’s ‘Three Big Mountains」(共同富裕を達成する上で習近平氏が直面する三つの壁)と題した記事を掲載しました。

社会主義国である筈の中国で驚くほど大きな格差が生まれている事が理解できます。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

何十年にもわたって経済成長を優先した後、中国の指導者たちは最近、教育および住宅セクターの見直しに力を注いできました。

これらの取り組みの背後にあるものは、中国の人々が「3つの大きな山」と呼んでいるものです。

この用語は、帝国主義、封建制、縁故資本主義の悪を指すために使用された共産主義革命家の標語の現代的なひねりであり、住宅、教育、医療に関連するコストを説明するためにここ数年使われてきました。

これらのコストに関する懸念は、中国に固有のものではなく、アメリカにおいてもよく見られます。

 

都市部の富裕層とはるかに貧しい田園地帯の間の格差を広げた40年間の爆発的な経済拡大の後、指導者の習近平は、共産党の正当性を強化するための彼の「共同富裕」キャンペーンの中心にこれらの家計の問題を置きました。

これは下層階級を保護し、社会の不安を抑えようとするものです。

中国当局は、急騰する住宅市場を落ち着かせることを目的とした措置を課し、かつて活況を呈していた家庭教師業界に厳しい制限を課し、医療を改善する計画を打ち出しました。

暮らしに直結する問題を解決できれば、習近平氏の異例の3期目続投も可能になるでしょう。

中国がまだ完全に計画経済であったとき、国家はゆりかごから墓場まで社会の基本的なニーズを満たすことを目指しました。

しかし、不十分な政府サービスに不満を持ち、起業家精神を生かすことを狙った中国の指導者たちは、それらを民間資本に開放し始めました。

その政策は過去40年間で生活水準を劇的に引き上げましたが、それはまた多くの市民には手の届かないところへそれらのコストを押し上げ、出生率は急落しました。

北京で専門職として働く28歳の黄荘は、住宅、教育、医療の費用を考えると、家族を持つという考えでさえ彼を恐怖で満たすと言います。

黄氏は「選択肢は子供を全く持たないか、少し年取ってから子供を1人だけ持つことだ。」と語ります。

 

3つの大きな山のそれぞれを詳しく見てみましょう。

 

教育

中国のエリート大学での競争が激化する中、子供を入学させたい中国人の両親の間で家庭教師サービスは加熱し、家庭の教育費を押し上げています。

中国の最大の都市では、最も人気のある学区に申込者が殺到し、住宅価格が急騰しました。

2020年の調査によると、北京、上海、深センでは、4〜17歳の子供を持つ家族の78.4%が学習塾に子供を行かせています。

テンセント ホールディングスが2019年に実施した調査によると、中国の28の都市で、夏休み子供の教育に月の世帯収入の3分の1以上を費やした家庭が44%に上り、更に12%は収入の半分以上を費やした様です。

 

医療

中国の人口の95%以上が何らかの形で政府支援の健康保険に加入していますが、多くの人々は依然として質の高い医療を受けるのに苦労しています。

農村部と都市部の格差も激しい様です。

癌や糖尿病などの重篤な疾患のある人の負担は法外なものになり、多くの人が貧困に陥る可能性があります。

中国政府は2020年に、医療費によって家計が破綻していた1,000万人を貧困から脱却させたと述べました。

中国では医療費のコストがはるかに低い公的な診療所ではなく、熱や頭痛などの単純な病気でも私立病院に行く患者が多い様です。

2018年に中国の全人代が発表したレポートによると、中国の医療サービスの大部分を提供する公立病院は、不必要な処方やサービスに対して高額な価格で患者に請求することで利益を得るように動機付けられています。

 

住宅

中国の不動産市場は、国営企業が中国の都市住民に住宅の大部分を提供していた1990年代以降、指数関数的に成長しました。

市場の自由化により、広範囲にわたる住宅不足が緩和され、世界最大の不動産ブームが生まれました。

2019年までに、中国の都市の平均住宅価格は平均年収の9.1倍に上昇しました。

経済的機会を求めて大都市に移住した多くの家族は借金漬けになっています。

上海財経大学によると、2020年末までに、住宅ローンは平均世帯の債務水準を可処分所得の130.9%に引き上げました。

これは、サブプライム住宅ローン直前の2007年の米国の133%に匹敵します。

中国は資本主義国家か

上記の記事を読むと、中国は西側の資本主義国家と同様の問題を抱えている事に気付きます。

数字だけみると、資本主義が作り出す格差やバブルといった問題の深刻さは中国が上回っているのではという印象さえ受けます。

北京や上海の住民が購入する住宅価格は世帯の可処分所得の20年分を超えているそうです。

東京でさえ10倍程度で、サンフランシスコでは5倍程度です。これでは中国の大都市で家庭を持つのは不可能でしょう。

政治は社会主義、経済は資本主義というのが中国の実態という事でしょう。

そんな中で習近平主席が共同富裕を打ち出し、格差是正に乗り出したのは当然だと思います。

逆に言えば、このまま格差が拡大していけば、大多数を占める中国の貧困者が中央政府に反旗を翻す危険性があるのだと思います。

米中共に格差とバブルという共通の問題を抱える現在、どちらの体制がこれをうまく解決できるかが勝敗を分けるかもしれません。

上記の記事で全人代のレポートが中国の医療体制の問題を的確に指摘しているところを見ると、一党独裁だから自らの欠点を指摘できないという批判は中国に関しては必ずしも当たらない様な気がします。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。