保守派候補5年ぶり勝利
先日行われた韓国の大統領選で、前検事総長の尹錫悦氏が新しい大統領に選ばれました。
なんと与党候補の李在明前京畿道知事と得票率で1%以下の大接戦を制しての勝利でした。
新しい韓国大統領の政策なかんずく対日政策はどの様に変わるのでしょうか。
内外のメディアがこの点に関して記事を発信していますが、米国の外交誌Foreign Affairsに与野党の候補がいずれも自らの政策に関して寄稿しています。
彼らの寄稿の中から、日本に関する部分を抜粋して本日はお届けしようと思います。
Foreign Affairs寄稿文抜粋
尹錫悦新大統領の主張
韓国は身近な問題のみならず、広い地域でも主導権を発揮すべきです。
韓国は、変化する国際環境に受動的に対応するのではなく、自由で開かれたインド太平洋を積極的に推進すべきです。
韓国は、日米豪印戦略対話ワーキンググループに積極的に参加し、段階的に多国間地域協力イニシアチブに参加することを検討し、日米との三国間安全保障調整に参加する必要があります。
日本との二国間関係も再考が必要であり、韓国政府は日本政府との関係を正常化することの戦略的重要性を認識すべきです。
韓国の金大中大統領と日本の小渕恵三首相が1998年に発表した共同宣言の協力精神を復活させ、両国は歴史、貿易、安全保障協力をめぐる紛争の包括的な解決策を模索すべきです。
とりわけ、韓国はシャトル首脳会談を再開し、両国間の信頼を回復する必要があります。
韓国はまた、協力と紛争の問題について日本と包括的な交渉を行うために、ハイレベルの交渉チームを設立すべきです。
信頼と自信を取り戻すために、両国は国境を越えて、特に韓国と日本の若者の間で人と人との交流の範囲を拡大する必要があります。
李在明前京畿道知事の主張
次期韓国大統領が取り組む必要のある重要課題の一つは、北東アジアの民主主義国家の仲間であり、主要な貿易相手国である日本との関係です。
日本政府が帝国の過去を手放すことを望まないことが、日米間の三国協力を妨げ続けていることは残念です。
大韓民国と日本は1965年に関係を正常化して以来、第二次世界大戦中の日本の朝鮮植民地化の遺産と朝鮮人の徴兵について、経済協力とは別の道で議論することにより、健全な二国間関係を構築することができました。
二国間関係の最高点は、1998年の韓国の金大中大統領と日本の小渕恵三首相の共同宣言でした。
日本は前例のない反省を表明し、植民地支配に対して心からの謝罪を表明しました。
これは、文化的および人と人との交流の道を広げることにより、二国間関係に新しい章を開きました。
しかし、2018年、韓国の最高裁判所が第二次世界大戦中の韓国の強制労働の使用に対して日本企業が賠償金を支払う必要があると決定した後、東京は3つの主要な化学物質(フォトレジスト、フッ化水素、フッ素化ポリイミド)に報復的な輸出規制を課しました。
韓国はポリイミドをハイエンドディスプレイを使用するテレビやスマートフォンに使用しています。
これは歴史的な恨みを解決するための経済的強制の衝撃的な行為であり、これによって日韓関係が最悪の関係となりました。
韓国政府と韓国企業は、日本以外の国々からハイテク部品の代替ソースをすばやく見つけました。
この機敏な行動は、貿易戦争が半導体の世界的なサプライチェーンに損害を与えることを防ぎました。
両国は、経済的、社会的、外交的協力を推進する一方で、悲劇的な歴史的不正行為の遺産を克服するために誠意を持って努力することを約束した小渕恵三宣言の精神を振り返る必要があります。
日韓関係の明日は未来志向で
こうやって両者の主張を比べてみますと、両者とも1998年の小渕恵三首相、金大中大統領間で取り交わされた共同宣言の精神に立ち戻る事を主張していますが、尹錫悦新大統領の方がシャトル外交を復活させ、包括的な問題解決のためにハイレベルの交渉チームを結成を提案するなど二国間の問題解決により積極的な事が窺えます。
暗い過去を抱えた両国間の問題解決は容易ではありませんが、韓国との関係は日本にとっても極めて重要ですので、新大統領と胸襟を開いて交渉を進める必要があると思います。
それにしても、韓国の大統領候補が二人とも、米国を代表する外交誌に寄稿している事には驚きました。
日本の自民党総裁選の候補者が米国の主要メディアに寄稿した例があったでしょうか。
韓国政治家の行動を見ると、韓国が如何に外を向いていて、我が国が内向きかがわかります。
国際世論を形成することは、外交を有利に進める上で極めて重要です。
特に米国の指導者たちを味方につけるか否かは、その主張が正しいか否かに拘らず、勝敗を決めてしまいかねません。
韓国の政治家はここのところを見落としていない様です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。