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ウクライナ戦争はいつどの様に終わるのか

出口が見えない戦争

ウクライナでの戦争は3ヶ月を超えました。

これほど長く続くと予想した人は少数派でしょうが、戦況は現在こう着状態に陥っている様です。

戦争の出口が見えない今、この戦いをどうやったら終わらせる事ができるかという議論が欧米では始まった様です。

英誌Economistが「When and how might the war in Ukraine end?」(ウクライナでの戦争はいつ、どの様に終わるのか)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ゼレンスキー大統領は戦場で勝つだろうが、交渉を通してのみ終わらせることができると語ります。

いつ戦いをやめるのか、そしてどのような条件で? 西側諸国はそれはウクライナが決定することであると言いますが、 開戦から3か月後、西側諸国の終戦に関しての見方は分かれています。

ソフィアのリベラル戦略センターのクラステフ氏は、西側諸国は2つの陣営に分かれていると説明します。

一つは戦闘を停止し、交渉をできるだけ早く開始したいと考える「平和派」です。

もう一つは「正義派」であり、ロシアの侵略に対して高いツケを払わせなければならないと考えています。

 

議論は領土から始まります。

ロシアがこれまでに征服した土地を保持させるのか、 2月24日のスタートラインに戻すのか、 それとも、2014年に占領された領土を取り戻すために、国境までさらに後退させようとしますか?

議論は、戦争を長引かせることのコスト、リスク、リターンだけでなく、ヨーロッパ秩序におけるロシアの位置にまで及びます。

 

平和陣営は既に動き始めました。

ドイツは停戦を要求しました。

イタリアは、政治的解決のための4つの案を提示しました。

フランスは、ロシアにとって「屈辱的」ではない和平協定について語っています。

彼らに反対するのは、主にポーランドとバルト三国であり、英国がそれを擁護しています。

 

アメリカはどうでしょう?

ウクライナの最も重要な支援者は、ウクライナを強化する以外に、明確な目標をまだ設定していません。

アメリカはこれまでに約140億ドルを戦争に費やしており、議会はさらに400億ドルを割り当てたところです。

アメリカは他の40カ国以上からの軍事寄付も集めました。

しかし、この援助は無制限ではありません。

彼らは大砲を提供しましたが、ウクライナが求めている長距離ロケットシステムは提供していません。

 

アメリカの国防大臣であるオースティンの発言は、あいまいさを増しています。

先月キーウを訪れた後、彼は正義派に与して、西側はウクライナが「勝ち」ロシアを「弱体化」させる事を助けるべきだと言いました。

3週間後、彼は平和派に傾いた様で、ロシアのショイグ国防大臣との電話会談の後、「即時停戦」を呼びかけました。

国防総省は、政策の変更はないと主張しています。

 

正義派への新たな打撃は、ロシアの敗北は非現実的で危険であると主張するニューヨークタイムズの社説でした。

その後、元国務長官のキッシンジャーは、「容易に克服できない激動と緊張」を回避するために、交渉は2か月以内に開始されるべきであると述べました。

彼は理想的には2月24日のラインに戻る事だと語り、 「その線を超えて戦争を追求することは、ウクライナの自由の為の戦いではなく、ロシア自体に対する新たな戦争である」と彼はダボスでの世界経済フォーラムで宣言しました。

ロシアは、ヨーロッパの勢力均衡において重要な役割を果たしたと彼は述べました。

ロシアを中国との「恒久的な同盟」に押し込むべきではないとも彼は語りました。

今のところ、西側のこのような亀裂は、将来はウクライナ人が決定することであるという主張の背後に隠されています。

それでも、ウクライナの選択は、西側が提供するものによって形作られます。

「ヨーロッパは団結すべきです。私たちはあなたが団結しているのと同じくらい強いです」とゼレンスキー氏はダボスでの会合で語りました。

彼は、「ウクライナは、領土をすべて取り戻すまで戦うだろう」と述べました。

しかし、彼はまた、妥協の余地を残しているようでした。

ロシアとの交渉は、2月24日のラインにロシアが撤退すれば開始されるとも彼は述べました。

 

