MIYOSHIN海外ニュース

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複数の紛争に足を突っ込んだ米国

泥沼化する紛争

ウクライナ戦争は長期戦の様相を呈してきました。

パレスチナ紛争も先は見通せません。

この二つの紛争に深入りした米国は、台湾有事等などアジアで紛争が生じれば、3つの異なった地域の紛争に同時に対応する必要が生じます。

今の米国にそれは可能でしょうか。

この点について米誌Foreign Policyが「America Is a Heartbeat Away From a War It Could Lose」(敗北するかもしれない戦いに直面する米国)と題した論文を掲載しました。

著者のA. Wess Mitchell氏はトランプ政権時代の国務省ユーラシア問題担当次官補です。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy誌記事要約

米国は負ける可能性のある世界大戦に引き摺り込まれる一歩手前です。

既に戦略的に最も重要な3つの地域のうち2地域で、米国の関与が必要な深刻な紛争が発生しています。

中国が台湾への攻撃を決定した場合、米国を3つの戦線で巻き込む世界戦争にエスカレートする可能性があります。

時は差し迫っており、米国の立場を改善するための選択肢はあるものの、それらはすべて真剣な努力とトレードオフを避けられません。

米国と同盟国は緊急に行動する必要があります。

 

米国の苦境をこれほど厳しい言葉で説明すると、多くの読者は警戒心を抱くかもしれません。

米国は長い間地球上で最も強力な国でした。

二度の世界大戦に勝利し、ソ連を破り、今でも世界最高の軍隊を保有しています。

過去1年半にわたり、ウクライナを強力に支援する米国がロシアに決定的な敗北を与え、米国は東アジア地域に軸足をシフトする事が期待されていました。

しかし、その戦略は日に日に実行可能ではなくなりつつあります。

ロシアがウクライナでの長期戦争に備え動員を行い、パレスチナで新たな戦線が開かれる中、武装化を進める中国が台湾に手を出そうとする誘惑は増大するでしょう。

すでに中国政府は、米国が三つの地域で生じる危機に対処するのに苦戦するであろうことを承知の上で、東アジアで米国政府を試そうとしています。

もし戦争が起こった場合、米国はいくつかの要因が米国に不利に働いていることに気づくでしょう。

 

それらの要因の 1 つは地理です。

今日の米軍は 2 つの主要なライバルに対して同時に戦争を行うように設計されていません。

中国が台湾を攻撃した場合、米国はウクライナとイスラエルへの支援を継続しながら台湾に対応するのは難しいでしょう。

これは米国が衰退しているからではありません。

これら 3 つの地域すべてで強くなければならない米国とは異なり、敵対国である中国、ロシア、イランはそれぞれ、自国の地域で強くなれば目的を達成できるからです。

米国はこれまでに同時に複数の地域で戦争を戦ったことがあります。

過去の紛争では常に相手を圧倒することができました。

それはもはや当てはまりません。

中国海軍は艦艇の数ではすでに米国を上回っており、毎年フランス海軍全体(約130隻)と同等の規模で増加しています。

これに対し、米海軍は今後10年間で75隻の艦艇増強を計画している。

 

米国の弱点は資金面でもみられます。

過去の戦争では、米国は敵を上回る支出をすることができました。

第二次世界大戦中、米国の国家債務対GDP比は、GDPの61パーセントから113パーセントへとほぼ2倍に増加しました。

一方、米国は今日、すでにGDPの100パーセントを超える債務を抱えて紛争に突入することになります。

第二次世界大戦と同程度の拡大率を想定すると、債務がGDPの200パーセント以上に膨らむ可能性があります。

この規模の債務負担増は米国の経済と金融システムに壊滅的な結果をもたらす危険があります。

 

世界的な紛争は別の危険をもたらすでしょう。

米国の2つのライバル、ロシアとイランは主要な産油国です。

ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すると、原油価格が1バレル当たり100ドルを超え、インフレ圧力が大幅に高まる可能性があります。

中国は米国債の主要保有国であり、中国による国債売却は米国債の利回りを上昇させ、経済にさらなる負担を与える可能性があります。

アメリカ人はエレクトロニクスから住宅建築資材に至るまで、あらゆるもの不足に直面すると考えるのが自然です。

 

