管制官と海上保安庁見解の相違
羽田空港での飛行機衝突事故は飛行機にしょっちゅう乗っている筆者の肝を冷やしました。
日本でもこんな事故が起こるんだと驚きましたが、事故の原因は未だに謎です。
海上保安庁の機長は管制官より離陸許可が下りたと理解した様ですが、発表された交信記録では許可は下りていません。
海外のメディアはこの事故をどの様に報じているのでしょうか。
殆どのメディアは緊急用シューターを利用した脱出が見事に行われ、全員が救出されたのは奇跡だと絶賛しています。
一方事故原因については専門家も首を傾げている様です。
米CNNは元機長のコメント「One pilot’s early take on the Tokyo airport runway collision」(羽田空港衝突事故に関するパイロットの初見)をリリースしました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
CNN記事要約
羽田空港の滑走路上で発生した衝突事故は、さらに大きな悲劇になっていた可能性がある大惨事でした。
JAL516便に乗っていた379人全員が安全に避難しましたが、海上保安庁のDHC-8 の乗組員 5 名が死亡しました。
NHKによると、同機の機長は重症の様です。
特筆すべきは、JAL 便のパイロットと客室乗務員の功績です。
客室乗務員は乗客が脱出シューターを使って飛び降りできる安全な出口を即座に判断しなければなりません。
火災により、特定のドアや非常出口が使用できなくなる場合があります。
全員が生き残ったことから、客室乗務員が A-350 から脱出するために正しい出口を選択したことは明らかです。
そしてパイロットたちは、エンジンへの燃料供給停止を含む避難チェックリストの確認に成功した様です。
この事故はどうして起こったのでしょうか?
調査が完了するまで確かなことはわかりません。
現時点では推測の域を出ませんが、この墜落事故は1991年にロサンゼルス国際空港で起きた同様の事故を思い出させます。
USエアのボーイング737-300型機が滑走路でスカイウエスト機と衝突し、30人以上が死亡しました。
ロサンゼルス空港は当時大変忙しく、滑走路と誘導路での飛行機の動きは非常に複雑になり、航空管制官は離陸に備えてスカイウエスト機がまだ滑走路上の所定の位置に留まっているという事を見失ってしまいました。
一方、管制官はB-737が同じ滑走路に着陸することを許可していました。
暗闇の中で着陸したため、USエアの乗組員は、滑走路交差点に位置していたスカイウェスト機を確認することができず、 B-737はタッチダウン直後にメトロライナーと衝突しました。
この事故は一連の手続き変更のきっかけとなりました。
ロサンゼルスの事故は米国で発生しましたが、航空業界のほとんどが注目し、パイロットは、離陸許可を待つために滑走路に 1 分以上留まる事、 そして、管制官は、同じ滑走路で離陸を待っている飛行機がある場合、着陸するための飛行機の許可を伴う手順に慎重になりました。
羽田空港は世界有数の混雑を誇り、無線の会話がひっきりなしに鳴り響き、管制官のメッセージが誤解され、航空機が間違った場所にいた可能性があります。
通常、管制官の指示はパイロットによって復唱され確認されますが、送信が混雑している場合には、すぐに復唱できない場合があります。
重要なタイミングで他の飛行機によって送信がブロックされる場合があるため、パイロットと管制官の両方が状況を正しく認識することが重要になります。
もう一つのシナリオは、JALのパイロットが間違った滑走路を選んだというものです。
しかしコックピット内の少なくとも 1 人のパイロットがエラーに気付いたはずであるため、その可能性は低いと私は考えています。
日本での航空管制は米国と同じレベルです。
航空管制官は非常に有能で、統制が取れています。
私が訪れた海外目的地の中で、日本は最も安全な国の一つでした。
羽田空港事故の調査により、衝突につながった過失が明らかになるのは間違いありません。
おそらくは、多くの要因が関係するでしょう。
それらの要因の幾つかに人間的な要素が含まれる事でしょう。
将来このような悲劇を防ぐためには、事故調査官に原因を究明する十分な時間を与える必要があります。
今後東京行きのフライトに乗りますか? 私なら迷わず乗るでしょう。
奇跡的な脱出劇
讃えるべきはやはりJAL乗務員の冷静な判断と迅速な避難誘導だと思います。
乗務員の指示に従いパニックにならなかった乗客の対応も称賛に値します。
JALは1985年のジャンボ墜落事故からの教訓を生かし、安全を第一に日頃の訓練を大事にしてきた姿勢が今回の脱出劇の成功に繋がったものと思います。
まさに奇跡と言える危機一髪の脱出でした。
一方、事故原因については未だに不可解です。
管制塔との交信記録から管制官が海上保安庁機には滑走路手前で待機を指示したことが明らかになりましたが、プロの機長がこれを誤解するとは俄かに信じられません。
しかもこの機には副操縦士も同乗しており、二人のプロが一番神経を使う滑走路内への侵入指示を取り違える可能性は極めて小さいと思います。
あまり信じたくはないのですが、サイバーテロの可能性もゼロではない様に思います。
管制官とコックピット間の通話は通常のVHF帯の無線通信で行われると聞いており、この無線に何者かが侵入した形跡はないか、今後の真相究明を待ちたいと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。