日本は同盟国ではないのか
バイデン大統領が下した日鉄のUSステール買収阻止の決断は大きな波紋を広げました。
筆者もこの判断には驚かされました。
最大のライバル中国に対抗するのに最も重要な同盟国である筈の日本を安全保障上の理由からあたかも敵国の様に扱う米国のこの仕打ちに呆れたというか、結局その程度にしか日本のことを考えていないんだなと感じてしまいました。
日本のメディアはもちろんこのニュースを大きく取り上げていますが、米国でもこのバイデン氏の判断は否定的に評価されている様です。
そんな中から二つの記事をご紹介したいと思います。
一つ目は米Bloombergの「Biden’s Steel Move Is No Way to Treat an Ally」(バイデン氏の鉄鋼会社買収に関するお粗末な同盟国の扱い)と題した記事です。
Bloomberg誌記事要約
日本製鐵によるUSスチール買収を阻止したバイデン大統領の決定を最も象徴しているのは、発表時に起きた不手際だ。根拠のない国家安全保障上の理由でこの買収を止めた大統領令を伝えた文書の表題は当初、中国の暗号資産マイニング企業による米空軍基地付近の土地取得問題だった。
政権のスタッフが以前の大統領令をコピー&ペーストして作成した文書である可能性が濃厚だ。
この中国企業の対米投資案件は却下されていた。
この出来事で、理解に苦しむ買収阻止について多くの日本人は一つの考えに至るだろう。
つまり、米国にとって、日本は中国と同じなのかという疑念だ。
米国にとって恐らく最も重要な同盟国である日本を、激しく対立する国と同じように扱うことを正当化する理由はほとんどない。
政権末期の不可解な決断
理解に苦しむのは何故この時期(大統領の任期が殆ど終わりかかっている)に、バイデン氏が買収にブロックをかけたのかという点です。
大統領選挙期間中に労組の票が欲しいから反対を表明したのでしょうが、もう選挙は終わり、今更買収にブロックをかけても、票が戻るわけではありません。
考えられるのはこの買収のブロックをかけた功績をバイデン氏は自分の手柄にしたかったという可能性です。
政治家のエゴの方が日本との同盟関係よりも優先されたという事でしょうか。
しかし諦めるのはまだ早いかもしれません。
このバイデン氏の最後の決断がひょっとするとトランプ氏の考えに変化を生むかもしれないからです。
トランプ氏は既にこの買収に反対を表明していましたが、既に選挙は終わり、もはや労組の票は不要となっています。
彼はもともと日本企業の米国への投資を強く呼びかけていましたから、心変わりする可能性はあると思います。
この点について共和党の上院院内総務を長く務めたマコネル氏がウォール・ストリートジャーナル(WSJ)に「Nippon Steel isn’t enemy」(日本製鐵は敵ではない)と題した意見書を寄稿しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ記事抜粋
日本製鐵によるUSスチール買収計画にバイデン氏が介入したことは、米国の経済・安全保障上の利益よりも巨大労働組合寄りの政治を優先させるものだ。
しかし、それを公に正当化する上で、バイデン政権はわれわれが正反対のことを信じるのを期待しているようだ。
それは、バイデン氏の行動がなければ、この買収計画が「米国の国家安全保障を損なう」恐れがあるということだ。
日本は、バイデン政権がなぜ米国の雇用と製造業への大型投資を安全保障上のリスクと考え、米国の最先端の軍事技術を日本が購入することについてはそう考えないのかを疑問に思う公算が大きい。
外国からの直接投資は米国社会を豊かにし、海外の友好国やパートナー国と絆を深める。
バイデン氏は「フレンドショアリング(企業の調達先を中国から友好国に切り替える対応)」を貿易・経済競争面での自身の中心政策に掲げていたにもかかわらず、もっと好ましい内容の買収計画の中止を命じた。
この買収は、米国内の雇用を増やし、USスチールの生産施設を近代化するための何十億ドルもの投資と、米国の鉄鋼生産の対中競争力を高めるチャンスをもたらす「オンショア」の成果になるはずだった。
トランプ次期大統領はこれを失策だと認め、逆の行動を取ることができる。
トランプ政権は、インド太平洋地域の同盟諸国との協調を進め、対米投資を促すべきだ。
主要な敵対勢力がもたらす脅威は、米国が単独で対処するには大き過ぎる。
トランプ氏の心変わりはあるか
マコネル氏の主張は至極もっともだと思います。
トランプ氏がマコネル氏に同調して欲しいと思いますが、気がかりなのはこの二人同じ共和党員ですが仲が悪い点です。
それにしても、バイデン氏政権末期の幕引きはお粗末です。
自分の息子ハンター氏や凶悪犯罪人に恩赦を与えた事も米国では厳しく非難されている様です。
立つ鳥跡を濁さずという諺は米国にはないのでしょうか。
最後まで読んで頂き有難うございました。