続くゼロコロナ政策
中国では現在冬季オリンピックが開催されています。
選手や役員等の入国は許されていますが、それ以外の外国人の入国は厳しく制限されている様です。
ほぼ鎖国と言っても良いほどのゼロコロナ政策を欧州の人々はどの様に見ているのでしょうか。仏紙Les Echosが「Chine, un Grand Bond en arrière… sur l'ouverture」(開国へ中国が見せた大きな後退)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
上海の特派員の報告によれば、エールフランスはパリと中国の大都市間のフライトをキャンセルせざるをえませんでした。
コロナの陽性例が発見されたときにフランスの航空会社を制裁するのは地方自治体であり、これにより、中国と他国の間でこの2年間ほぼゼロになっている国際便は更に減少します。
2020年の始め週10,000便あった国際便は200便になりました。
月曜日に、我々の上海駐在員は、もはや中国に帰ることができなくなった欧米の駐在員の悪夢を伝えました。
「本社」の代表者はいなくなり、特定の国との路線はほぼ遮断されました。
昨年1,040億ユーロ(約14兆円)に上る商品を中国に輸出したドイツと中国の間の定期便はなくなりました。
中国政府は既に厳格な処置の理由を説明しています:コロナ、現在オミクロン、そしてオリンピックです。
パンデミックが始まって以来、ゼロコロナ戦略が適用されており、習近平主席のトレードマークになっています。
これにより、何百万人もの人々が封じ込められたとしても、その方針が問題視される事はありません。
この国境の閉鎖は、ナショナリズムといわゆる西洋の価値観との対立を煽る政権にふさわしい事は明らかです。
中国の主席はこの2年間一度も国を離れていませんが、多くの外国政府首脳を受け入れています。
先週はプーチン大統領と北京で面会し、天然ガスの大型契約について話し合いました。
同盟関係は日々高まっています。
2023年または2024年に中国製のメッセンジャーRNAワクチンを開発して、全国民に接種できれば、国は再開される可能性がありますが、微小な信号を見逃してはなりません。
例えば、中国の国際社会への統合における梃子として長い間みなされてきた、英語学習に対する公的機関の援助が減少した事です。
「ニューヨークタイムズ」の記事が示す様に、中国語以外の言語での入学試験の拒否、外国人によるレッスンの制限など、ここ数ヶ月で状況が変化しています。
ゼロコロナ政策による中国の縮小は現実のものになりそうです。
グローバリゼーションに逆行する中国
フランスもドイツほどではありませんが、中国で大きな利益を上げている国です。
数年前にパリを訪れた際、ルイヴィトンの本店前で行列を作っていたのはもはや日本人ではなく、中国人でした。
中国のブランド熱はフランスやイタリアの製造業者を潤すだけでなく、膨大な数の中国人観光客は欧州観光業においてドル箱でした。
そんな欧州諸国にとって、中国のゼロコロナ政策は一大事です。
イアン ブレマーが今年の「世界の10大リスク」のいの一番に中国のゼロコロナ政策を挙げていましたが、確かにこれは想像以上のダメージを世界に与えそうです。
20兆円を上回る貿易を行っているドイツとの直行便がなくなり、欧州の駐在員が中国に帰れないという事態は明らかに異常です。
この2年間、中国は観光ビザや学生ビザを発行していない様ですが、これは世界とのデカップリングを中国が自ら招いている様にも見えます。
中国当局は、2024年或いは2025年まで本格的な国際便の復活はないと発表している様ですが、それは内外の経済に大きな影響を与えかねません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。