エスカレートの瀬戸際
イランがイスラエルを急襲してからはや1週間が過ぎようとしていますが、未だに収束の気配は感じられません。
それどころかイラン中部の地中深くに建設された核燃料製造工場を米国の特殊爆弾で空爆しようかという議論さえ出てきています。
米国が参戦すれば一気に戦火は拡大しますが、トランプ大統領はどの様な判断を下すでしょうか。
この点について米紙ウォール・ストリートジャーナルが「MAGA’s Misguided Isolationists」(MAGAの誤った孤立主義者たち)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ記事要約
米国では「イランを巡るMAGA派の内戦」と見なされる論争がメディアで活発に報じられており、とりわけ「孤立主義者(isolationists)」とされるグループの主張が目立っている。
こうした孤立主義者は、イラクやアフガニスタンでの教訓を挙げ、「すべての米軍介入は泥沼化への滑り台だ」と警告し、イランに対する強硬姿勢に反対している 。
最新の報道では、MAGA内部で激しい「内戦」が進行中だが、特に強硬派の孤立主義者たちが強く主張しているにもかかわらず、趨勢はむしろ彼らに逆風が吹いていると指摘されている。
言い換えれば、彼らの論調はマスメディアでは拡声されているが、実際の外交判断には従来の勢力が影響を強く保っている。
孤立主義者は、イラク・アフガニスタン戦争での経験から「米軍介入は高コストでリターンが乏しく、国益を損なう」とし、イランの核保有や中東での影響力拡大に対しても、外交・制裁を軸に「米軍派遣には慎重すべき」と主張している 。
これには「米軍の海外駐留が逆に米国の信用と資源を消耗させる」という認識が根底にある。
一方で、イランを核保有国として黙認すれば、中東の不安定を助長し、その結果として米国の防衛・同盟関係に悪影響が及ぶとの見方が強硬派にはある。
イランに関して軍事的威嚇を避ければ、その“隙間”を敵対的な体制や非国家主体が突いてくる可能性があり、地域の核拡散やテロ活動の活性化につながるとの懸念がある。
重要な見解として、孤立主義者が唱える路線そのものが、「米国の同盟国や地政学的優位を損なうリスクも孕む」と警戒されている。
現在のMAGA内部では、「介入回避」を求める孤立主義者と、「対外強硬」または「選択的介入」を支持する現実主義的強硬派が拮抗している。
メディアでは孤立主義者の声が際立っているが、実際の政策決定には今後も慎重なバランス調整が続くだろうという見方が強い。
注目すべきトランプ大統領の決断
このWSJの記事で驚かされるのは、イランに対する米国における強硬論の根強さです。
America Firstで孤立主義を深める米国人はけしからんと言わんばかりです。
筆者もイランが最終的に核兵器を手にいれるために時間稼ぎを行っているという見方には同意しますが、イスラエルに加担してイランに対して戦争を行うべきとは思いません。
トランプ大統領もおそらくはバンカーバスターを使った核原料濃縮工場の空爆には踏み切らないと思います。
そもそも地下80Mにあるといわれる工場を空爆しても成果が得られるかどうか疑わしい。
米国が参戦すれば戦火は一気に拡大し泥沼化するおそれがあり、America Firstの支持者の多くを失いかねません。
トランプ氏はビジネスマンですからそんなリスクを取ることはPayしないと思うはずです。
そもそも核燃料工場を破壊してもイラン政府がこのまま存続すれば、必ずもっと攻撃が難しい場所での核燃料圧縮を試みるでしょうから、根本的な問題は解決されません。
トランプ政権は東アジアに重点的に回すべきリソースを中東で浪費すべきではないでしょう。
イランは大国でしぶとい国です。
この国と戦火を交える事はお勧めしません。
最後まで読んで頂き有難うございました。