ロシアに一目置かれるトルコ
先日、トルコのリゾート地アンタルヤでロシア・ウクライナ外相会談がトルコのアレンジの下行われましたが、昨日プーチン大統領はトルコのエルドアン大統領と電話会談を行った様です。
この会談について、英国のBBCが一報を報じました。
「Ukraine conflict: Putin lays out his demands in Turkish phone call」(ウクライナ紛争:プーチン氏はトルコへの電話で彼の要求事項を示した)と題する記事をご紹介したいと思います。
BBC記事要約
トルコは、ロシアとウクライナとの架け橋となるように細心の注意を払って自国を位置付けています。
これは成果を上げているようです。
木曜日の午後、プーチン大統領はトルコのエルドアン大統領に電話をかけ、ウクライナとの和平協定に関するロシアの正確な要求が何であるかを伝えました。
電話が終わってから30分以内に、エルドアン大統領の主要な顧問であるイブラヒム・カリンがインタビューに応じました。
カリン氏は、両首脳の電話会談に一部始終を聞いていました。
ロシアの要求は大きく2つのカテゴリーに分類されます。
カリン氏によると、最初の4つの要求は、ウクライナが満たすのはそれほど難しいことではありません。
その中で最も重要なのは、ウクライナが中立であるべきであり、NATOへの加盟を申請すべきでないことを受け入れることです。
ウクライナのゼレンスキー大統領はすでにこれを認めています。
このカテゴリーには他にも要求があり、それは主にロシア側の顔を立てる目的があるようです。
ウクライナは、ロシアへの脅威ではないことを保証するために軍縮プロセスを経なければならないでしょう。
ウクライナではロシア語を保護する必要があります。
そして、非ナチ化と呼ばれるものへの対処も必要です。
これは、彼自身がユダヤ人であり、その親戚の何人かがホロコーストで亡くなったゼレンスキー氏にとっては非常に不快ですが、トルコ側はゼレンスキー氏がこれを受け入れるのは簡単だと信じています。
おそらく、ウクライナがあらゆる形態のネオナチズムを非難し、それらを取り締まると約束するだけで十分でしょう。
第二のカテゴリーはより困難です。
プーチン氏は電話で、これらの問題について合意に達するためには、ゼレンスキー大統領との間で直接交渉する必要があると述べた様です。
ゼレンスキー氏はすでに、ロシア大統領と一対一で交渉する準備ができていると述べています。
カリン氏は詳細に触れませんでしたが、、ロシアはウクライナにウクライナ東部を手放せと要求している様です。
これは簡単ではありません。
もう1つは、ロシアが2014年に違法に併合したクリミアをロシアのものだと正式に受け入れることを要求するというものです。
これもウクライナが受け入れるのは難しいでしょう。
ロシアはクリミアを獲得する法的権利を持たず、共産主義の崩壊後ロシアは、クリミアがウクライナの一部である事を公に認めているのです。
プーチン氏自身が病気である、あるいは精神的にバランスを欠いているという推測もありました。
カリン氏はプーチン氏について何か異変を発見したでしょうか?
まったくそうではない、と彼は答えました。
プーチン氏の話した事はすべて明快で簡潔だったそうです。
しかし、彼がネオナチズムに対する輝かしい勝利としてウクライナとの合意を提示したとしても、彼のロシア国内での立場は弱まるに違いありません。
彼がひどく行き過ぎたことに気付く人は今後増えるでしょう。殺されたり捕らえられた兵士の話はすでに広がっています。
トルコは調停役として適格か
今回プーチン氏はエルドアン氏に和平の条件を明かしました。
何故トルコが調停役として浮かび上がってきたのでしょうか。
誤解のない様にご説明しますと、ロシアとトルコは同盟国でも何でもありません。
この2カ国は歴史的に見ると寧ろ敵対してきました。
以前セントペテルスブルグを観光した際に、ガイドから「ロシア帝国とオスマントルコは何度戦ったかご存知ですか。」と聞かれて、クリミア戦争と露土戦争の二回ですかと答えたら、「正しくは11回です。」との答えが返ってきました。
最近もシリア、リビア、ナゴルノ=カラバフと悉く、敵味方に分かれて戦っています。
ウクライナにもドローンなどをトルコは提供していますので、ロシアと犬猿の仲にあってもおかしくないのですが、トルコは一目置かれている様です。
これはトルコがNATOの一員であり、欧米とのパイプがある一方で、対ロシアの経済制裁に加わらず、ロシアから見ると欧米とロシアの間に立っている様に見えるからだと思います。
ヤクザの親分が喧嘩の手打ちをしている様に見えますが、まさにその通りで、ヤクザの調停においても調停役が強力で、こいつを怒らせると厄介な事になると思わせなければ、調停は成功しません。
今回調停に乗り出したトルコはロシアから一目置かれている存在だけにひょっとするとうまく行くかも知れません。
欧米も日本も参加する様な調停会議がイスタンブールで行われたら、それは歴史的快挙となるでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。