
ロシア資産を横取りする米国
ウクライナは最近欧州から機器を買い漁っています。
今月フランスからラファール戦闘機を100機購入すると発表し、そのわずか数週間前にはスウェーデン製グリペン戦闘機を最大150機購入する同様の契約を明らかにしました。
ウクライナ政府の発表の裏には明白な目的があります。
ウクライナは最近、EU諸国に対し、EUがロシアの中央銀行の資産を最終的に接収した場合、それを有効活用する姿勢を明確に示して、EUの関心を惹こうとしているのです。
しかしロシア資産の活用に対して米国政府が最近異なった方針を打ち出した為、欧州に激震が走っています。
先日米国政府が発表したウクライナ和平に関する提案について、メディアは領土の割譲やNATOへの加盟禁止などに焦点をあて、ロシア資産の利用に関してはほとんど論評がありません。
しかしトランプ政権のロシア資産活用に関する提案は驚くべきものです。
この提案について米誌Foreign Policyが「The U.S.-Russia Plan Gives Trump a $300 Billion Signing Bonus」(米ロ合意によりトランプ氏が受け取る3000億ドルのボーナス)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Foreign Policy記事要約
現在、欧州の機関などに凍結されている ロシア中央銀行の資産は、おおよそ 3000億ドル規模 (45兆円)に達するとされる。
これらの資産は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、西側各国が凍結したものだ。
当初、多くの欧州諸国や支援国は、この資産をウクライナの戦争被害の賠償、及び戦後復興のために転用する可能性を検討していた。
具体的には、資産を没収せずに「賠償ローン」という形でウクライナに貸し付け、補償が実現すれば返済義務を負わせる──という構想がまとまりつつあった。
その中で登場したのが、トランプ大統領が関与したとされる米露主導の和平案(「28ポイント計画」)だ。
この和平案は、戦争終結と復興の枠組みを示すものとして提示されたが、その「資金の使い道」が非常に問題視されている。
具体的に、トランプ/米露和平案では以下のような資金割り振りが提案されている:
- 凍結されたロシア中央銀行資産のうち、 約1000億ドル を使ってウクライナ復興に投資する。だが、その「再建プロジェクト」は主に 米国主導 となり、さらに その利益の50% が米国に還元される。
- 残りのおおよそ 2000億ドル は、別の米露共同の投資ビークルに投入される構想だ。これにより、米国側には、総額で 約3000億ドルの“ボーナス” が転がり込む可能性がある、というのがこの案のキモ。
- さらに、ウクライナの復興コストのうち1000億ドル分は、欧州の納税者(EU諸国)が負担する想定。つまり、西側連合が築いてきた凍結資産の「ウクライナ支援」という枠組みを覆し、米国とロシアに利益をもたらす構造だ。
結論はシンプルだ。
今回の米露和平案は、一見すると「戦争終結 → 復興 → 平和」と見えるが、その実態は「ロシア資産という“カード”を、ウクライナとヨーロッパを犠牲にして米国が強奪する構造」であり、国際的な正義、公正、安全保障、そして実質的なウクライナ支援のすべてを危うくする可能性が高い。
特に、3000億ドルという巨額の「ボーナス」が米国に転がり込むという構造は、単なる和平案ではなく、地政学的・経済的な再編の試みとすら言える。
もし欧州がこの提案を見過ごせば、今後、制裁や国際協調の価値そのものが損なわれかねない。
そのため、欧州は迅速かつ断固として行動し、凍結資産の没収を確定させるか、賠償ローンという形でのウクライナ支援スキームを発動する必要がある — そうしなければ、この「和平案」は平和よりむしろ、欧州とウクライナの将来を蝕む毒薬になりかねない、
国際政治のリアリズム
これは驚きました。
著者も今回のトランプ政権の戦争終結案に関して、領土割譲やウクライナ軍の兵力削減などに目を奪われていたので、この米国に対する3000億ドルのボーナスというポイントは見落としていました。
そう言えばこのボーナスに似た話を最近耳にした事があります。
そうです。米国が日本に対する関税を下げる代わりに日本政府に求めた5000億ドルの投資です。
正にAmerica Firstを象徴する様な政策です。
こんな政策は欧州やウクライナが呑まないと思われる方も多いと思いますが、著者はこの提案は多少修正があるにせよ、実現される可能性があると思っています。
というのも、戦線ではロシアが優勢で、このまま戦争が長引けば、ウクライナは更に領土を失っていきます。
その上、最近ウクライナ政権の賄賂スキャンダルが明らかになり、政権の基盤が揺らいでいます。
米国政府はこの提案を呑ませるためにウクライナへの軍事支援、特に貴重なインテリジェンスの供給停止をちらつかせてウクライナや欧州を説得にかかるでしょうから、ウクライナが折れる可能性はあると思います。
それにしても米国の交渉は狡猾と言えるほどに巧妙です。
欧州にあるロシア中央銀行の資産の殆どはベルギーにあり、EUはこの資産をウクライナの戦後復興資金に充てる積もりでした(EUには自前の税金を復興資金に充てる余裕がない)。
しかしEUも米国抜きでウクライナひいては欧州の安全保障を確保できない事を認識しているので、米国に対して強く出れないのです。
ロシアも元々全額EUに差し押さえられる危険性があった中、一部でも取り返せるのであればこの話に乗って来る可能性があります。
道義論から言えば、油揚げを狙う米国はけしからんとなるのでしょうが、非情な国際政治の中では、今回米国が出したスルーパスはゴールを生み出すかもしれません。
最後まで読んで頂き有難うございました。