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風力発電の雄ドイツが直面する問題

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風力発電のリーダー:ドイツ

ドイツは地球環境対策において世界最先端を走る国の一つです。

昨年末に誕生した連立政権も脱炭素社会の実現を強く主張しています。

そんなドイツがカーボンニュートラルを達成する上で、最も期待されているのは風力発電事業ですが、どうも計画通りに物事が進んでいない様です。

この問題について英誌Economistが​​「Germany’s plans for wind power are dauntingly ambitious」(ドイツの風力発電計画は野心的に過ぎるかも)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

「風力発電はナンセンスです。」と、ドイツのチェコ国境近くにある小さな町ノイアルベンロイトのケストラー市長は風力発電をこきおろしました。

魅力的な温泉街としてこの街を復興させた市長は、風力発電所が美観を損なうとして反対しています。

現在、ケストラー氏は、風車で国土を覆いたいと願う強引な投資家や政治家に不満を募らせています。 

 

現状、ケストラー氏はそれほど心配する必要はありません。

昨年、ドイツ最大の州であるバイエルン州に8基の風力発電所が建設されましたが、風車の建設は最近ほぼ停止しました.。

2021年の前半、石炭はドイツの主要な電力源として風力を上回りました

 

エネルギーの脱炭素化は、12月に発足した3党連立政権の重要プロジェクトです。

2045年までにドイツをカーボンニュートラルにするという目標の一環として、政府は、再生可能エネルギーのシェアを現在の42%から2030年までに80%まで高めようとしています。

電力需要は今後高まるため、これは再生可能エネルギーを120〜150%増加することを意味します。

 

風力はその中心です。

政府は、2020年代の終わりまでに100GW以上の陸上風力発電を設置することを望んでいます。

古いタービンの撤去を考慮に入れると、これは8年間で現在の容量である56GWを2倍以上にすることを意味します。

法律により、ドイツの領土の2%が風力発電所用に確保されます。

「国の顔は変わるだろう」と、緑の党副党首のロベルト・ハーベックは語りました。

 

ハードルは目の前にあります。

ドイツの連邦制度では、2014年以降、風車は集落から風車の高さの10倍の距離を取って設置する必要があります。

ドイツの産業はバイエルンのような南部の州に集中していますが、風が強いのは北部です。

バイエルン州の州知事であるマルクス・ゼーダーは、この「風車の高さの10倍」ルールを廃止するのではなく、ドイツが南北の送電容量にもっと投資すべきだと考えています。

しかし、連邦政府は、すべての州が風力発電建設を実行する必要があると言います。

 

2番目の問題は、ドイツ全土のインフラ計画を詰まらせる官僚的なプロセスです。

訴訟を恐れる自治体では、審査に慎重になります。

環境アセスメントは幾重にも実行されます。

既存の風車をアップグレードすることでさえ、多くの場合、まったく新しい承認プロセスを意味します。

通常のアプリケーションには4年もかかり、更に時間がかかる事が予想されています。

 

次に、赤トビの問題があります。

これは、風車にぶつかって死ぬ猛禽類です。

鳥はドイツの法律で十分に保護されています。

より多くの風車はより多くの鳥の死を意味します。

それは、気候温暖化活動家と自然保護論者の間の「グリーンオングリーン」の緊張を強めるでしょう。

 

ドイツのエネルギー革命(エネルギー転換)は、原子力発電所の閉鎖のような間違った方向転換と費用のかかる失敗に満ちていました。

しかし、このプロセスを正しく行うことができれば、化石燃料から脱却する上で、他の民主主義国家にモデルを示すことができます。

しかしその道のりはそれほど平坦ではなさそうです。

ドイツは底力を見せられるか

国土の2%が風力発電のために必要とは驚きました。

風力発電は上述の鳥害の問題だけでなく、低周波音を生じることにより、人体にも悪影響をもたらすと言われています。

ドイツは原子力発電から脱却するという判断を行ったため、カーボンニュートラルの目標達成のためには、風力に頼るしかありません。

エネルギーコストを上げずにドイツが風力発電プロジェクトを計画通り実現させられるか否か、これからが正念場です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。