アメリカ、ヨーロッパ、ウクライナは、お互いが受け入れると思うものに応じて、それぞれの立場を調整し続ける必要があります。

「ウクライナは、ロシアと交渉しているのと同じくらい、そしておそらくそれ以上に、西側のパートナーと交渉しています」と、シンクタンクである国際危機グループのオルガ・オライカーは言います。

あいまいさは、戦争の不確実性も反映しています。

キーウを救い、ロシア軍をハルキウから押し戻したので、ウクライナは勝利していますか。

それとも、ロシアがマリウポリを占領し、セベロドネツクの包囲をほぼ完了した可能性があるため、負けているのでしょうか。

平和陣営は、戦闘が長引くほど、ウクライナと世界の他の地域への人的および経済的コストが大きくなることを懸念しています。

正義陣営は、ロシアに対する制裁措置が始まったばかりであり、時間をかければウクライナはより良い武器で勝つことができると主張しています。

 

これら議論の背後には、2つの相反する懸念があります。

一つは、ロシア軍は依然として強力であり、戦争で勝つだろうというものです。

もう1つは、それが脆弱かもしれないというものです。

戦線が崩壊した場合、ロシアは、敗北を回避するために、NATOと激突するか、化学兵器または核兵器に頼る可能性があります。

フランスのマクロン大統領は、ヨーロッパはロシアとの共存の仕方を見つける必要があると述べています。

エストニアのカッラス首相は、「プーチンを挑発するよりも、プーチンに屈服する方がはるかに危険だ」と反論します。

アメリカとヨーロッパの当局者は、ウクライナの立場を強化するのを静かに支援してきました。

ウクライナは安全保障に関して西側への要請を行っており、ウクライナを直接防衛するという条件は含まれませんが、ロシアに対する制裁解除を拒否できる能力や、再び攻撃された場合、ウクライナの軍備を迅速に強化するという条項が含まれている様です。

 

現在、ウクライナはかなり楽観的です。

ロシアの容易な征服を阻止し、新しい西洋兵器が到着しているせいですが、ゼレンスキー氏の主任交渉官であるポドリャク氏は、ヨーロッパの一部の国で「倦怠感」が広がっている事に懸念を抱いていると述べています。

「彼らはそれを直接言うことはありませんが、それは私たちに降伏を強いる試みのように感じます。停戦は凍った対立を意味します。」彼はまた、ウクライナが必要とする量の武器が到着していないと米国の姿勢について不満を述べました。

 

戦争がいつ終わるかは、主にロシアに依存します。

彼らは停戦を急いでいません。

東のドンバスをすべて征服することを決意しているようです。

「状況のパラドックスは、双方がまだ勝つことができると信じていることです」と、キーウの政治アナリスト、フェセンコ氏は言います。

「両国が本当に膠着状態に達した場合にのみ、妥協の話が可能になります。それでも、その妥協は一時的なものになるかもしれません。」

パクスアメリカーナの終焉

ウクライナでの戦争はヨーロッパだけでなく、大きな影響を世界中に与えています。

エネルギーや食料価格にも甚大な影響があり、貧しい国では社会不安が高まり、暴動が起きかねない状況となっています。

しかし、ロシア、ウクライナ双方が勝てると思っている現状、停戦に持ち込むのは簡単ではなさそうです。

歴史を振り返れば、二度の世界大戦は、スーパーパワー米国の参戦が戦況に決定的な影響を与え、終戦を迎える事ができました。

しかし、今回のウクライナ戦争で、アメリカが核保有国を相手にした場合、直接の介入を躊躇するという事が明らかになりました。

パクスアメリカーナの時代は終わったといっても過言ではないでしょう。

それにしても、キッシンジャー氏が今も健在でダボス会議で世界を驚かせる様な発言をした事には驚きました。

ヒトラーの迫害から米国に逃れた99歳のユダヤ系移民の一言には耳を傾ける必要がある様な気がします。

ともかく早く戦争が終わることを祈ります。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。