これらすべては、世界規模の紛争で米国が被る可能性のある人的コストと比べれば微々たるものです。

敵国の一部は、米国本土に到達できる通常兵器と核戦力を保有しています。

他の国は、アメリカ本土に対するハマス型のテロ攻撃を行う能力を持っていますが、アメリカ南部国境の穴だらけの状態を考えると、その方が容易かもしれません。



米国は、紛争を阻止すると同時に、紛争が起こった場合に国民が確実に備えられるよう、このシナリオに向けてあらゆる準備をすべきです。

戦争への準備強化は、侵略の方が危険であるという明確なシグナルを敵国に送ることになります。

 

米国にとって当面の優先事項は、ウクライナ、イスラエル、台湾が自国を守るために必要な武器を確保できるようにすることです。

米国が防衛産業基盤を整備しない限り、それは不可能です。

ウクライナ戦争の開始以来、米国の総防衛生産量はわずか10パーセントしか増加してません。

状況は十分に深刻で、米国政府は国防生産法を発動し、一部の民生産業を軍事目的に転換する必要があるかもしれません 。

米国政府が国防費を増額しなければならないのは明らかです。

バイデン政権の国防費の横ばい化、軍事費を気候変動政策や社会福祉関連支出と一致させるという主張は、間違ったアプローチです。 

米国議会の誰も、高齢者の有権者に年金を削減するとは言いたがらないのですが、自分の子や孫が適切な武器もなく危険な戦場に派遣される可能性がある事を有権者に伝える必要があります。

米国の同盟国も、新たな方法で強化する必要があります。

ヨーロッパのNATO加盟国で、GDPの少なくとも2%を防衛に費やすという約束を履行しているのは3分の1にも達しません。

 

我々のTo do listはどれも簡単なものではありません。

しかし、アメリカとその同盟国は、世界規模の紛争が起こった場合に備えができていないことにならないよう、今からアクションを起こす必要があります。

米国外交政策の是非

上記記事にある通り、米国は冷戦終結後、大規模な戦力縮小を行い、今や世界で複数の紛争に同時に対応できなくなっています。

米国の世界覇権を脅かすライバルとして中国が急速に台頭する中、中国に対して自国の持つリソースを集中すべきである事はオバマ政権時代から米国政府は認識していました。

今のバイデン政権も中国を最も危険なライバルとみなしています。

その様な認識をしていながら、何故米国はウクライナに深入りしたのかと筆者としては問いたくなります。

ウクライナへの米国の支援は、中国と様々な問題を抱えているロシアを中国側に押しやってしまいました。

ウクライナ戦争の真の勝者は中国と言われています。

ロシアが一方的にウクライナを侵略したから、米国は支援せざるを得なかったと理解されている方も多いと思いますが、ロシアにはロシア側の理由があったと思います。

ロシアが侵略したのは、ウクライナがNATOに加盟するのを阻止するためであり、米国はこの戦略(NATOの東方拡大)を強力に推し進めていました。

2008年のNATOブカレスト会議で当時の米国大統領だったブッシュ大統領がウクライナとジョージアのNATO加盟を合意文書に盛り込もうとした際に、メルケル独首相は「ウクライナのNATO加盟はロシアに対する宣戦布告と同義だ」と強く反対したと伝えられています。

ウクライナがNATOに加盟すれば、NATOの核ミサイルがウクライナに配備されることになり、そうなればロシアにとってみれば喉元に匕首を突きつけられる様なものです。(キューバ危機でソ連の核ミサイルがキューバに運び込まれるのを米国が阻止した事件を思い起こさせます。)

米国は上記の論文が主張する様に、軍事力によってライバル国を押さえ込もうとする傾向が目立つ様に思います。

軍事力はもちろん大事ですが、ライバル国がレッドラインと主張するもの(ロシアの場合ウクライナのNATO加盟)に一定の配慮を行い、外交力で紛争を未然に防ぐ事が重要ではないかと思います。

ウクライナとパレスチナ問題で米国が手一杯の状況から中国は漁夫の利を得ています。

 

最後まで読んで頂き有り難うございました。