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地政学で今の世界情勢を分析する

復活した地政学

最近地政学がはやっていますね。

書店に行くと地政学関係の本を良く見かけます。この地政学という学問はナチスや日本の帝國陸海軍が使った事で批判を浴び、戦後暫くは日が当たらなかったのですが、ここに来て復活した様です。

地理をベースとする戦略論はやはり真理をついているという事でしょうか。

最近の国際情勢について米誌Foreign Affairsが「Heartland vs. Rimland」(ハートランド対リムランド)という論文を掲載しました。

ハートランドは地政学で使われる用語で、ユーラシア大陸の中核を意味し、リムランドはユーラシア大陸の外郭に位置する国(欧米や日本)を意味します。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

地政学の古典的回帰

今日の世界情勢を一瞥すると、極めて見慣れた、しかし不気味な戦略地図が浮かび上がってくる。

ユーラシア大陸の中央部に陣取るランドパワーのブロックが、超大国(アメリカ)を筆頭とする自由主義的なシーパワーに挑戦している構図だ。

我々は、この現代の対立の本質を理解するためには、20世紀前半の地政学の古典に立ち返る必要があると考えている。

具体的には、ハルフォード・マッキンダーの「ハートランド理論」と、ニコラス・スパイクマンの「リムランド理論」である。

中国とロシアが形成するユーラシアの枢軸は、まさにマッキンダーが警告した「ハートランド(ユーラシアの核心部)」を統合し、世界を支配しようとする試みに他ならない。

これに対し、アメリカとその同盟国が守るべきは、ユーラシアを取り囲む沿岸地帯である「リムランド」である。

マッキンダーの悪夢の復活:中ロのユーラシア統合

1904年、マッキンダーは「地政学の枢軸」として、資源が豊富で海上権力が侵入できないユーラシアの「ハートランド」を制する者が世界を制すると説いた。

今日、中国とロシア、そしてイランや北朝鮮を加えた権威主義同盟は、このハートランドを経済的・軍事的に統合しつつある。

その中心にいるのが中国である。

中国は「一帯一路」構想を通じて、陸路のインフラやパイプライン、デジタル・ネットワークをユーラシア深くへと張り巡らせてきた。

かつてはソ連の崩壊によってハートランドは断片化したが、現在の中国は膨大な富とテクノロジー、そしてロシアの豊富な天然資源を組み合わせることで、マッキンダーが恐れた「陸上巨大権力」の物的な基盤を完成させつつある。

この統合が意味するのは、西側による経済制裁や海上封鎖が効きにくい、自己完結的で強固な「要塞ユーラシア」の出現である。

彼らは内陸部の安全を確保した上で、その余力を外洋や周辺部への拡張へと振り向けているのだ。

スパイクマンの逆説:勝敗を決する「リムランド」

しかし、我々はマッキンダーの決定論をそのまま受け入れるわけではない。

むしろ、第二次世界大戦期にスパイクマンが唱えた「リムランド理論」こそが、現在の戦いの主舞台を説明していると確信している。

スパイクマンは、「ハートランドを制する者が世界を制する」というマッキンダーのテーゼを否定し、「リムランド(沿岸周辺部)を制する者がユーラシアを制し、ユーラシアを制する者が世界の運命を制する」と反論した。

リムランドとは、ヨーロッパ、中東、東アジア、東南アジアを結ぶ三日月地帯である。

歴史的に見ても、世界の人口、産業、経済活動の大部分はこの沿岸部に集中している

。中国がいくら内陸部を統合しても、このリムランドを支配できなければ、真のグローバルな覇権を握ることはできない。

現在、中国の真の狙いは、まさにこのリムランドの打破と包摂にある。

南シナ海への軍事進出、台湾への脅威、シーレーン支配の試み、そしてヨーロッパや中東における経済的・政治的影響力の拡大は、すべてリムランドにおける既存の自由主義秩序を解体するためのものだ。

もし、東アジアや欧州のリムランドが中国の軍門に降るようなことがあれば、アメリカはユーラシアから完全に締め出され、西側世界は衰退へと向かうだろう。

ピークを杉田中国の焦燥と危険性

ここで重要なのは、現在の中国が「際限なく上昇を続ける不敗の巨人」ではないという点だ。

現在の中国はむしろ「ピークを過ぎ、衰退の兆候に直面している国家」である。

中国は現在、深刻な人口減少と急速な高齢化、経済成長の構造的減速、そして習近平政権による専制の強化に伴うイノベーションの窒息という内部矛盾を抱えている。

さらに、国際社会では「中国警戒論」が定着し、西側諸国による対中包囲網が急速に形成されつつある。

歴史が示すのは、新興の大国が最も攻撃的になるのは、自国の国力が無限に伸びていると確信している時ではない。

むしろ、「自国のパワーが間もなくピークを迎え、今を逃せば二度と野望を達成できなくなる」という強い焦燥感を抱いた時である。

台湾への武力侵攻などのギャンブルに打って出る動機は、彼らの「自信」からではなく、将来への「恐怖と焦り」から生まれるのだ。

それゆえ、2020年代から2030年代初頭にかけての世界は、かつてないほど戦争のリスクが高まる。

結び:西側諸国が取るべき「リムランド防衛戦略」

このハートランドからの強大な挑戦に対抗するため、アメリカとその同盟国は、明確な「リムランド防衛戦略」を実践しなければならない。

第一に、リムランドの要衝における「対抗能力」の構築である。

特に台湾海峡や南シナ海、東シナ海において、中国の迅速な軍事侵攻を阻止するため、安価で大量の自律型ドローン、対艦ミサイル、機雷などをリムランドの同盟国に配備し、中国の海洋進出のコストを圧倒的に高めるべきだ。

第二に、既存の多国間ネットワークの多層化と強化である。

日米豪印の「クアッド(Quad)」、米英豪の「AUKUS」、そして日米韓の連携やNATOの強化などの枠組みを密に組み合わせ、リムランドに突破不可能な防衛線を築かなければならない。

第三に、経済的なレジリエンス(強靭性)の確保である。

重要なサプライチェーンや先端技術(半導体、AI、クリーンエネルギーなど)を中国に依存し続けることは、有事の際に致命傷となる。

冷戦期、アメリカはジョージ・ケナンの封じ込め政策のもと、ユーラシアの沿岸部を守り抜くことでソ連を自壊へと導いた。

我々は再び、その地政学の基本原則に立ち返らねばならない。

ハートランドに閉じこもる権威主義の枢軸が、その内部矛盾によって失速するまで、我々はリムランドの自由と安定を断固として守り抜く必要がある。

今、求められているのは、長期的かつ冷徹な、21世紀の「リムランド防衛」の覚悟である。

引きこもりがちな米国

ホルムズ海峡の封鎖は世界のエネルギー資源の流れがたった一つのチョークポイントによって窒息しかねない事を再認識させました。

地政学の大家が唱える様に、地理的特性は国家の政策や運命までも左右します。

韓国と日本は同じリムランド国ですが、決定的に違うのは日本は島国で、韓国は大陸の沿岸部に位置する国という事です。

韓国は中国やモンゴルに征服されましたが、日本が独立を守り続けられたのは大陸と隔てる海の存在が大きかったと思います。

著者もシーパワーである欧米と日本が手を組み、ランドパワーに対抗することが重要と思いますが、気になるのは米国が西半球に引きこもりがちな点ですかね。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。