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成るかトルコとクルドの関係正常化

国を持たない最大の民族ークルド族

トルコのクルド問題はあまり日本では話題になりませんが、同国が抱える安全保障上の問題で最も深刻な問題といっても過言ではないでしょう。

トルコにはクルド人が1500万人以上もいて、トルコの人口の2割程度を占めています。

そんなに多いと目立つでしょうと言われるかもしれませんが、そもそも多民族国家のトルコでは全く目立ちませんし、見た目では区別ができません。

テロ組織としてPKK(クルディスタン労働者党)は有名ですが、トルコに住むクルド人の大多数は穏健派であり、中にはシムシェック財務大臣の様に重要閣僚を務めている人もいます。

しかし一部のクルド系過激派は過去に大規模なテロを行い、数十年に亘り、トルコ政府との間で大規模な闘争を繰り広げてきました。

一般人にも多くの犠牲者が出ました。

クルド人は自分の国を持たない最大の民族と言われ、トルコだけでなくシリアやイラクにもまたがって3千万人を上回る人口を有しています。

トルコの過激派組織PKKは国境を超えたシリアで活動するクルド系のSDFという武装組織と気脈を通じており、トルコはこのSDFにも国境を超えて攻撃を行ってきました。

しかしこのSDFはシリアのアサド政権とも対立していた事から、米国が軍事援助を行っていましたから話がややこしくなってきます。

アサド政権打倒という目標では米国とトルコは一致していたのですが、トルコ政府がテロ組織と認定するSDFに米国が軍事援助をした事からトルコと米国の関係はギクシャクしました。

この問題に終止符を打ったのはアサド政権の崩壊でした。

アサドがいなくなれば、米国もSDFを支援する理由がなくなります。

このタイミングでトルコ政府もPKKに武装蜂起を呼びかけ、PKKがこれに応じて武装蜂起を行った事から、トルコ政府とPKKの和解が進みました。

5月30日のロイター通信がSDFとトルコ政府の和解の可能性について報じました。

かいつまんでご紹介したいと思います

ロイター記事要約

シリア北東部を実効支配するクルド主導の武装勢力「シリア民主軍(SDF)」の司令官マズルーム・アブディ氏が、トルコとの直接的な接触を持ち、関係改善に前向きであることを報じました。

アブディ氏は、トルコのエルドアン大統領との会談の可能性も否定せず、将来的な対話の余地を示唆しています。

この発言は、14年間にわたるシリア内戦において、SDFとトルコ軍およびトルコ支援の反政府勢力が激しく対立してきた歴史を踏まえると、外交的な転換点となる可能性があります。

トルコ政府は、SDFの中核をなすクルド人武装組織を、最近解散を表明したクルディスタン労働者党(PKK)と同一視してきました。

アブディ氏は、地域放送局Shams TVのインタビューで、トルコとの直接的および仲介者を通じたコミュニケーションが存在すると述べ、「これらの関係が発展することを望んでいる」と語りました。

また、SDFとトルコ軍との間で2か月間の停戦が続いており、これが恒久的な平和につながることを期待していると述べています。

エルドアン大統領との会談については、現時点で具体的な計画はないものの、「反対ではない」とし、将来的な関係構築に前向きな姿勢を示しました。

一方、トルコの外交筋は、アブディ氏とトルコ高官との会談が提案されたとの報道を否定しています。

さらに、アブディ氏は、SDFがイスラエルと関係を持っているとの非難を否定し、「我々はイスラエルと関係を持っていない」と明言しました。

また、SDFはすべての隣国との良好な関係を支持していると述べています。

アブディ氏は、3月にシリアの暫定政府と合意を結び、北東部シリアを国家機関に統合することに合意しました。

しかし、エルドアン大統領は、SDFがこの合意の実施を遅らせていると非難しています。

このような動きは、シリア内戦後の地域再編において、クルド人勢力とトルコとの関係が新たな局面を迎えていることを示しています。

SDFとトルコとの直接的な対話が進展すれば、地域の安定化に向けた重要な一歩となる可能性があります。

存在感増す地域大国トルコ

まだまだ予断を許しませんが、クルドの過激派組織との間で本格的な和解が成立すれば、トルコにとってみれば安全保障上の脅威が大幅に軽減されます。

中東や欧州地域に多くのリソースを割きたくない米国と地域大国として存在感を示したいトルコが、シリアに関して握った可能性があります。

両国間の合意はウクライナでも今後ありえます。

ウクライナには将来平和維持軍が展開されると思われますが、米国は欧州よりもトルコがこの役割にふさわしいと考えている節があります。

インフレはなかなか収まらず、経済面ではぱっとしないトルコですが、政治外交面ではここのところ追い風が吹いている様です。

 

最後まで読んで頂き有難うございました。