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中国のアキレス腱を狙うトランプ政権

トランプ政権の大統領令ラッシュ

トランプ大統領は就任後矢継ぎ早に大統領令を大量に発令しましたが、その中に鉄鋼とアルミ製品に一律25%の輸入関税をかけるというものがあります。

これはおそらく鉄鋼大国の中国を狙ったものと思いましたが、米国の鉄鋼輸入国を調べてみると1位メキシコ、2位ブラジル、3位カナダと中国は上位に入っていません。

なんと中国の米国への鉄鋼製品輸出は89万トンで、これは中国の鉄鋼輸出全体(1億1千万トン)の0.8%しかない事がわかりました。

それでは今回の鉄鋼、アルミ製品への関税は中国と関係ないものなのでしょうか。

どうもそうではなさそうです。

米誌Foreign Policyが「What Trump’s Steel Tariffs Mean for China」(トランプ大統領の鉄鋼関税が中国に及ぼす影響)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Forein Policy記事要約

間接的に中国を狙う関税

月曜日、トランプ米大統領は、中国を狙った長年の貿易戦争の一環として、米国への鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税を課すと発表した。

矛盾するのは、トランプ政権とバイデン前米大統領の下で課された関税により、中国はすでに米国に鉄鋼やアルミニウムを直接輸出することがほとんど無くなっている事だ。

 

しかし、中国が世界市場を支配していること、さらに国内の過剰生産とデフレが重なり、他の国々は今や安価な中国製金属であふれている。

中国は世界の鉄鋼の54%、世界のアルミニウムの約60%を生産している。

その一部は、ベトナムなどの国で再パッケージ化されて、依然として米国に流れ込んでいる。

 

中国の生産により、カナダとメキシコは自国の金属を輸出しながら、国内需要を満たすために中国製の安い鉄鋼を使用することもできる。

つまりトランプ政権の論理は、中国が第三国経由で関税を逃れているのであれば、中国に本当にコストを課す唯一の方法は、バイデン政権のアプローチとは異なり、すべての国に関税を課ということなのだ。

 

しかし、中国鉄鋼業の巨大勢力に打撃を与えるのは依然として難しいかもしれない。

何年も前に導入された補助金のおかげで、中国国内で依然として過剰生産が続いている。

2020年まで、中国の急成長中の不動産セクターは鉄鋼需要を刺激した。

しかし、不動産バブルは収縮し始め、国内の鉄鋼需要もそれに追随した。

中国の鉄鋼生産は、価格が下落しているにもかかわらず、経済刺激策もあって、コロナ後も増加し続けた。

中国の経済危機による需要の急落により、昨年は生産がわずかに減少した。

しかし、価格は依然として過去最低であり、企業は主に海外で販路を見つけている。

 

コロナ前に生産統合のための巨大合併など、過剰生産能力への取り組みがすでに行われていたことを考えると、中国政府が鉄鋼業界への支援を続けているのは奇妙に思えるかもしれない。

しかし、中国の鉄鋼産業の大半は国営であり、政府に依存し、政府に対して影響力を行使している。

この産業が直接雇用しているのは約180万人に過ぎないが、街全体が工場に依存している。

そのため、鉄鋼業の雇用削減は政治的に微妙な問題となる。

鉄鋼とアルミニウムは依然として産業と軍事の両方で力を持っている。

米国市場への間接的なアクセスを失ったとしても、中国が世界の金属市場を掌握し続ける可能性は高そうだ。

トランプ大統領の狙い

トランプ政権が中国など敵対する国だけでなく、一律に高い関税をかけるとはけしからんという論調も見られます。

しかし、中国からの直接輸入品だけを対象にしていると、第三国経由入ってくる中国製品は網の目から漏れてしまう、一律に関税をかければ、世界の鉄鋼、アルミ製品の半分以上は中国製品なのだから一番困るのは中国だというのがトランプ大統領の見立てなのでしょう。

これは一見暴論の様に聞こえますが、中国にとっては一番嫌な一手だと思います。

トランプ大統領は明らかに中国の台頭を抑え込み、米国の覇権を維持する事が最重要な政策目標になっている様です。

彼はビジネスマンですから相手の弱点を見つけることに長けています。

中国の弱点は経済だと見抜いているものと思われます。

特に不動産バブルがはじけ、国内需要が急落した中国が輸出市場に活路を見出そうとしている矢先のこの高関税はまさに中国のアキレス腱を突いていると思います。

友好国であるはずの日本などお構いなしのこの一手ですが、トランプ氏自身が主張している様に高関税が嫌なら米国に出資しろ、高関税のおかげで米国で大儲けできるぞという事なんでしょう。

日本製鐵の問題で今日米関係も揺れていますが、理解できない安全保障の問題を持ち出してUSスティールの買収をブロックした前政権と違い、トランプ大統領は買収はダメだが投資は歓迎すると言っています。

この話に乗るのもありの様な気がします。

でも米国って恵まれてますね。

こんな事他の国がやったら総スカンをくうのは間違いないですが、米国が言えば、他の国は渋々従うしかないのですから。

世界最大の市場の魅力は絶大です。

 

最後まで読んで頂き有難うございました。