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トルコの戦略的意義

アンカラで行われるNATO首脳会議

7月7−8日にNATOの首脳会議がトルコの首都アンカラで行われます。

高市首相も招待されている様ですが、参加するかどうか今のところ不明です。

トルコはNATOの古くからのメンバーですが、これまで他のメンバーと何度か揉め事を起こしてきました。

ロシアの対空防衛ミサイルS400を購入してみたり、ウクライナ戦争が勃発してからスウェーデンのNATO加盟に拒否権を行使してみたり、NATOの一部のメンバーからはトルコをNATOから外せといった声もでていました。

確かにトルコはウクライナ戦争が始まってからも西側のロシア制裁には加わらず、ロシアから依然としてガス、石油を購入しています。

米国がイランに対して攻撃を行った際も、トルコの基地を使用させませんでした。

不協和音を生じさせているトルコはどの様に評価されるべきなのでしょうか。

この点について米誌Foreign Affairsが「Turkey’s Quiet Realignment - Russia’s Loss Is NATO’s Gain」(トルコの静かなる方針変換 - ロシアの損失はNATOの利益)と題する論文を掲載しました。

著者は米シンクタンクMiddle East InstituteのGonul Tol氏です。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs誌論文要約

過去25年間、トルコがアメリカや欧州と衝突するたびに、西側の専門家たちは「西側はトルコを失った」と狼狽してきた。

2003年のイラク戦争時の米軍への領土不提供、2010年の対イラン制裁への反対、そして2017年のロシア製防空システム「S-400」の購入など、冷戦期に西側陣営へ深く組み込まれていたトルコは、エルドアン大統領の指導下で西側から離反し、ロシアへ急接近したかのように見えた。

エルドアン大統領が掲げた「戦略的自律」のもと、トルコはロシアとの経済・エネルギー・安全保障協力を深化させ、ウクライナ侵攻の際も対露制裁に加わらず、安価なエネルギーや武器、さらには原子力発電所の運営契約など、ロシアとの結びつきを最大限に強めた。

これにより、西側との距離はかつてないほど離れた。

しかし今、トルコは静かに、そして確実に西側パートナーのもとへと回帰している。

私はこの「静かな方針変換」の背景に、トルコが直面した厳しい現実があると考えている。

第一の理由は、国内の深刻な経済危機だ。

エルドアン政権の異端な経済政策は歴史的なインフレを招き、通貨リラは急落した。

外貨準備が底をつき、経済が崩壊の危機に瀕する中、我が国は欧州市場へのアクセスや欧米からの投資を再び必要とした。

経済の命綱が依然として西側に握られている以上、これ以上の関係悪化は自滅を意味する。

第二の理由は、安全保障上の誤算だ。

ロシアを後ろ盾とするシリア情勢や地域情勢において、ロシアの影響力が低下し、トルコの自律的な防衛が脅かされ始めた。

特に、ロシア製「S-400」の購入は、米国のF-35戦闘機プログラムからの排除と制裁を招き、トルコの防衛産業に致命的な大打撃を与えた。

独自の防衛力を維持・近代化するためには、NATOや欧州の先進的な防衛協力が不可欠であると痛感せざるを得なかったのだ。

結果として、トルコはスウェーデンのNATO加盟を容認し、ロシアへの経済的・エネルギー的依存を削減し始めた。

さらに、連合国との防衛協力を再び強化し、ロシア製兵器に代わる西側システムの調達へと舵を切っている。

もちろん、エルドアン大統領が「戦略的自律」の野心を完全に捨てたわけではない。

今後も独自の利益を追求し、西側を苛立たせる局面はあるだろう。

しかし、トルコの経済、安全保障、そして防衛産業の根幹は、依然として西側に深く紐付けされている。

今回の方向転換は一時的な戦術ではなく、構造的な限界が生んだ必然的なものなのだ。

ウクライナ戦争を通じて露呈したロシアの脆弱性と、トルコの構造的現実。

これらが融合した結果、ロシアは重要な地政学的パートナーを失いつつあり、逆にNATOはその第二の軍事大国を再びその腕の中に引き戻すという、大きな利益を得ることになったのである。

トルコを必要とする欧州

この記事はトルコが自らの失策によって欧米に接近せざるを得なくなったと書いていますが、それだけではないと思います。

ウクライナ戦争そして最近のイラン戦争いずれにおいても、トルコの存在は極めて重要です。

ウクライナ戦争においてトルコはロシア経済制裁に参加していませんが、ウクライナにはドローンを供給していますし、何といってもボスポラス海峡の軍用艦通過を禁止しています。

これによってロシアは黒海艦隊の補充ができなくなり、黒海の制海権を失う結果となりました。

トルコがNATOに歩み寄ったというよりも、トルコの戦略的価値を認識したNATOがトルコに歩み寄ったというべきではないかと思います。

イラン戦争において米軍機の離着陸を拒否したスペインの首相はトランプ大統領から罵倒されましたが、同じ様に拒否したエルドアン大統領はお咎めなしです。

これをみても欧米がトルコに特別な配慮をしている事が窺えます。

歴史的にみてもトルコはロシアの南下を防ぐ防波堤の役割を果たし続けてきました。

今トランプ政権が対ロシアの問題は欧州で解決しろと主張している状況下、欧州にとってトルコは不可欠なパートナーになっているのではないでしょうか。

来月のNATO首脳会議に注目です。

 

最後まで読んで頂き有難うございました。