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NATOはウクライナを見殺しにするのか

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高みの見物

昨日、バイデン大統領は一般教書演説の冒頭ウクライナ情勢に触れ、「プーチンは大きな計算間違いを犯した。自由は独裁に常に勝つ。」と誇らしげに語り、共和党を含む超党派の拍手喝采を受けました。

しかし、米国は現在の状況を手放しで喜んでいてよいのでしょうか。

ウクライナでは激しい先頭が続き、既に2000名以上の犠牲者がウクライナ側に出ています。

米国は経済制裁と防衛機器の提供に留まり、軍隊はは一兵も送りません。

これは見方を変えれば、兵力で圧倒的に見劣りするウクライナを見殺しにして高みの見物を決め込んでいるとは言えないでしょうか。

昨日、ポーランドを訪れたジョンソン英国首相は、ウクライナ人記者から「何故NATOはウクライナ上空にno-fly zone(飛行禁止区域)を設定しないのか。あなたたちは怖がっているのか。」と詰め寄られ、回答に窮している様子が報道されました。

首相の最終的な回答は「飛行禁止区域を設ける事は大変困難だ。」でした。

聞きなれない飛行禁止区域とは何でしょうか。

この点について、英誌Economistが「What is a no-fly zone? - What sounds like a humanitarian measure is also an act of war」(飛行禁止区域とは何でしょうか - 人道的措置の様に聞こえますが実は戦争行為です)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ロシアの軍隊がキエフに接近し、ロケットがウクライナの都市に落下するにつれて、アメリカとその同盟国は介入するよう求められています。

2月28日、ウクライナの大統領であるゼレンスキーは、西側に「ウクライナに飛行禁止区域を設ける」様に求めました。

一部の影響力のある人々はこれに同意します。

「大国が主権国家を侵略し、征服しようとしているのに、あなたたちは座視して見守るつもりですか?」と2016年までNATO軍を指揮していた元アメリカの将軍フィリップ・ブリードラブは米誌Foreign Policyのインタビューで語りました。

 

空域の立ち入り禁止を宣言するという考えは古くからありました。

第一次世界大戦後、ドイツはベルサイユ条約の下でいかなる種類の軍事飛行も禁止されました。

しかし、現代の飛行禁止区域は、イラクの当時の独裁者であったサダム フセインが、彼の国の北部のクルド人と南部のシーア派を攻撃した1990年代にさかのぼります。

米英仏は、イラクの北部と南部に飛行禁止区域を宣言しました。

それを実施するために、彼らは1991年から2003年の間に約225,000回の出撃を行ないました。

同様の飛行禁止区域は、1993年から1995年の間にボスニア・ヘルツェゴビナで、2011年にリビアでNATOによって施行されました。

飛行禁止区域は、地上の軍事目標や民間人を攻撃するために戦闘機を使用することを防ぎます。

しかし、その人道的メリットには代償が伴います。

単に立ち入り禁止を宣言するだけでは十分ではありません。

自らの飛行機でその地域をパトロールし、敵の飛行機に発砲する準備をする必要があります。

安全なパトロールを確実にするためには、地上の防空システムを特定し、妨害し、破壊することを必要とします。

飛行禁止区域の現実は、それが戦争行為であるということです」とブリードラブ氏は指摘します。

 

イラクとリビアとの戦争とロシアに対する戦争は全く別物です。

飛行禁止区域には、「英国の戦闘機がロシアの戦闘機を撃墜することが含まれる」と、英国の国防大臣のベン・ウォレスは語りました。

彼は、それがNATOを紛争に引きずり込み、最終的には「ヨーロッパ全体でのロシアとの戦争」をもたらす可能性があると述べました。

NATOの事務総長であるイェンス・ストルテンベルグは、NATOは「地上でも空中でもウクライナに移動する意図はない」と述べました。

 

一部の人は、「 アメリカは、ウクライナ西部に部分的な飛行禁止区域を確立できる。」と主張します。

もしキエフが陥落した場合、ウクライナ西部の飛行禁止区域は、ゼレンスキー氏が西部の都市リヴィウに代替政府を設立するのに役立つかもしれません。

おそらくまさにその理由で、ロシアはこの案に関心を示していない様です。

ロシアはウクライナ上空を自由に飛ぶ事を望んでいます—そして西側はそれを止める手段はほぼありません。

危険な前例を作ることに

西側の経済制裁が功を奏して、ロシアがすんなり撤退してくれると良いのですが、そううまく行くでしょうか。

プーチン氏はいかなるコストを払っても、ウクライナを制圧しようと考えている筈です。

もし彼の試みが成功すると、これは大変危険な前例を作ることになります。

もし通常兵力で優勢な国が核も保有しており、隣国が核を持たず通常兵力でも劣勢な場合、今回のウクライナの様に隣国に侵略されかねません。

しかも援軍はロシアとの核戦争を恐れて介入しません。(先日のプーチン氏の核爆弾に関する言及は西側への警告だったと思われます。)

米国が世界の警察官だった時には考えられないシナリオが現実化しようとしています。

オバマ大統領の時代から、米国は内向きに向かい、海外への関与を減らそうとしてきました。

プーチン氏の様な策略家はこの米国の変化を見逃さなかったという事だと思います。

我が国に一大事が起こった時に、米国は本当に助けに来てくれるのでしょうか。

ウクライナを外野から応援している米国に一抹の不安を感じざるをえません。

当面、ウクライナの市民の犠牲を増やさないために、西側は経済制裁だけでなく、停戦合意の実現のため、積極的な調停を行う必要があると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。